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2005-8-3

 

 青く澄んだ空、遠景に見える壮大な山、一面緑で覆われた大地

山から吹く風も気持ち良く、まさに平和という名に相応しい場所だ

こんなところに住んでいたら、一生幸せに暮らせるだろう

そんなことを僕は毎日考えていた

 

「おーい! ランデ!」

誰かが呼んでいるのが聞こえた

僕はゆっくりと立ちあがり、声のする方へと向いた

「あ! ルシュトック!」

「はは、久しぶり! 一年ぶりだなぁ!」

「えっ、でもどうしたの? クオデラント王国に派遣されたんじゃなかったっけ?」

「いやいやそれがさ、俺ってやっぱり兵士に向いてなくてさ〜」

ルシュトックは笑いながら言ったが、僕は少々落ち込んでしまった

「何落ち込んでんのさ? そんなに俺が戻ってきたことが嫌なのか?」

「いや、別にそういうわけじゃないけど、君ならきっと立派な兵士になれると思ってたから……」

「そんなことで落ち込んでんのか? 別にいいじゃんか、兵士になれなくても」

「うん……」

少し、間が空いた

「そんなんで落ち込むのをやめろよな〜、せっかく久しぶりに会えたってのに」

「……そうだね、久しぶりに会えたんだからね」

「そうそう」

僕は落ち込みから抜け出し、ルシュトックに笑顔を見せた

彼もほっと一安心して、それから、これまでのことについて話し合った

実は彼は、タオゼント鳥族という、そこそこ知られている兵士一族なのだが、戦いは好きでなかった

それにも関わらず、一年前にクオデラント王国の兵士として派遣されてしまったのだ

その時はもう、長い間は会うことは無いと思っていたのだが、こんなにも早く会うことが出来た

そのあまりの嬉しさに、ついつい長話をしてしまった

 

 その後、ルシュトックは僕の家で泊まることになった

「相変わらず家の様子は変わってないな」

ルシュトックが言った

僕の家は、岩を削って出来た洞穴のような感じだ

洞穴にはいくつかの部屋があって、それぞれに、キッチン、リビング、寝室と分かれている

今日はもう夜も遅いので、二人は寝室へと入った

寝室といっても、ベッドなどがあるわけではなく、寝るときはそのまま地面に寝そべるのだ

奥には顔を洗うための湧き水がある

「それにしてもお前、少しは痩せろよな」

「な! 何をいきなり!」

いきなりの言葉に、僕はつい顔が赤くなってしまった

確かに僕は、普通のドラゴンよりはかなり太っている

平和な暮らしをしていて、普通のドラゴンのように狩りをしたり

戦いをしたりしないからかも知れない、と僕は思っている

それに比べて、ルシュトックはどちらかと言えば小柄で、体も細めだ

「確かにここでの生活はあれだけど、なんだかドラゴンっぽくないぞ」

「別にいいじゃんか! 僕は僕なんだから!」

「まあ別にあれこれいう筋合いはないが、俺がクオデラント王国で見たドラゴンは、みんな立派な体型をしていたぞ」

「……別に太っててもいいじゃないか……」

「あっ、また落ち込んだな〜、お前はすぐに落ち込み過ぎ! もっと明るく行こうぜ!」

そうルシュトックが言ったものの、結局その日は落ち込んだままだった

良く他のドラゴンと比較されることがあるが、僕はそれが嫌いだ

別に僕は僕なんだから……、この言葉は、いつも自分に言い聞かせてる

 

 そして夜が明けて、僕はおよそ7時頃に目を覚ました

隣を見てみると、ルシュトックはまだ寝ていた

おそらく、昨日帰ってきたばかりで疲れているのだろう

僕は彼を起こさないよう静かにその場を去り、朝の食料を調達しにいった

しばらく経って家に戻ってみると、まだ彼は寝ていた

とりあえず僕は、彼が起きるまで待つことにした

「……ん……今……何時だ……?」

「今は8時だよ」

「8時か……」

ルシュトックはゆっくりと体を起こした

軽く背伸びをして、少し間を空けてからこう言った

「そういえば腹が減ったな、何か食うもんないか?」

「じゃあリビングに来てよ、食事の準備が出来てるから」

「そうか、じゃあ先に行っててくれ、すぐに行くから」

「うん」

僕は先にテーブルについた、数分すると彼がやってきた

どうやら目を覚ますため、少し顔を洗ってきたらしい

「さてと、飯だ飯! しっかりと飯は食わな……」

「? どうしたの?」

「な、なんだこの飯の量は! 俺はこんなに食えねーぞ!」

「違うよ、それは僕の分、君のはこれ、足りる?」

「十分足りるけど、お前そんなに食うのか?」

「えっ、そうだけど?」

「そりゃ食いすぎだぞ、お前」

「えーー! 向こうの人ってこのぐらい食べたりはしないの?」

「当たり前だ、この3分の2ぐらいだぞ」

「そうなんだ……」

僕は俯いた

「はぁ、なんでお前はそうすぐに落ち込むかなぁ」

「だって、食べ過ぎで太ったって、なんかあれじゃん……」

「……まあ別にいいじゃないか、それがお前なんだから」

——そうだ、僕は僕なんだ、いつも言い聞かせているあれだ

別に太っているからって大した問題じゃない、そうだ、それでいいんだ

「そうだね、僕は僕だ」

「そうそう、さあ早く飯を食おうぜ!」

「うん♪」


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