初心に帰ろうと思った今日この頃。昔は竜が好きで良く登場させていましたが、ここのところ一切してないことが判明。海洋族贔屓してましたが、竜も好きですし、今回、公開してませんがちょっと書いてたネタを利用したりして、新しい物語を書いてみました。
エグバート・クラウン Egbert・Crown
ピウス・ヴェラ Pius・Vela
ノートパソコンをいじり、画像やら情報やらを探す一人の竜。便利になったものだな、と彼は心底感嘆していた。
「ん……これは?」
彼が見つけたのは、ジャングル奥地の村の、更にその奥にある地下遺跡の話だった。なるほど、仮に飛翔出来たとしても、ジャングルには着地も出来ず、またそこから飛び上がることも出来ないゆえ、そこでの調査は難しい。しかも地下遺跡ともなれば、ただでさえ俯瞰しても見えない遺跡を、それでは見つけることもできない。
しかし、ネット上を散策しても、他には一切その情報はない。ガセか。しかし本当だとしたら、大きな発見となる——これは楽しくなりそうだと、彼の心は踊り始めた。
彼はノートパソコンを閉じ、それを鞄の中にしまった。そして隣の倉庫へ入ると、値打ちのありそうな骨董品やら発掘品やらが犇めき合う中、革製の発掘道具をしまうベルトを手に取ると、部屋に戻ってそれを鞄にしまい、更に鞭やら食料品などを入れて準備を整えると、彼は再び長らく、家を留守にすることとなった。
ノートパソコンで見たジャングルを元に、そこへの移動経路を確りと調べていた竜は、まずそのジャングルがある国の空港へと向かっていた。その搭乗前、再びノートパソコンの恩恵を借り、彼はジャングルのガイドを雇っていた。
「ふぅ、まさか二回も飛行機を乗り継ぐとはな……さすが辺境の地」
場所が場所だけに、二回目の飛行機は、一日にたったの一回しか飛ばない。そのため、時間的にも二日もかかっており、座りっぱなしで彼は少し疲労していた。
そんな愚痴をもらしながら、彼はとても小さく簡素な空港の改札を抜けると、既に見える出口へと向かった。平日ということもあってか、他の乗客はおらず、たった一人そこに立っていることから、その人物がどうやらガイドらしい。しかしながらガイドにしては、やや腹が出過ぎなのでは、そう彼は静かに思った。もしかして原住民なのか——それなら伝統や習慣のように良くあることだ。だがここまでいくと……。横も大きいし、どう見ても太り過ぎなサラリーマンを彷彿とさせ、タンクトップのシャツを引っ張るように支えられているお腹が、ズボンのベルトに乗っかるだけでなく、チャックの部分にまで垂れ下がっていたのだ。しかも丸見えの腕はむちむちとし、二の腕はたぷたぷとしているため、もし人が行き来していたら、この人がガイドだとは気がつかなかっただろう。
「あの……あなたが、ガイド?」
近付くと、少し細めな体型の彼と相手の体型がより際立った。
「そうだ。君がもしや、エグバートかい?」
「ああ」
「俺はピウスだ。いやあ、久々の客で嬉しいよ」
「確かに失礼だが、ここは人が少ないようだし」
「少ないなんてもんじゃないさ。だがまっ、来てくれたからには、確りとガイドしてやるぞ。それで、何処へ行きたいんだ?」
「僕は考古学者をしててな、それでここへは、ジャングル内にある地下遺跡の調査に来た」
すると、その言葉を聞いたピウスの顔が、一瞬険しくなった。
「なるほど、分かった。それじゃあまず、村へと移動しよう」
ピウスは、エグバートを外へと連れた。そこには小型トラックがあり、エグバートはそのまま乗り込んで、ピウスは運転席へと回り込んで乗った。それほど大きくはないトラック、対して体の大きなピウスは、少し窮屈そうにギアを入れると、アクセルを踏んでハンドルを切った。
暫く、公道と思しき舗装されてない道を進むと、たくさんの木々で溢れ始めた。どうやらジャングルに入っていくようだ。そのまま先に進むと、遂には完全にジャングルとなり、その辺りで小さな村が現れた。
「ここからは徒歩だ」
ピウスはトラックのキーを外して降り、エグバートと歩き始めた。すると彼の周りに、原住民達が近寄って来た。何やら言葉を話しているようだが、エグバートには理解出来ない。
「なんて言ってるんだ?」
「これから何処に行くのかと。だから遺跡に行くと伝えたら、準備済みだとさ」
「準備済み?」
「ああ。地下遺跡があると見える小さな遺跡が、先の窪地にあるんだ。ジャングルの木々に覆われて、上空からじゃ見えないそこに、キャンプを張ったそうだ」
「随分と準備がいいんだな」
「以前、そこを調査したことがあるんだ」
「なんだって? てことは僕以外にも、そこを調査した奴がいるってことか」
「そうだ。だがその時は、結局何も見つけられなかったけどな——よし、それじゃあキャンプ地に行くか」
ピウスは歩き始めた。しかし序盤にして、少し彼の足取りが重くなり始めた。やはり長らくガイドをしていないその体型が影響しているようだ。エグバートは彼に気を遣い、彼と足並みを揃えて歩いた。
二十分ほどして、緩やかにだが、下り坂になった。そこから更に十分下ると、ようやく地形は平らになり、そして森の天井がだいぶ遠くに離れたもとに、石垣の遺跡が登場した。その手前には、ピウスの言っていたようにキャンプ地があり、プレハブ並みの大きなテントも張られていた。
「これは……すごい遺跡だ。こんなジャングルの中に、こんなものがあるなんて」
「噂ではこの下に、君の言う地下遺跡があると聞いたが、今現在、その道筋は見つかっていない」
「前回の調査は、どれぐらいの期間やったんだ?」
「大凡三年だ。しかしそれほど大きくないこの遺跡に、それだけの期間を要して手がかりさえ掴めなかったため、調査チームは資金不足とスポンサーからの信頼を失って終わっちまったのさ」
「もったいない。絶対に何かあるぞ、これは」
エグバートはピウスの言葉に、より一層意気込んだ。ある程度調査をしているのなら、内部のことについて情報は多数あるはず。それを使い、更に自分の知識を重ねれば、手早く新発見が出来るかも知れない。
「早速調査を始めるのか?」とピウス。
「そうだな。だがその前に、前回の調査データを見せて貰うことは出来るか?」
「勿論だ、ちゃんと用意してあるはずだ」
「有り難い。是非それを見せて欲しい」
「なら、それを見ながら昼食でも取ろう。原住民達がさっき作ってたからな」
「なんだか、本当に用意周到だな」
「当たり前さ。俺もそうだが、原住民達も再調査に意気込んでるんだ」
そして彼は、一番大きなメインテントに入って、そこでエグバートに資料を渡して解説しながら、食事をした。専らエグバートは、資料に夢中でスープを一杯嗜んだだけで、反対にピウスは、スープを三杯と飲み、更に原住民達が用意してくれたハンバーグと木の実のデザートを、腹が膨れるまで平らげていた。