久しぶりに書いてみました。リハビリ的な感じで、正直見直しとかはしてないのであしからず。
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登場人物名 種族
ナーフ ドルフィニアン
ワイド オルカン
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サンドイッチ
「あ、あの……は、はじめ、まして……」
「ごめんなさいね、ワイドさん。この子、とても恥ずかしがり屋なの」
ちがうの、ぼく、はずかしいんじゃないの。
「ガハハ! 気にすることはないさ、すぐに仲良くなってやるよ。なぁ、ナーフ?」
おーっきなおなかが、まっしろなのに、とてもこわいんだ。それに、おかおがないんだ。
「ではワイドさん、ナーフをお願いします」
いつものおねえさんが、いなくなっちゃった。
ぼくと、おーっきなオルカンさんだけ。とてもこわかった。
「んじゃ、ナーフの新しい家を案内しよう」
ワイドさんについていくと、いろいろとおもしろそうなものがあった。だけどぼくは、おかおのない、くろとしろのおーっきなからだのワイドさんがこわかった。
「——さてと、それじゃそろそろ食事にするか」
ワイドさんが、ごはんをだしてくれた。ワイドさんは、とーってもはげしく、たべていた。それもこわかった。
「ん、食べないのか? 食べないと俺みたいに大きくなれないぞー?」
ぼくは、なんだかよくわからない、もののはさまったパンをわたされた。こわかったから、それをたべた。
……とても、おいしかった。
「わぁ、おいしい。それに、やわらかい!」
「おーようやく喋ったか。だろう? これはな、若鶏のもも肉のサンドイッチだ」
「わかど、のもにく?」
「わかどりのももにく。柔らかくて、美味いだろ?」
「うん!」
「まだいっぱいあるから、好きなだけ食っていいぞ」
ぼくはうれしかった。よくわからないけど、おいしくて、うれしかった! ワイドさんって、いいひと。
「ナーフ、そろそろ寝る時間だぞ」
「うん……けぷ」
「どうした、ぽんぽん押さえて?」
「くるしいの」
「そら、食べ過ぎだな。まっ、あれだけ食えばそうなるだろ」
「うーん」
「仕方ないな」
ワイドさんのおっきなからだが、こっちにちかづいてきた! こ、こわいよぉ……
だけど、ワイドさんのおっきなてが、とてもきもちよかった。やっぱりワイドさん、いいひと。
「よっと。思えば久しぶりの抱っこだな」
「えっ?」
「いいや、なんでもない」
あっ、ワイドさんのおかおがあった! なーんだ、ワイドさん、いつもおかおをかくしていたんだ。おもしろいひと!
それからぼくは、ワイドさんといっしょに、ベッドにはいった。おっきなおなかは、こわかったけど、いまはとてもたのしい。ぷにぷにしてて、きもちよかった。
「ねえ、ワイドさん」
「なんだ?」
「あのね、さっきのね、『わかどのもにく』なんだけどね」
「わかどりのももにく、な。それがどうした?」
「あしたも、たべたいな〜」
「おっ、あれが気に入ったのか?」
「うん!」
「なら、ナーフの好きなだけ食べさせてやるぞ」
「やったー!」
それからぼくは、まいにちまいにち、たーっくさん、わかどりのももにくをたべた。ぼくがいうと、ワイドさんがそれを、まいにちだしてくれて、ぼくはまいにちまいにち、おなかがぱんぱんだった。すごくうれしくて、おいしかった!
それからも、僕は大好物の若鶏のもも肉を、間食としても毎日食べ続けた。この地域は周辺諸国に比べ、ずば抜けて鶏肉の生産量が多く、僕が初めて口にしたサンドイッチ以外にも、ジェノベーゼソース——あまり詳しくはないけど、そういうもの——と和えたものなど、鶏肉の料理の幅は広かった。
そのため僕は、本当に毎日、飽くことなく若鶏のもも肉を食べ続けた。特別養子として僕を迎え入れてくれたワイドさん、いや、お父さんは、初回のインスピレーションとは裏腹に、本当に優しく、好きな料理を好きなだけで用意してくれた。おかげでお父さんが最初に言っていたとおり、僕はお父さんのように大きくなれた……いや、今ではすっかりお父さんを抜いていた。
「お父さーん、ご飯まだー?」
重い体を動かし、僕はベッドルームからリビングのソファーに一直線。そして尻餅を付くかのように座ると、ふうふうと息を荒げた。そのたびに目の前のお腹が揺れ、あとは何も見えなかった。
「ほーらナーフ、お前の一番好きな、若鶏のもも肉のサンドイッチだぞー」
「ありがとう、お父さん!」
手渡された大皿をお腹の上に載せ、サンドイッチを頬張る——すると具材の肉がほろほろと崩れ、口の中に長い後味を残して消えていった。この食感に初めて出会った時の衝撃は、本当に忘れられない。
気付けば、ハンバーガー並みにボリュームのあった幾つものサンドイッチが、目先から消えていた。
「おー、もう食ったのか。なら俺の分を食っていいぞ」
そう言ってお父さんは向かいのソファーに座ったが、その後の姿は全く見えなかった。
幼い頃は、お父さんの顔はその大きなお腹のせいで全然見えなかったが、今では自分のお腹とその上の新たなサンドイッチによって、視界が遮られていた。
しかしそれも、僕の食欲にかかればあっという間にまた視界が開けた。
「まだ食べるか、ナーフ?」
「うん、もっと食べたい」
そしてお父さんが、まだ大皿の上にサンドイッチを置いてくれる。こうして僕は毎日毎日、大好きな若鶏のもも肉を食べ続けた。
気が付くと、僕の視界にはお腹というより胸しか見えなかった。あの若鶏のもも肉のサンドイッチはどこだろうと探ると、頭の上前方のお腹にあった。だけどそれも、すぐに無くなった。
「とうさーん、もっと、ふぅ、もっとたべたいよぉ」
「おおそうかそうか。ほら、また載せてやったぞ」
ずしんとお腹に重さが加わった。これが追加の合図、僕はすかさず食事を再開した。ソファーに座り続ける僕にとって、お腹の上のサンドイッチは、無くてはならない存在となっていた。
完