当初の予定ではここいらでエピローグに向かうはずだったのですが、ガーヴァンディをいじりたくなったので延長(爆
♂ ガーヴァンディ Garvandy
♂ ハパッソ Hapasso
♀ ドーガン フレイア Flair
賞品:世界一周旅行也 3
「ふんっ、ふんっ!」
バーベルを肩に担ぎながら、俺は筋トレメニューの一つである数百回のスクワットを終えた。最近この運動を終えると、脚にたっぷりの乳酸が溜まる感覚を覚えてたまらない。益々俺の筋肉に磨きがかかるわけだ。
これもそれも、全てはこの腹のおかげかも知れないな。そう思いながら俺はバーベルを元の場所に戻し、そしてお腹を摩った。今じゃ足下を死角にし、俺の体重の半分弱を担っている。その重みが、特に脚周りの筋肉へ良い負荷をかけてくれるのだ。
「ガーヴァンディ、そろそろ行く?」
一緒に運動施設でトレーニングしていたフレイアが寄って来た。全く彼女は俺を見透かしているのか、なんでいつも丁度腹の空いた頃にこうやって誘ってくるのだろう。
「そうだな、飯にするか」
そして俺達は、レストランへと向かった。
レストラン内は、入店時間を少しずらしたおかげで客は疎らだった。そしてその中に、あのデブデブしたシャーカンがいた。俺は、以前では想像も出来なかったが、なんと彼に声をかける仲になっていた。
「よっ、パブレーン」
するとシャーカンは、頬にたっぷりと詰め込んだ料理を飲み込むと、頭を持ち上げた。
「あ、ガーヴァンディ。今日はシェフの気まぐれフルコースがお勧めだよ。僕はもう美味しくてこれが2つ目なんだけど、もう一回頼もうと思ってるんだ」
「ブハハハハ! 相変わらず良く食うなお前は。なら俺も、そのフルコースを注文するか」
「私もそれにするわ」
俺とフレイアはシャーカンことパブレーンの席に着くと、ウェイターにそのコースを注文した。
このパブレーンと知り合いになったきっかけは、単なる偶然からだった。今回のように昼食の時間をずらす前は、満席前後で入店することが常で、ある時店員から「相席なら座れますが」と勧められたのだ。誰と座っても隣にフレイアが居れば俺はどうでも良かったのでそれに承諾すると、相席の相手になったのがこのパブレーンだったというわけだ。
初対面時、相手は黙々と貪るように食事をしており、第一印象は無骨で
朴訥 とした奴なんだなと思いながら、俺はフレイアと普段通り食事をしていた。だが意外にも、彼との均衡を破ったのはなんとフレイアだった(確か彼女は脂肪太りした人が好きではないようなことを言っていたが、どうやらそれは恋人に対してで、一般の人には別段差別することなく、普遍的に接するようだ)。それ以来、パブレーンと一緒に食べるようになったわけだが、そもそも俺はこの太り過ぎたシャーカンという存在に興味が湧いており、知り合いになってからはあれこれと話を交わした。しかも彼と食事をすると、ついついつられて食べ過ぎてしまう。それが更なるプラスになるので、俺は良い知り合いが出来たと悦喜していた。故に今回も、俺は彼につられてフルコースを追加注文してしまった。
「げふぅ〜。いやぁ食った食った」
「ね、美味しいでしょ?」とパブレーン。
「ああ。お前が選ぶ料理は、どれも美味いよな」
俺は楊枝を咥え、満足そうに腹を叩いた。
「ありがとう、ガーヴァンディ。それじゃ僕は、いつもの間食に向かうね」
そう言うと彼は徐に席を立った。これが普段の別れだが、今回俺はそれに待ったをかけた。
「なあパブレーン。その間食とやらは、何処でしてんだ?」
「料理タウンって所だよ」
「あぁあそこか。特定の料理店が軒を連ねてて、確かちょくちょくラーメンタウンに居たよな」
「あれ、知ってたの?」
「ラーメンタウンは通路から見えるし、お前のその図体は目立つからな」
「あ、はは、確かにそうだよね」
するとここでフレイアが、こんなことを漏らした。
「そういえば、まだそこへは行ってないわね」
俺も「確かに」と頷いた。その様子を見たパブレーンは、二人を見てこう提案した。
「……じゃあ、その、良ければ僕と、一緒に行く?」
ちょっと気まずそうに言った彼。実は色々と彼のいきさつを聞いた所、まずあの体型になったのは学生時代の暗黒期が原因で、それがコミュニケーションを不得意にさせており、そういう人達は自分から誘うのが苦手な傾向にあるのだ。
「ああそうしよう。パブレーン、是非お前のお勧めの店を紹介してくれ」
「うん!」
笑顔で了承したパブレーン。余程嬉しかったのか、付いてく際の彼の後ろ姿が、知り合うまでに見かけていた時より悦楽が窺えた。
その後、デカ盛りタウンにてたっぷりとパフェなどのデザートを食べ進めた俺らは、満腹に満腹を重ねた。フレイアは殆ど食べなかったが、あまりの旨さにたんと食した俺とパブレーンの腹は、数時間でかなり膨れた。翌朝の目覚めで基本腹は凹むというかほぼ元に戻るが、今日のはかなり腹に残りそうだなと感じられた。そしてそれに俺は喜悦していた。これでまたフレイアが喜ぶ、そう思うと次には一人で興奮し始めてしまった。
いや、まだそうなるのは早いと、俺は高まる気持ちをどうにか抑え、パブレーンに感謝の意を伝えた。すると彼は非常に喜び、また一緒に間食しようと答え、そして部屋に戻って行った。俺はこれを期に、今度は間食というものにも目覚め、毎日の楽しみがまた一つ増えた。
「さて、俺らも帰るか」
「そうね」
並んで歩く横で、フレイアは「立派ね〜」と言いながら、俺の腹をちょくちょく玩んでいた。俺が元居た世界では屈辱的なことだが、今ではすっかりその感覚が抜け、寧ろ栄光の証としてその行為を受け取った。
(元居たか……フフ、俺ながら本当にあの世界を離脱しちまったらしいな)
その深夜。俺はいつものように空腹で目覚め、フレイアと共に夜食のためレストランへと向かった。夜中でも、そこには相変わらずパブレーンが既におり、もはや当たり前となった三人での食事を行なった。それからはパブレーンの言葉で、俺は遂に夜食の間食という領域に足を踏み入れた。まだまだ知らない世界が沢山あると、俺は更なる楽しみに心踊らせていた。
続