どうにか仕事も一段落してピークは過ぎたのですが、
どうやらまた別のプロジェクトがあるみたいなので、
それがどう出るかでまた進捗度が変わってきそう……
とりあえず、一山越したんでゆったりと休日過ごしていたら、
あっという間に時間が過ぎてしまった!
やばい、休みに何も製作行為してない、ということで、
慌てて途中までしたためていたムープの続編を書きました。
この話も終盤に近付いて来たので、そろそろエピローグへと向かわせようと思います。
固有名詞
男 緑竜 ムープ Moop
男 赤竜 ガンヴァ Ganva
男 東洋竜 リモウ Limou
女 黄竜 ミリース Millies
ムープの暮らし 9 〜第五年目〜
時が流れるのはあっと言う間だった。ムープのオーバーオールのサイズや彼のベーシックインカムの増額も、果たして累計何回行なったことか。
「ムープ、じゃあガンヴァの店に行く?」とミリース。
「うん、むぷぅ」
軽いげっぷを漏らすムープ。これは朝食前の間食によるものだ。
それから彼は、まるでデジャブように、増額のたびに来訪する役員のように、フットレストを下げた定位置のソファーから少しもがきながら立ち上がった。
地面に接地するオーバーオール。それは彼のお腹があまりに垂れ下がるほどデカ過ぎ、股下があると身に付けた時にそのお腹が持ち上げられ、結果大きく前に迫り出してしまい、正面から何も手が届かなくなってしまうからだ。
それなら、真横から手を伸ばせば良いじゃないかと考える人もいるかも知れないが、最近の彼は脇腹もかなり成長しており、それもままならないのだ。
ゆえに現在、ムープのオーバーオールは股下を無くすことで、彼のお腹を整形せず、地面と擦らないようにするための、いわば防護服に近い存在となっていた。それを彼は、今や自身の一つの摂理として扱っている。
そんなムープは、先で待つミリースのあとに従い玄関を、両側の枠を支えにして出ると、既に荒くなった息で目と鼻の先のガンヴァの店に向かい、入店した。
「よぉミリース、それにムープ。今日もいつもので良いな?」
「ええ」
ミリースが答えるあいだにも、既にガンヴァはカウンター越しで手を動かしていた。
「にしてもよ、二人は結婚しないのか?」
「えっ?」
彼女は吃驚したが、ムープは朝食が待ち切れないため事前用意された倍量ハンバーガセットを頬張るだけだった。
「もう同棲して彼此二年ぐらいじゃねーのか?」
「そう、ねぇ。もうそんなになるかしら」
「そこまで居たらよ、いっそ結婚しちまった方が楽じゃねーのか?」
「うーん……ムープはどう思う?」
「むぐっ?」
頬にたっぷりと食べ物を蓄えたムープは、しばし食べ物を噛み飲み下すと、答えた。
「僕はどっちでも良いよ。ミリースが決めて」と、オードブル代わりの倍量ハンバーガセット4個を丁度平らげた彼は適当に答えた。細かなことは彼女に任せたいほど、彼は懈怠になっていた。
「そ、そう? うーん、それじゃ……そうしちゃおうかしら」
「それが良いって。マネーカードの管理も1つで済むしな」
そしてガンヴァは、拵えたピザなどの料理を二人の前に並べた。その量の差は歴然、10倍弱もの差があった。
そりゃムープとミリースは体格的に言えば、四捨五入したら10倍の差はあるが、通常のピザセットを食べる彼女と倍量のピザセット4つを食す彼とでは、こびとと巨人のような食事量の違いである。しかも彼は事前に倍量ハンバーガセットを4つも食しているし、そもそもスタンダードな量が普通でないのだから、ムープの巨体が益々でかくなるのも必至である。
朝食を終えたムープは、ミリースの補助ありきでショッピングモールまで半時間以上もかけて移動すると、休憩がてらに彼女の店(今は知り合いが店番をしている)でクレープを何十個も腹に収めた。
そして今、二人は昼食のお決まりとなった、リモウの店での満漢全席を堪能していた。
「げふぅ〜。んんー、もうちょっと食べたいかなぁ」
ムープの言葉にリモウもミリースも大爆笑だった。
「凄いアルね! 我の母国に行ったら超有名人だヨ。それじゃ満漢全席追加ネ」
リモウは、当店最高記録の、満漢全席6つ目の注文を厨房に伝えた。
「でもムープ、食べられる?」
「大丈夫だよミリース、残したらリモウさんが食べてくれるから」
「ハハハ、任せるアルね!」そう言ってリモウは自慢がてらに、自身の突き出た東洋竜の腹を叩いた。ミリースの倍以上重みのある体から繰り出される、そのパンパンに膨れた腹部からの鼕
々 たる音は見事なものだが、それでも体重はムープの3分の1というから驚きだ。それから、結局満漢全席6つ目も全て完食したムープは、一日で食べた大量の食事でずしりと重量のある彼の体重を更に嵩まさせ、完全にミリースの補助無しでは歩行が困難になっていた。
「……ふっ、ふぅ〜!」
冷気付きのベンチにどっかりと座るムープ。汗もダクダクで、ショッピングモールへ行くよりも、帰ってくる時間の方が数十分も遅くなっていた。
そんな疲労困憊な彼のため、ミリースは向かいに新しく出来たアイス屋で、アイスをバケツで購入してそれを彼に与えた。
「美味しい、ムープ?」
「はぐっ、んぐっ、美味しいよ、それに冷たくて気持ちい——げふっ!」
嬉しそうにアイスを頬張るムープに、ミリースは心なしかうっとりしていた。
その後、ベンチでムープの発汗が収まった頃、再びミリースの手を借り、二人は自宅へと帰り着いた。
しかしながら、ウェストが食後のせいもあって5m以上にもなっていた彼は、家の入り口を通るのもぎりぎりの状態であった。間もなく玄関の両側に彼の両脇が引っかかり、そして突っかかり、やがては自力で体を内外に捩じ込めなくなり、ミリースの手による押し込み無しでは出入りが不可能となるだろう。
だが、日に日に食欲に溺惑するムープは、そんなこと無関係だよとでも言うように、定位置のフットレスト付きソファーでまだ荒い息を整える時間をも惜しみ、ガンヴァから毎日頂く薫製肉を口に詰め込みながら、それを配給量と容量を増やして貰ったファイナーで胃に流し込み、ミリースが注文してくれた出前のバーグバーグのハンバーグを首を長くして待つのだった。
続く