グレース・タウン Grace Town
ノガード Nogard
男 竜 筋肉質 俺
フロウ Flow
男 狼 痩せ→痩せ気味 俺
タール Tar
女 鼠 ふっくら 私
ドレイジル Drazil
男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分
ニプロッド Nihplod
女 海豚 痩せ→痩せ気味→ あたし
タブ Tab
男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺
イザーラ Izara
男の子 蜥蜴+鼠 ふっくら 僕
ルエイソレット Ruasoretp
男 翼竜 俺 筋肉質 → 超肥満
「な、何者だ貴様!?」
「俺の名前はノガードだ、確りと覚えておきな!」
遠くまで聞こえるような大声で、ノガードは叫んだ。彼は今、南部ボスの屋敷に来ていた。そこでの侵略は、今までとは違い、荒れ狂う波の如く跋扈して、護衛達が次々とやって来た。だがノガードは、そんなのお構いなしに暴れまくり、次々とやって来る相手をなぎ倒して意識不明にさせた。
「おらおら、次の奴、さっさとかかって来いや!」とノガードは、同じぐらいの巨体を誇る川獺を、相手の力を利用して片手で背負い投げした。
その様子を見て、ここのボスである恐竜が、どうするべきかと悩んでいた。ここは三階。彼はノガードのように巨体だが、筋肉というよりルエイソレットに近い脂肪太りなため、ここから落ちたら確実に脚を折ってしまう。しかしだからといってここから背を向けて逃げれば、ボスとしての品格が下がるどころか、閉鎖されたこのグレース・タウン、やがて存在がばれ、どうなることか分かったものじゃない。
南部ボスの恐竜の“悪い”脳は今、これまでにないほど目まぐるしく回転していた。
「さあてと、次はお前の番だな」
気がつけば、ノガードは何十人という護衛達を、全員倒していた。まだ息はあるが、みんなのびていて、とても戦える状況ではない。
ボスは、ノガードがにじり寄るさまを、恐怖で怯えながら見守った。
その時だった。突如ノガードの目が見開かれた。思わず身構えたボスだったが、その後ノガードは、どすんと豪快な音を立てて、前に倒れた。
そして、開けた前の視界に、一人の、でっぷりとした翼竜が、拳銃らしき物を構えて立っていた。
「馬鹿な奴だ」と、ルエイソレットは言った。そして持ち上げた翼を降ろしながら、こう付け加えた。
「何もしなければ、お前は死ななかったのに……」
そして彼は、指をぱちんとならし、後ろから彼の側近達を呼び寄せると、ノガードをこの部屋から運ばせた。
「あ……あ、ありがとうございます、ルエイソレット様」
「ああ」
そのままルエイソレットは、再び翼を持ち上げた。そして、先ほどとは別の拳銃で、恐竜を撃ち抜いた。ノガードの時とは違い、彼が倒れた床には、ゆっくりと血が広がって行った。
「……ボス、大丈夫かなぁ」
フロウが心配そうに、本拠地の団欒所で呟いた。
「大丈夫ですよ。ノガードさんは、ああ見えて、しっかりと綿密な作戦を立てる人ですから」とタール。彼女は、腕の中で眠る息子のイザーラを抱えながら、夫のドレイジルに寄り添っていた。
時刻は夜中の一時。子持ちの彼女には、もう眠り時間なのである。
その時だった。慌てて駆け足で、二人の同僚達がこの団欒所にやって来た。
「大変よ!」第一声はニプロッドだった。以前より更に体に肉がついているが、海豚としては適正な体型で、同族からすれば舌舐めずりをしてしまうほど美しい体型になっていた。
その後ろから、タブもかけており、彼女に続いてこう言った。
「ボスが攫われた!」
「な、なんだって!?」とフロウが思わず立ち上がった。
「ボスはあの屋敷に行って、そこでどうやら奴らと戦ったらしいんだけど……あたしが最後に見た時は、ルエイソレットの部下達が、意識を失ったボスを車に乗せて運ばれていたの」
「そのあと、俺が飛んであとを付けたんだが——そしてら、中央のタワーに運ばれていた」
「くそ、あそこはルエイソレットの本拠地じゃないか! やはりあんな作戦、無謀だったんだ……早く助けにいかないと!」
しかし、タールはそうは思っていないようだった。
「待ちましょう。ノガードさんは、ここで待てと言っていたじゃないですか」
「何言ってるんだ、作戦は失敗したんだ! ボスを見殺しにはできない」
「そうでしょうか? ノガードさんは、決して気が違ったわけではないのに、あんな乱雑な作戦を組むとは思いません。きっと、何か考えがあるんだと思います」
「考えって——大体よ、ルエイソレットの本拠地に連れ去られることが作戦だとしたら、命を投げ捨てるのと一緒じゃないか」
「でも……私は、ボスを信じます」
フロウは、全員の顔を見回した。
「……少しぐらい、待ちましょうか」とニプロッド。するとドレイジルも、それに賛同した。
「自分もそう思う。今までのを見ていて、ボスがあんな適当そうな作戦を練るとは思えない。きっと何か、裏があると思う——ただそれは、身を呈した作戦かも知れない」
「身を呈した?」とフロウが聞き返した。
「ああ。思うに、きっとボスは何か危険な賭けに出ているのかも知れない。だから自分らに内緒で、作戦を練ったんだ」
「つまり、俺達がさっきまでやってた作戦は、単なるうわべだけのものだってことか?」
「そうだ。ボスは、ああ見えて心優しい。そうでなかったら、どうしてあんな落ちこぼれの自分達を救ったりした? 多分、今回も自分たちのことを思ってやったんじゃないのか?」
フロウは、その言葉を少し心の中で反芻した。そしてしばらく沈黙が流れたあと、彼はふんと鼻息を鳴らして、こう囁いた。
「全く、気随な方だな、俺達のボスは」