普通Mシャーカン 私 船長ヴィロック Captain Veloc
普通Fホエリアン わたし 操作者レンズ Operator Lens
太いMドルフィニアン 俺 船員アーニー Crew Earny
細いFオルカン 自分 船員パル Crew Pal
万能機器 簡易的な携帯、コンピュータなどの役割を果たす。他にも細々とした機能が色々含まれている
母宇宙 Mother Space 8進数
クレイザーの船員四人は、湖を潜り、そして開けた場所に出ると、その奥へと進んだ。やがて現れた、湖と同じくらいの、浸食されていない奇麗な穴にやってくると、ここに始めて来たアーニーとパルは驚いてしまった。明らかに何かあると分かったからだ。
ヴィロックとレンズは、その穴の中へともぐった。アーニーとパルもそれに続いた。その中でも特にアーニーは、太目な体型が災いして長期間の潜水は苦手だが、幸いにも、目的地までは十分とかからず、五分程度で到着した——その場所は、穴を下へと潜ったあと再び上へと少しだけ戻った場所にあった。そこは、先が闇に沈んだ大きな洞窟になっていた。
「ぷはぁー! いやぁ、これは凄いな。息も出来るってことは、地上とどこかが繋がっているのか」とアーニーは、みんなよりも何拍か遅れ、よっこらせと水から這い上がって言った。
「いや、どうやら違うようだ。私たちが調査した所では、この洞窟は完全に閉塞されている」
「船長、それはマジなのかい? だったら、どうしてこうやって息が出来るんだ? 酸素生成機器なんか、置いてはなさそうだしな」
「そうだな、まだ詳しいことは分かってはいない——だが、これから、それを調査するんだ」
「調査って、この洞窟をかい?」
「いや……付いて来なさい」
ヴィロックは、先陣を切って進んだ。暗い洞窟の中、唯一の明かりとなっているのは、レンズが手に持つ、万能機器のランプ機能だけだった。
およそ、五分ぐらい進んだところだろうか。突如暗がりの中から、何か大きなものが現れた。近づくにつれ、それは徐々に形を表し、やがて、ピラミッドのような建物が現れた。
「こ、これは……す、すごいわ船長、外壁が、まるで最近まで整備されていたように奇麗!」パルの感嘆たる声が、洞窟内に響き渡った。
「ああ。だがこの洞窟をぐるりと周回したが、あるのはこの建物のみ。だが生体反応はなかった。つまりこの中に、この惑星に関するあらゆる謎が隠されているに違いないってことだ」
「確かにそうだ。衛星写真では、あの湖しか入り口はなかった。そしてそこからここへと辿り着いたということは、ここが何らかの主要基地ってわけだものな」
「そうだなアーニー。それを証明するために、今から中に入るぞ」
「場所は分かるんですか?」
「ああ。丁度向かいにある、左右の真ん中が入り口らしい——まだ入ってはないが、そこにパスコードを入力するパネルがある」
「なるほど、だから俺達を呼んだのか」
「ああ」とヴィロックは頷き、そしてパルを見た。彼女はエンジニアであり、機械のエキスパートである。だから彼女に、パスコードのパネルをいじって、中を操作できるようにしてもらうのだ——だが、ハッキングなどの内部詮索までは、彼女精通していない。そこで登場するのがアーニーだ。彼は元クラッカー、つまり悪事を働くハッカーだったのだ。一度は実刑を喰ったものの、今では出所し、こうやってクレイザーの船員として働いているわけだ。
そんな二人は、すぐさま前のピラミッドに向かい、そして、壁に付けられたパネルをいじりはじめた。パルが、常に携帯している特殊な工具でパネルの中身をあけ、その中にある細かな配線をいじり始めた。そして何分かして、中にあった配線をいくつかを、万能機器と接続させた。
「アーニー、頼んだわよ」と彼女。アーニーは頷き、その万能機器からコンピュータを起動させた。画面には、最新のものとは違い、昔ながらの黒いバックに白い文字が表示された。彼はそこから、仮想キーボードを、まるでピアノの激しい曲を引くかのように打って行った。
ばらばらと下から流れてくる8進数の羅列。それを流すように何かを打ち込む彼。更に数分が経つと、ピラミッドから何か音がした。そしてゆっくりと、パネルの中央を境に扉が現れ、静かに開き始めた。
「いやあ、良かった良かった。母宇宙の規則に則った機械だったから、ハッキングも余裕だったな」
「そういえばそうね」とパルも、今更ながらに理解した。
「つまりここは、母宇宙連盟に所属してたってことなの?」
「だと思う、レンズ。ただどうやら、かなり古い内部構造になっているようだ」
「どのなの、アーニー?」
「細かい月までは分からないが、大雑把に十億年ぐらいだな」
この時、レンズは何かをハッと思い出した。ヴィロックとここに初めて来る少し前に話していた時のことだ。もし仮にあの開けた水中通路が風化作用によるものなら、十億年はかかるといっていた——偶然か、それとも必然か……
「まあとにかく、中に入ろうか」
ピラミッド内部は、同様に暗かった。だが四人が全員入ったところで、センサーが反応したのか、ばっと明かりが点いた。かなりの光力で、四人は思わず両目をつぶり、額に手を翳した。やがて、光に目が慣れてくると、ようやく彼らは内部の様子を窺えることが出来るようになった。
そこは、まるで研究施設のようだった。中央の広々としたロビーからは輻輳する通路が伸び、そしてどこも、汚れ一つない奇麗な場所だったのだ。これはきっと何かあるぞ、誰もがそう思わずにはいられなかった。