グレース・タウン Grace Town
ノガード Nogard
男 竜 筋肉質 俺
フロウ Flow
男 狼 痩せ→痩せ気味 俺
タール Tar
女 鼠 ふっくら 私
ドレイジル Drazil
男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分
ニプロッド Nihplod
女 海豚 痩せ→痩せ気味 あたし
タブ Tab
男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺
イザーラ Izara
男の子 蜥蜴+鼠 僕
ルエイソレット Ruasoretp
男 翼竜 俺 筋肉質 → ???
「——愚かだな、お前も。あそこまでセキュリティを厳重にしておきながら、自室には一切そういうものを置かないとはな」
「俺は監視されるのが嫌いなんだ。だが、そんな戯言をほざいていられるのも、今のうちだぞ」
すると東部ボスの蜥蜴は、すっと懐に手を潜り込ませた。しかし相手の竜、ノガードは、蜥蜴の机から微動だにしない。やがて彼は、相手に銃口を向け始めたが、それでも動じないので、さすがの彼も勘繰り始めた。
「……何を考えている?」
「さあな。んじゃ、あばよ」とノガードは突然、踵を返して、なんと後ろにあった窓に飛び込んだのだ。いくら一回とはいえ、この状況でその行動は相手も拍子抜けした。まさか、あんな図体をして逃げ切れると思っているのかと。
だが決してそれだけではないようだ。相手は窓を破り出ると同時に、何かを蜥蜴に投げてきたのだ。慌ててそれから距離を置いたが、それが落ちたところで決して、何も起こらなかった。ただ「ぷしゅ」と空気が抜ける音がして、彼は手榴弾が不発に終わったかと、慌てて窓辺によると、がっしりとでかいあの竜が、驚くほど先にいたので、再び驚かされながらも、拳銃で的を狙い打った。
「くそ!」と蜥蜴は、机に潜めていた遠距離用の銃を取り出した。そしてそれを、相手に狙いを定めて——
その直後、大きな銃撃音が、この庭園に鳴り響いた。だが狙っていたはずの竜は、未だ中庭を走っており、倒れなかった。
その代わり、蜥蜴のボスが、ぐらりと身を崩し、その場に仰向けで倒れた。顔が酷く損傷していた。
「——というわけだ」とノガードは、先日の出来事をフロウに教えた。
「なるほど……けれど、どうしてライフルが暴発したんです?」
「良くある方法さ。銃口に石や何かを詰めれば良いんだ」
「な、なるほど! でも、良く相手がそのライフルを使うって分かりましたね?」
「これもニプロッドたちのおかげだ。あの裏口で息絶えたやつもそうだが、あそこにはそれなりの奴隷がいたそうだ。だが東部の奴にとっては、うまいこと自由に動かない手下達に業を煮やし、機械に頼ることにして、同時に彼らを皆殺しにした——やがてやつには『東部の
鏖 』というあだ名がついた。その際、やつは動くのが面倒で、遠距離用の銃で殺したんだ」「面倒くさがりやだったんですね。良くそこまで考えましたね」
「それも情報のおかげだ。奴の元々はクラッカーだ。銃は趣味で使っていたようだが、家に籠るのが好きな性分だった。だから俺が窓から逃げた時も、銃で追えなくなった距離になったとたん、あとを追うより、自慢のライフルを用いたわけさ」
「でもボス。良く外まで逃げられましたね。結構あの庭は広かったですよ?」
「それは何か、俺はこの図体だから、足が遅いとでも言いたいのか?」
「い、いえ、決してそんなことは……」とフロウは、未だに慣れぬボスのしかめっ面に身の毛を弥立たせた。
「ふん、まっ、それは仕方がないことだな。とりあえず、昨日の話は以上だ。勉強になったか?」
「はい! これからも是非、作戦が成功した際には、色々と勉強させてください」
「ああ」
そしてフロウは、ボスに深々と頭を下げると、彼の部屋をあとにした。
部屋に一人となったノガードは、まだまだ心臓に毛が生えていないとはいえ、真剣に悪知恵を学ぶフロウを感心した。だがきっと、ちゃんとした人に育てられれば、彼も良心を持っていただろう、彼は周りの環境に染まり易いんだからなと思った。
それから次に、ノガードは、昨日の中庭を走ったことを思い出した。フロウにも言われたが、あの広さの中を猛ダッシュしても、まず相手の拳銃が届く範囲内で、少なからず何発かは普通の銃弾が放たれていたはずだ。だが聞こえた来たのは、たったの一発の銃声音だけで、それから相手は真っ先にライフルに手を付けた——つまりそれほど、あの短時間で相手との距離を稼いでいたわけだ。
ノガードは分かっていた。そんなこと、自分の体では無理だと。いくら太っていないとはいえ、筋肉で覆われた体は、脂肪よりも筋肉の方が重いこともあって、体はかなり重い。だがあの時は、かなり身軽に走れたのだ。今となってはなにもないが……
「……あの爺さん。本当に妙な薬を作ってやがるんだな」
その頃、とある部屋にて。
「おい、今度は東部のやつもやられたのか? どうなっているんだ?」
静かに憤りを露にしたボスに、連絡係の体は縮こまっていた。
「る、ルエイソレット様……そ、その……どうやら、新しい荒くれ者が現れたようで……」
「ほう、そいつに俺の最大の部下が二人も、連続にやられたってわけか?」
連絡係は、更に体を縮みこませた。するとルエイソレットという名前のボスは、更に言葉を続けた。
「まあここに住むやつらは、あまりまともなのはいないからな。能無しばかりだ。つまり相手は、相当頭の切れるやつなんだろう」
その言葉を同時に、連絡係が突如、その場に頽れた。静寂の上にルエイソレットの声しか乗っていない中、どうして連絡係が倒れたのか。それは静音式の銃を使ったからなのであろう、その遺体の胸には、先が注射のように尖った針のようなものが刺さっていた。
「おい、新しい連絡係を作れ」と、電話を片手にルエイソレットが言った。
『え? あ、あのボス、連絡係は既に——』
「今死んだ。俺はいらいらしてるんだ」
『はは、はい! 今すぐ、新しい連絡係を用意します!』
そして電話は、まるで火事場にいた避難者のように、大慌てで切られた。