グレース・タウン Grace Town
ノガード Nogard
男 竜 筋肉質 俺
フロウ Flow
男 狼 痩せ→痩せ気味 俺
タール Tar
女 鼠 ふっくら 私
ドレイジル Drazil
男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分
ニプロッド Nihplod
女 海豚 痩せ→痩せ気味 あたし
タブ Tab
男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺
イザーラ Izara
男の子 蜥蜴+鼠 僕
ルエイソレット Ruasoretp
男 翼竜 俺 筋肉質 → ???
「さてと、これで北部を制圧するのも楽勝だな。相変わらずタール、お前の技術には圧倒されるな」
ニプロッドに子供を預け、半田鏝などを駆使して機械を作るタールを感心そうにノガードが眺めた。
「ありがとうございます。元々この更生施設には複雑なシステムは少ないので、結構私としては簡単なんです」
そういってニプロッドは、半田鏝を水でぬらしたスポンジで先端に付いた半田を落とし、スタンドに戻すと、完成した器械をボスのノガードに手渡した。
「でも、これが出来るのも、ニプロッドのおかげなんです」
「そうだな。ニプロッドも、スパイには持って来いの人材だ——使い方は、前と同じでいいんだな?」
「はい」
ノガードは、彼女の肩を叩きながら礼を言うと、明日に向けて自室でぐっすりと眠ることにした。
翌の、朝がまだ全然あけない深夜。ノガードはひっそりと、北部のボスが住む家へとやって来ていた。今までのボスの家とは違い、ここのボスの家は、かなりみすぼらしかった。だがそういう、あえて寂れた場所を、北部のボスは好んでいたのだ。そしてその分、周りには充分な護衛と警備がおり、あのニプロッドでさえ、内部を隈なく調査できなかった。
「ボス、今回の作戦はどのように?」とフロウが言った。ここにいるのは彼とドレイジルとタブのみ。タールはいつものとおり、本拠地でイザーラの面倒を見て、ニプロッドは次に向け、既に南部のボスのことについて潜入調査をしていた。
「俺はいつもどおり裏に回る。お前らは——」とノガードは、部下達に今回の作戦を説明した。それが終わると、それぞれは定位置に付き、いつものように小型無線を介してやりとりしながら、北部制圧の作戦を密かに遂行した。
ノガードは、古びた北部ボスの家の裏側に回っていた。だがそこで彼は、なんだか妙な感覚を覚えた。前に、どこかで感じた「見えない存在」とも言うべきか。
「誰だ?」
静かに声を発したノガード。裏は相変わらず外灯が灯らず暗い。そんな中に、一人の怪しい気配が感じられた。
「ふぉっふぉっふぉ、またお主か」
「じ、爺さんか? あそこがあんたの店じゃなかったのか?」
そこにいたのは、前回東部ボスの邸宅に侵入する際に出会った、あの襤褸のフードをかぶった老鼠だった。
「儂の店は神出鬼没での。今回はここなんじゃ」
「『やっぱりまた来たか』なんか言うなよ。これは偶然なんだからな」
「分かっておる。それでじゃな、どうじゃ、前回の薬の効果は?」
「ああ、確りと身に沁みて感じた。どうやらあんたは、偽者じゃなさそうだ」
「勿論じゃとも。どれ、他の作品も試したくなったじゃろ?」
「でもよ、前の残りの2つだろ、そこにあるのは?」とノガードは、段ボール箱に並べられた二つの作品を見て言った。前回見たのと同じだったのだ。
「早々、こういう作品は頻繁に作れんのでな」
「なら今の俺には必要ないな。体がゴムになる薬や、何でも見通せる機械は、今のところ不要だからな」
「そうかの? じゃが、きっとすぐに必要になるじゃろ」
「……どういう意味だ?」
意味深な老鼠の言葉に、ノガードが聞き返した。
「深くは考えないほうが良いじゃろ。それとお主、今は取り込む中じゃったろ?」
とっさにノガードは、今やるべきことを思い出した。なぜか不思議だが、この老鼠といると、うっかり他のことを忘れてしまう。
「とりあえず、あばよ」とノガードは、そそくさと裏道を進んだ。そのあとを老鼠は、ゆっくりと目で追い終えると、再び闇に隠れるように、その姿を消した。