勢いで色々と作って見たので、途中で削減したりとかありうるかも。でも出来るだけ、そうしないよう努力します。一応今回は挑戦的な部分もあるんでね。
The Abyss of Heaven: Prologue
ドルフィニアン D Dolphinian
シャーカン S Sharkan
オルカン O Orcan
ホエリアン W Whalian
体型比較(あくまで平均的なもの。大差はなく、逆転もありうる)
D < S < O < W
男 O ミドラー・クロス
Male O Middler Cross
男 W ジャイアル・B・ブラッケン
Male W Gial B. Blacken
女の子 D スィン=タミー・チャイルド
Girl D Thin-Tummy Child
男の子 D スィック=タミー・チャイルド
Boy D Thick-Tummy Child
女 S ヴァーテクス・トップ
Female S Vertex Top
女 S ベース・ボトム
Female S Base Bottom
男 O ウォマポ・ッキバ=ホファ=ピッキ
Male O Womapo Nkiba-Hofa-Pinki
男 W パム・ロ・ファスタ・スロウワ
Male W Pam Lo Faster Slower
目の前に広がるは、歴史教科書に載っているような古き時代の光景。全ての建物は赤い煉瓦造りで、脇に潺
々 と流れる川の音は心地よく、まるで別世界のようだと言いたいところ——しかしここは、本当に別世界なのだ。どうして僕がこんな所にいるのか。全ては、あの時から始まった。
楽しい学校生活。帰宅部の僕と親友は、七時限目のホームルームが終わるとすぐ、帰路に着いていた。そこからは、いつも他愛もないことをぺちゃくちゃと喋り、それがまた楽しい通学路となっていた。
そんなある日のこと。いつもと同じようにして家路に着くかと思いきや、校門を出てすぐの横断歩道で……僕は、轢かれた。
すぐさま病院へと搬送されたが、重篤な状態が何日も続いた。治療費に関しては、赤信号を無視した運転手のせいで問題はなかったが、両親は当然の事ながら、それ以上に僕の体を心配していた。意識が戻るか戻らないか、それは全て僕次第であった。
気が付くと、僕は真っ暗闇の世界にいた。何処だろうと辺りを見回していると、突如体が動き出した——いや、正確には動かされていた。どうやら僕は、巨大なベルトコンベアの上にいるようだが、どうしてこんなところに? 左右に壁はなく、そこから下を覗くと、全くもって底が見えない。
再びベルトコンベアの先に目を遣ると、段々と、目の前に何かが現れて来た。それは、電気のような物が
迸 るバリアのようなフィールド。更にそこと僕のあいだには、何人もの人達が、同じようにしてベルトコンベアで運ばれていた。しかし彼らはみな、意識がないのか倒れたまま一切動かない。その時だった。一番奥にいた一人の体が、先にある謎のフィールドに足から入っていった。するとなんと、フィールドを通過した体の一部分が、どんどんと消えていくではないか! 最終的にその人の体は、完全にフィールドの中へと消滅した。
僕はとっさに、あそこに入ったらおしまいだと直感し、急いでこのベルトコンベアを逆走しようとした。だがその速度は思った以上で、僕はどんどんとフィールドの方へ流されていった。既に先にいた者達は次々と、謎のフィールドに呑み込まれていく。
まずい、このままだと——僕は切羽詰まり、意を決して横へと飛び込んだ。底の見えない恐怖があったが、それ以上に僕には、フィールドへの恐怖が高まっていた。
しかし、そこへと近付く速度は残ったまま。いつしか落ちていく内に、僕の足には激痛が走った。見るとその部分が、遂にフィールドへと到達しており、すっかり無くなっていたのだ。もう感覚は無い。
いつこの落下が治まるのか。気付けば僕の体は下半身までなくなっており、このまま落ち続ければ確実に、僕の全身はあのフィールドへと呑み込まれてしまう。もう、おしまいだ……
ふと、僕は目を覚ました。どうやら眠っていたようで、横からは微かに機械のビープ音が聞こえる。
重い瞼を持ち上げて見ると、そこにはぼんやりとした白い天井があり、次第に焦点が定まってきたのか、ここが病院だとすぐに分かった。
「あ、あなた!」
「ミドラー! め、目を覚ましたんだな!」
両脇から声と共に、二つの顔が覗き込んだ。母さんと、父さんだ。
(良かった。じゃああれは、生と死の
硲 だったのか……)僕は安堵とともに、再び眠りについた。
それからの僕は、医者も驚くほどの回復力を見せ、あっという間に退院した。これで生活も元通り——しかしそう思うのは、時期尚早であった。退院してからの僕には、ある不思議な現象が起きていたからだ。
依然と変わらぬ食事量、それなのに僕の体には、僅かながらにだが着実に、脂肪というものが身に付いていたのだ。
「なぁ、また太ったんじゃないのか?」ふっくらし始めた僕の顔を見て、父親が言う。
「う、うん……」
「別にそんなに食べてるわけじゃないのにね。一度病院に見て貰いましょうか」
母親の提案で、定期検診で通う病院に僕は、今回の出来事を告げることにした。すると担当医がすぐ、検査をしてくれた。
しかしながら、結果は全て陰性。事故から治療までのあいだに、何らかの原因で新陳代謝などが悪くなったのでは、という推測だけに終わった。まあまだ子供だし、良く食べ良く育てというように、少しぐらいなら問題はないだろうと医師に言われ、僕と両親は一旦は安心した。
だが一年、二年と経つと、僕の太り方は拍車をかけ始め、いつしか体重は二倍を越えて三倍になり、そして中三の夏、僕は汗をだらだらとかきながら、階段を上る羽目になっていた。
「おい、大丈夫か?」と親友が声をかける。
「うん……ふぅ、ふぅ……あぁ、駄目だ、あともう少しなのに、はぁ、はぁ」
「少し休もう」
親友の提案で、僕は階段に腰かけた。校内にはエレベータがあったが、それはあくまで怪我人用。肥満は単なる生活習慣病だとして、余計に階段を推奨されていた。
しかし僕の体は、一向に細くはならない。仕舞いには、体育に出られないほどの肥満体に成り果て、初めはデブだと罵っていた同級生達も、おちょくるを通り越して目線が哀れさに変わっていた。昼食時にでもなれば、周りにいる全員が僕に視線を浴びせ、まるで校内にいる全生徒の目が監視カメラのようになっていた。でも僕は、周りと変わらぬ食事量で抑え、決してそれ以上食べることはなかった。寧ろ食べなくても、自分自身は不思議と酷ではなかったのだ。
それなのに、この状況を打破することは、全然出来なかった。
このままどうなってしまうのか、不安に駆られる毎日を送っていた僕は、いつものように親友に自宅まで同行して貰って帰宅すると、心配する両親に挨拶もせず、真っ先に自室に逃げ込んで、決まってこう呟く。
「どうして……どうして僕の体は、こんなにも醜くなるんだろう」
僕と同じ中三での平均体重は、凡そ80〜110キロ。種族的に三桁に行くことは良くあり、同じオルカンでは尚更である。
しかし現時点での体重は、既にその領域を越え、一番重量のある成人のホエリアンさえ超過した350キロに到達していた。それでもまだ、耐えうる重さではあるが、僕の場合は体重増加が激しく極端過ぎた。
あと半年も経たずに卒業式。せめてそれだけでも謳歌したい所だが、このままだとそれすら危うい状態だ。中学卒業後、世の中は就職と進学の半々であり、卒業さえすれば、この体でもどうにかなるかも知れない。だが卒業が出来なければ元も子もない。
そんな将来の不安などを考えていると、突如目の前に、すぅっと何かが現れた。そう、何かだ。丸い光のようだが、それは形容しがたいもので、強いて挙げるならウィルオウィスプってところか。その色は白と黒の入り乱れで、収斂と輻輳を繰り返し、まるで灰色に馴染もうかとしている。
僕は、その光に手を翳してみた——と、まるで陰極と陽極の関係のように、僕の体はぐっとその光に引き寄せられ始めた。
「うわ、なん……あ、ああ、あああぁぁぁぁーーーーーーーー……!」
そして僕は、この世界へとやって来た。のちのち知ったのだが、ここは死者が住む、死の世界だったのだ。
続く