あるぽっちゃりと太った竜。彼の給料は底無しの胃袋へと消えていた。
そのうち食事量も増え、給料の減りも激しく、生活が苦しくなった。
だがそこに、「記憶を売ります」という看板を発見。
言って見ると、裏路地のぽつんとした暗い陋屋だった。
渋々中に入ると、そこにはとある沢山の線を繋いだ機械類が沢山。
そこへ支配人登場。彼は言う、機械を頭につけて、あなたを記憶を買うと。
ただし買った記憶は、あなたには残らないと。
そして取り出した記憶はDVDかされ、擬似体験装置にて、記憶から五感を全て捕え、観覧者に送らせるのだ。
そうすることで、記憶DVDと疑似体験装置によって、自分とは違う自分を味わうことが出来るのだ。
とりあえず、太っていることで詰られる嫌な思い出を全て買って貰うことに。
するとなんと、もらったお金は10万円!
「世の中には物好きがいるんだよ」と支配人。
そしてそこから彼は零落していく。
周りから痩せた方が良いよと言われ、それは自分では分かっていてもどうしようもない。
そしてお金がなくなり記憶を売る。痩せた方が良いよと言われたことを忘れる。
ダイエットをすると宣言したことも忘れ、ぽかんとして相手を怒らせる。
そして最後には、仕事の内容まで記憶を売ってしまい、竜は会社をクビに。
最終的に彼は記憶を売って生きることに。
記憶を売って、その金で食う、そんな堕落した生活によって、彼は太り過ぎによって行動が困難になった。
だがそれでも彼は努力して記憶を売りに行った。そしたらどうだろうか?
何だか憂鬱、辛い記憶など一切吹っ飛んだ。気付けば動くのが辛いような気がしても、それが普通に思えた。
それは老いて行動力が低下しても、せっかちな性格でもいらいらしない、そんな感じだ。
やがて彼は動くことが出来なくなった。するとそこへ「出前記憶売却サービス」の開始のお知らせ。
もちろん彼はそれを行い、家で記憶を売り、お金を貰い、それで出前を取り、寝る。
要は食っちゃ寝生活だ。その結果彼はぶくぶく太った。
だが毎日のように記憶を売る彼にとって、毎日が常に日常だった。
太ってる竜の姿の記憶を欲しがるものもいる。
そういった人達がいるからこそ、日に日に彼の体と共に、給料も膨れ上がった。
あなたの中に嫌な記憶はありますか? 忘れたいと思う記憶はありますか?
……だけど、それは本当に忘れて良い記憶なのでしょうか?
本当に大切なものは失ってから分かる――だが記憶は、失ったらそれまでだということを、皆に知ってもらいたい
THE END