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結局まだ未完成という部類にある小説「ゲーム」。それに似た感じのものなのですが、色々点在していた小規模ネタがリンクしたので書いてみます。あとついでに、今回は珍しく主人公を女性にしてみたり。それと時間切れなので、まだ太膨要素まで話が進んでいません。

 


「はっ――!」

 がばっと上体を起こすと、そこは全面真っ白な部屋の中。辺りを見回すと、シンク、トイレ、下に配膳口のあるスライド式の二枚扉。そして今座っているベッド。どれも見覚えのないもの。

 ……いえ、それだけじゃない。他にもこの真っ新(=まっさら)な個室に、見覚えのないものがある。

 自分の手を見てみた。四本の、青色の指がそこにある。

「私……私は、誰なの?」

 桃色のネグリジェを着ていた。ここに何か目印がないかしらと、私はポケットの中を探った。そして手にしたのは、たった一枚の紙切れ。私はそれを広げた。

「『レベル0:部屋を出ろ。10ナアム獲得』。何よこれ?」

 全く訳が分からないわ、そもそもナアムって何。でもとにかく、ここから出ることは重要よね、と私は扉に向かい、取っ手に手をかけた。

「ぁいた!」

 サッと差し伸べた手を引っ込めた私。突然の電撃が走ったのだ、それも静電気なんていう柔な代物じゃあない。

 危険を察知した私は、一旦扉から退いた。そして辺りを見回した。すると目に、ベッドのシーツが入った。無意識の内に私は、それこそ条件反射的にそのシーツを剥いで、ボクサーのようにそれを手に巻き付けた。あまり深く考えてはいないのだが、かなり整然とその行為を行なった自分に吃驚した。まさか私の本職は女性ボクサーなのかしら。

 しかしその真意など今この状況では二の次。私はシーツを巻いた手で、再びドアノブを握りしめた。すると電気が走らず、私はそのまま扉をゆっくりとあけた。慎重に、敵がいるかも知れないから――

(敵? 何を思ってるの、私。過去の記憶が戻ればいいんだけど)

 私は頭を横に二度振り、そして部屋を出た。その一瞬、ずしんと足に重みがかかった。

「んっ……重力が変わった?」

 そんな馬鹿げた話、なんで口に出してしまったのだろう。でも確認のため、私は一度部屋に戻り、そして再び出た。でも先ほどのような感覚は、もうなかった。

 少し自分を嘲笑し、まだ頭が混乱してるのねと私は、広い環状の廊下に出た。そこには一定間隔で外側に扉が付いており、自身の部屋を含めると全部で八部屋あった。そしてその中央には、ガラス張りの軸のような空間があり、私はそこを覗き見た。前を向けば対する部屋があり、下方は真っ暗、上方も真っ暗。垂直が永遠と続いているかのように感じる。

「動くな!」

 いきなりの大声に、びくんと体を硬直させた私。

「そうだ。よし、こっちを向け」

 踵を返した私の目に飛び込んで来たのは、矢を(=)いだ緑色の蜥蜴。何やら重装な鎧兜をしており、顔が窺い知れない。けど一つ分かることは、彼は古めかしい古風な格好をしているということ。

 

    続


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