~ イノベーター ~
イノベーター(innovator) 革新者。新しい動向のつくり手。
リコーラー(recaller) 回収者
ファーロング(Far Long) 生命兵器開発社の名前の一つ
PRC(Prof. Recall Corp.) Professional Recall Corporation バルが所属している企業
バル(val) リコーラーの一人
ファル(fal) 正式名称 FAL-050120-011212 の生命兵器
FAL は、製造会社の Far Long から取ったもの
長きに渡る戦争は、ようやく終わりを向かえた
数々の生命兵器は今も尚、戦場の跡地に多く残されている
それらを長年に渡り回収し続けているのが
私達、リコーラーである
今日も私達は、戦場の跡地に残された生命兵器を回収している
「こちらバル。近くに生命兵器を探知した。すぐに回収に向かう」
「了解」
バルはいつものように生命探知機を使い、生命兵器の回収を行っていた
「……こいつか。初めて見る種類だな」
彼は探知機に反応していた生命兵器を見つけた
だがその生命兵器は、今まで見たことの無いとても変わった者だった
全身が真っ白で、触ってみるとゴムのような弾力性があった
(一体、こいつはどんな目的で使われていたんだろうか?)
そんなことを思いながら、彼はその生命兵器を肩に担げて、PRCへと向かって行った
――そして、PRCまで後半分まで行ったとき
「……う、う~ん……」
「!! こいつ、まだ生きてるのか?!」
「ふぁ~、良く寝た♪」
(本当に、本当にこいつは生命兵器、なのか……?)
「あれ? もしかしてまた遅刻なの?!」
「……は?」
「ご、ごめんなさい! 僕、別に寝坊したわけじゃなくて――」
「ちょ、ちょっと待て! 一体何のことを言ってるんだ?!」
「……え? 寝坊したわけじゃないの?」
両者戸惑いながらも、なんとかして話をまとめていった
そして、その生命兵器の名前は「FAL-050120-011212」ということを知った
「FAL-050120-011212って、随分長い名前だな」
「う~ん、そうかなぁ?」
「いちいち言うのが面倒だしなぁ……。FALだから、ファルって呼んでもいいかな?」
「ファル……いい、それ気に入ったよ♪ 僕はこれからファルなんだね、嬉しいなぁ♪」
「それは良かった。じゃあファル、一つ聞きたいんだが、お前は一体どんな役割をしているんだ?」
「僕? 僕はね、エネルギー蓄蔵の役割をしてるんだ!」
「……なるほど。だが一体、どうやってそのエネルギーを蓄えるんだ?」
「それはね、何か食べるの」
「食べる?」
「そう。僕は何か食べて、その食べた物をエネルギーとして体に蓄えるの」
「体に? ってことは……」
「つまり、脂肪ってこと♪ 僕は脂肪を蓄えて、それをエネルギーに変換出来るんだよ」
「……随分と変わった仕組みなんだな」
「そうかも知れないね、僕だけ周りとは違っていたし。だけど、それは個性っていうんだよね?」
「まぁ……そういうことかも知れないな」
その後バルは、PRCに向かいつつ、ファルが話す戦争時代のことを聞いていた
そしてPRCへと着いた
「よぉ、今回の収穫はそいつか」
「……その言い方はやめろと言っただろ。彼らだって皆同じ生き物だ」
「悪かったよ。じゃ、出来るだけ早めに処理を行うから待ってな」
「処理? 僕の体に何かするの?」
「いや、それは……」
バルは何も言えなかった
それは、言ってはいけないことなのかも知れない
PRCは、生命兵器をリコールし、その後廃棄するのだ
生命兵器の中には、とても危険な者も混じっているため
廃棄しなければ、周りに被害を齎してしまうことがあるのだ
現に何回か、生命兵器の暴走により、PRCは大きな被害を受けているのだ
「僕、死んじゃうの?」
ファルは、ガラス越しに廃棄される生命兵器を眺めていた
「……すまない。なんとかしてやりたいんだが……」
バルは今までに、一度たりとも生命兵器に感情などは持たなかったが
ファルにだけは違っていた
彼はまるで子供のようで、それが本当の生命体と同じように感じさせているのかもしれない
だが、何か、何かある、そう感じていた
「おい、そいつの番だ! 早くこっちへ運んで来い!」
「……仕方がないよ。だって、僕は戦いのために生まれたんだから……。
こんな平和なところに、そんなものは必要ないものね……」
ファルは、自分自身の意思で、廃棄場へと向かって行った
「僕、嬉しかったよ、ファルって名前つけてもらえて。ありがとうね、バル♪」
ファルは振りかえり、幸せいっぱいの笑顔を見せた。死が近づいているのにも関わらず……
「ま、待ってくれ!」
「どうした?」
「その、そいつは俺が預かる」
「はっ?! 何を言ってるんだ! 生命兵器だぞ!」
「分かってる! だけど、ファルは違う!」
「自分の言ってることが分かってるのか?! それは完璧な規則違反だぞ!
もしそんなことをしたら、PRCを確実にやめさせられるぞ!」
「それでもいい。俺は、ファルと一緒にいたんだ」
「……本当にいいのか? そいつに対する保証も何一つ無いんだぞ」
「……あぁ、俺はそう決めた」
「そうか、そこまで言うなら……」
「ありがとう、感謝する」
「そりゃお前さんには色々と助けられたからな。
……またな、バル」
「ああ、またな」
バルは、PRCを解雇された
だが彼は、そのことを一切悔いには思わなかった
「本当にそれで良かったの?」
「あぁ、お前を殺すことなんて出来ない」
「バル、ありがとう♪ 僕、とっても嬉しいよ!」
そしてファルと一緒に、一番近い街、ラーヴェルへと向かった
だがラーヴェルに行くには、山を越えるか砂漠を越えなくてはならない
しかし山は、つい最近山で起きた大雨により、道が途絶えてしまった
そこで二匹は、砂漠を越える道を行くことにした
そして、その途中の崖沿いの道を歩いていた時のこと
「そういや、水筒を持っていなかったな。どうやって砂漠を越えようか……」
「?? どういうこと?」
「つまり水が無いってことさ。砂漠を越えるにはそれなりの水を持っていかないと」
「じゃあさ、あれはどうかな?」
ファルが指差したのは、崖から湧き出ていた水だった
「あれって……入れる物が無いからどうしようも無いだろ?」
「ううん、ここにあるよ?」
そういってファルは、湧き水のところへ行き、頭を上に向け水を飲み始めた
「……何をやってるんだ?」
「ばあ、びででよ」(まあ、見ててよ)
最初はバルには何をしているのかサッパリだった
だが、徐々にその変化に気付いていった