グレース・タウン Grace Town
ノガード Nogard
男 竜 筋肉質 俺
フロウ Flow
男 狼 痩せ→痩せ気味 俺
タール Tar
女 鼠 ふっくら 私
ドレイジル Drazil
男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分
ニプロッド Nihplod
女 海豚 痩せ→痩せ気味→普通 あたし
タブ Tab
男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺
イザーラ Izara
男の子 蜥蜴+鼠 ふっくら 僕
ルエイソレット Ruasoretp
男 翼竜 俺 筋肉質 → 超肥満
気を失ってからどれくらい経っただろうか。ふとノガードは、目を覚まして、ゆっくりと重い瞼を開けた。彼には一つだけ、心配していることがあったのだ。
「おっ、どうやらお目覚めのようだな」
真向かいの、やや離れた位置に、立派な木の机とリクライニングチェアがあった。そこには、あのルエイソレットかどっかりと寄りかかり、まるで自慢の腹を誇張しているかのようだ。
そんな彼の右翼には、何かのボタンらしきものが握られていた。
「全く、あれだけ忠告してやったのに、どうして聞かなかった?」
「そんなこと、俺には知ったこっちゃないからな」
「だが今は、そうも言ってられないだろう?」
確かに、と最もらしくノガードは頷いた。彼は今、まるで
磔 にされたキリストの如く、手足を背中にある十字架に縛られていたのだ。しかもその十字架は、地面から出て来たものらしく、ノガードが力を込めても、動く気配はなかった。「無理無理、諦めな。幾ら屈強なお前でも、その十字架からは逃れられんさ」
するとルエイソレットは、一度背中に力をいれ、少し勢いをつけて椅子から立ち上がると、徐にノガードの近づいた。
「さあてと、これからお前はどうなるのか、もう分かっているよな」と彼は、ボタンを相手に示した。
「ああ、勿論さ」
「……さすがはノガード、と言ったところか。死に対して、怯えもしないのか」
「外にいた時は、常に命を狙われていたからな」
「ふん、面白みのない奴だな」とルエイソレットは、更にノガードに近づき、もはや目と鼻の先にまで歩み寄った。
「だが、もしお前の部下達も殺すと言ったら、さすがに血相を変えるだろ?」
しかしながらノガードは、表情を一切変えなかった。その自信に満ち溢れたような顔つきはどこから出てくるのか、ルエイソレットは眉を顰めた。
「グレース・タウンは、俺にとっちゃ狭い街だ。お前のアジトなんぞ、本気になれば簡単に見つけられる」
「ははは! 確かにお前の体は“でかい”から、お前にとっちゃこの街は小さいもんな」
「ふん、そんな悪ふざけを言えるのも、あと僅かだぞ」
「ほう? それならやって見ろよ」
するとノガードは、突如相手を挑発するように、ルエイソレットの顔に唾を吐き付けた。溜まらずルエイソレットは歯軋りをし、顔を歪めさせると、踵を返してどすどすと、机の方まで戻って行った。
そして彼は、振り返りざまにこう言った。
「お別れだ、ノガード」
ルエイソレットは、手に持っていたボタンを、ためらうことなく押した。同時に、彼の部屋が一瞬にして、暗闇に包まれた。
「おいっ、どうなってるんだ!?」
どこかの監視室で、室長が叫んだ。職員が慌てて、モニタ機器を操作するが、映っているのは真っ暗な映像だけ。しかしやがて、向こうで何か圧力がかかっているのか、映像にはぴしぴしと罅割れが生じ、やがてそこには、ノイズしか映らなくなった。
「クソ、どうやら壊れたらしい」
「何があったんだ? まさか爆弾の火薬量を間違えたんじゃないだろうな?」
「そんなことはありません。彼がノガードに見せ付けたものと同じものです。もし奴の体内で爆弾を爆発させたら、その体が粉々に吹き飛ぶだけなはずです」
「なら今の状況はどうなってるっていうんだ?」
「分かりません……とにかく、監視カメラが壊れたからには、もうどうすることも——」
「畜生! なんであの部屋以外にもカメラを付けられなかったんだ」
「仕方がありませんよ、室長。この施設のルールに則り、外部とのあらゆる繋がりは、その“接点”でのみしか許されないのですから」
その言葉に室長は、片手を顎に当てて、思案に暮れた。やがて彼は、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「もう、やるしかないのか」
「……冗談、ですよね?」
「もっと人を集めたかったが、この際仕方がないだろう。あのノガードという奴、何かを企んでいる。きっとこれも、奴の仕業かもしれん。そうでなければ、どうして死を目の前にして堂々としていられる?」
「つまり室長は、奴がまだ生きていると思ってるのですか?」
「そう考えた方が無難だろう。あいつは単なる筋肉馬鹿かと思ったら、そうではないようだ」
「しかし、次の例の囚人がここに来るのは、半年後ですよ」
「そうか……まああいつだけでもいなくなってくれれば、少しは憂さも晴れるだろう」
「分かりました。では半年後、準備に取り掛かります」
「ああ。それまでにノガードの奴が、ここの存在を嗅ぎ付けないことを祈ろう」