これは3年半前に書いたものなのですが、絵で表現した方が良いと思いそのまま残していたのですが、結局絵が上達しなかったので忘れていました。
実はこれと同じ類が幾つかあり、その内の一つがイノベーターというHPで旧作に載せている小説です。けど「スプリタンデルフの物語」などは抽象的にしか書いてなかったので、公開できずにいました。
しかし、放置しておくのはもったいないので、今回小説として公開することにしました。ただ普通小説より、やや飛び飛びになりがちです。
それとついでに、せめてものイメージとして、低レベルながらキャラクター画像も出しておきます。
あと自分、ナーガ系が好きなのを今更ながら思い出しました(爆)。次に来るのはぶっくぶくのナーガかな?
(ここの説明は、昔のをそのまま引用。うーん、なんか言葉遣いが無理矢理ですねw;)
・キャラの名前 スペル 一人称 渾名 スペル 性別 種族
キャラの説明
アースプライト・ジーニアス Earsprite Genius あたい アーシー Earsy 女 大地の妖精
ずんぐりとした力持ちの大地の精。故郷の村の建築隊のリーダー、即ち姐御。
その名の通り荒っぽい気質の所はあるが、やはり女性であるからに、乙女な心も持っている。
力は、周りの膂力溢れる同族達を凌駕するほどで、倒木一本を易々と持ってしまう。
また彼女は確り者でもあり、もし結婚したらならば、全き貞婦となるであろう。
サーペント・アイン=ナーガ Serpent Ine-Naga 私 エンティ Enty 男 ナーガ
故郷の村では仕事に励む堅固な男だが、アーシーにはさすがに意志を揺らがされてしまうようだ。
それと、彼は子供が苦手で、大体は同年代かそれ以上の人達と接するのが主。だが決して、彼は子供が嫌いと言う訳でなく、
それ故か、彼とは裏腹に子供と接するのが得意なアーシーを、少しながら羨望の眼差しで見ているようだ。
・街の名前 スペル 説明
スプリタンデルフ Spritandelf アーシーの故郷である、草木に囲まれた村
ナーガイン Nagaine エンティの故郷である、岩場に囲まれた村
一人のナーガが、大きな木造の家に向かっていた。脚のない下半身をうねらせ、玄関前に立った。
「誰か、家にいるか?」と声をかけ、これまた木製のノッカーでドアを叩く。すると奥から、誰かが近付いてくる音が——そしてがちゃりと、扉が開いた。
「何の用?」
出て来たのは、立派な太鼓腹を持つ、四肢ががっしりとした……女性だ。なるほど、さすが大地の妖精という種族だけある。しかし彼女の場合は、やや特殊だと聞いている。
「アースプライト・ジーニアスか?」
「そうよ。あなたがサーペント・アイン=ナーガ?」
「ああ。今回は調査に協力してくれて、感謝する」
「気にしないで。まだ仕事まで少し時間があるから、あなたの部屋を案内するわ」
そして彼女は、彼に部屋を案内した。どうやらでかい家の割りに、平屋で一階しかないようだ。
ナーガことサーペントは、実は学者で、今回自分が住むナーガインから、大地の妖精が住むというスプリタンデルフを訪れたのだ。研究内容は、彼らの大木を肉体で倒す身体能力と、その木を使って驚くほど頑丈な物を作り上げる技術だ。
ナーガインは、岩で覆われた場所だが、近代化が進み、機械も登場し始めていた。しかしここスプリタンデルフは、今も昔ながらの手法を続けており、ナーガインとの行き来に使う船も、全てが木製だ。もしかしたら木そのものに何かがあるのかも知れないが、とにもかくにも、このスプリタンデルフ及びそこに住む大地の妖精達を研究するため、サーペントはここを訪れ、そして建築隊のリーダーであり、姉御的存在のアースプライトと手紙を交わして、寛大な彼女によって少しの間お世話になることになったのだ。
「それじゃ、そろそろ仕事に行くわよ。それとあたいのことは、アーシーって呼んで」
「分かった。なら私のことは、エンティと呼んでくれ」
「エンティ? なんか名前と関係ない呼び名ね」
「私も知らない。ただ周りがそう呼び、今じゃあだ名がそうなのだ」
「ふーん。まあいいわ、それじゃ付いて来て」
森林で、アーシーはどすんと体当たり。木は大きく
撓 り、何度か繰り返すと、どすんと大木が倒れた。部下の屈強な男達は、数人掛かりでそれをやっているが、彼女は本当に体格的にも特別のようだ。そもそも女性が肉体労働をするのは、ナーガインでは考えられない光景なので、エンティは息を呑むばかりだった。「凄い。これが彼女の身体能力か……」
エンティは、黙々とペンを片手にメモをすらすらと書く。その字は独自の簡体字を用い、どんなに早口な人でも、ほぼ完全に聞き書きが出来るようになっている。
そして次に彼は、アーシーの部下達を取材した。
「いやぁ、姉御は最強っすよ。彼女に逆らったらどうなることやら」
「どうなるって、具体的には?」
「例えば、思い切り上に投げ飛ばされて、木の上に吊るされたりとか。とにかく、怒らせたら恐いんすよ」
「君も何かされたりしたのか?」
「は、はは。思い出すのも恐いっす。俺が初めてここに来た時、まだ尖ってたもので、女だと甘く見て姉御に唾をかけたんです。そしたら——」
部下は、両腕を抱え、ぶるりと震えた。
「そしたら?」とエンティ。すると部下は、ある方角の木を見つめた。エンティもそれを見ると、その木は不自然に凹んでいた。手で殴ったとか出はない。まるで人型のように窪んでいたのだ。
「……なるほど」
そう言ってエンティは、すらすらとメモを綴った。
そんなこんなで、アーシーの仕事現場を調査し終えたエンティは、彼女と共に家に帰路に着いた。
「……おかしいわね」
アーシーの目が険しくなった。
「どうしたんだ?」
「誰かいるわ」
「物音がするのか?」
「ええ。忍び足をしてるようだけど、あたいには効かないわよ」
そしてアーシーも、音の方目がけゆっくりと、家の中を進んだ。木造なので下手をすれば、彼女の体重なら軋みそうだが、彼女の足運びの良さか材質が良いのか、物音を立てずに歩けた。エンティはそもそもナーガなので、少し摺る音が聞こえる程度。
やがて、彼女は自分の部屋へと向かった。そして扉に顔を近付け、何かを探った。
次の瞬間。「バン!」と体当たりをして室内に突入し、エンティが目で確認する前に、まるで予め位置を特定していたかのように一目散に部屋の片隅に飛びかかった。
「あんた、あたいの家で何してるの?」
「ひっ! す、すみません!」
彼女の勢いに、侵入者は腰を抜かした。その侵入者は、どうやらここらの住民ではないようで、狼だった。
「何の目的?」
「そ、その、ちょっとボールを投げ入れて——」
ドカッ! とアーシーが、侵入者の顔ぎりぎりで壁を拳で殴った。すると頑丈な木で出来たそこには、ぼこりと穴が空き、それを横目で見た狼は、冷や汗を垂らして身を縮み込ませた。
「す、すみません! あの、お、お金が欲しくて……」
「ふん、このスプリタンデルフのあたいの家に来るなんて、良い度胸じゃない。どうしようかしらねえ?」
アーシーの楽しそうな目付きに、侵入者改め泥棒の狼は、目を涙ぐませて命乞いした。
「お、お願いです、許して下さい! な、なんでもしますから!」
「本当に? でも逃げたら、どうなるか分かってるわよね? あたいの男達が監視してるから、みんなで袋叩きにしてあげるわ」
狼は、何度も何度も謝りながら、彼女の意見に同意した。
それから数日後。アーシーの家にお世話になったエンティは、一旦調査を終えてナーガインに戻ることになった。
「アーシー、世話になった。色々とありがとう」
「気にしないで。あんたの研究に役立つなら、いつでも手伝ってあげるわよ。男達もみんな賛成してるからね」
「助かる。それじゃまた——」
そう言いかけた時、彼女の後ろから、現在はアーシーのもとで家政士的な役割で罪を償っているあの元泥棒の狼が、慌てて駆けて来た。恐怖からか、一度も逃げようとせず、彼はしっかりと従順に彼女の下で働いている。
「え、エンティの旦那! これをお持ち下さい!」
「ん? これは……弁当?」
「はい。ナーガインまでは時間がかかりますから、これでお昼ご飯をどうぞ」
「すまない。ありがとう」
そしてエンティは、改めて別れを告げると、ナーガインへと帰還し始めた。
「あんた、あたいの昼飯の準備は出来てるの?」
「はい! 今すぐ用意しますか?」
「お願い。あんたの料理、中々美味いからね」
「ありがとうございます!」
狼は深々とお辞儀をして、颯爽とキッチンに向かった。アーシーは今まで、仕事にばかり打ち込んできたので、料理など出来ず、出前ばかりだった。けど今は、彼が手料理を拵えてくれるので、すぐに食事も出来る時、大いに助かっていた。
彼女はいい部下を持ったわと、笑顔で頷きながら、彼の調理する後ろ姿を見つめた。
続