グレース・タウン Grace Town
ノガード Nogard
男 竜 筋肉質 俺
フロウ Flow
男 狼 痩せ→痩せ気味 俺
タール Tar
女 鼠 ふっくら 私
ドレイジル Drazil
男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分
ニプロッド Nihplod
女 海豚 痩せ→痩せ気味 あたし
タブ Tab
男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺
イザーラ Izara
男の子 蜥蜴+鼠 僕
ルエイソレット Ruasoretp
男 翼竜 俺 筋肉質 → ???
「ボス、お疲れ様です」とフロウ。
「何言ってる、本番はこれからだ」
するとノガードは、彼とドレイジルに、外へ出るよう手で仕草をした。
「えっ……あの、それはどういう意味で?」
「ここからは俺一人で充分だ。東部のボスは一匹狼で、この館には誰もいない」
「……なるほど。だから門も自動で、監視カメラしかないんですね」
「そういうことだ。だからお前らはもう用済みだ、家に戻ってな」
だがドレイジルが、心配そうに言った。
「本当に大丈夫ですか、ボス? いくら相手が一人とは言っても、その分セキュリティーなどが厳重なはずなのでは?」
「ふん、俺を誰だと思ってる?」
そう言ってノガードは、ポケットから、基盤が剥き出しのカードサイズの器械を取り出した。
「初めはお前らが部下でどうなるかと思ったが、今となっちゃ全員良い部下だ。まさかタールが、これほどまでに技術に長けていたとはな」
「へへ、そういって貰えると、ありがたいです」とフロウ。
「分かったならさっさと行け」
ボスに言われ、二人は彼よりも楽にブロック壁の隙間を通り抜けた。するとノガードは、今度は内側からブロックを押した。その行動に部下達は一瞬狼狽えたが、二言は無用であった。
そして部下達は、東部ボスの豪邸の裏道を、「誰もいない」中静かに戻って行った。
ノガードは、まず勝手口に入った。とはいえ、その中は小さな倉庫。そこから豪邸内部に通じる道があるが、そこからはさすがに勝手に中へと入れるわけではない。きっちりとセンサーが働き、ノガードはその巨体に似合わず、忍び足で先を進んだ。
「これか……」と、ノガードは扉の横にあるカード挿入口に、タールに作って貰った特殊な器械を入れた。するとその器械には、素早く数字が回り、そして数秒後、ある数字を叩き出すと同時に、かちゃっと音が鳴った。ノガードはすぐに中に入り、広い沈黙の廊下を進み始めた。
部下達を褒め称えたノガード、その言葉は決して単なるうわべではなく、心底からのものであり、自身もそれを改めて悟った。
このようなセキュリティシステムには、外部からのハッキング防止のため、時間制限を設けるのが最近の主流である。特にこの豪邸は、空からの侵入を防ぐバリアがあるように、施設側が用意した正真正銘の本場のセキュリティシステムであり、それをこんな更生施設内にある道具で拵えたタールは、見事としか言いようがない。
彼女ならず、女性陣としてはニプロッドも、追跡やスパイ捜査に強く、今回の潜入において必須だったあらゆる情報の大概は、彼女からによるものだった。
男性陣も悪くない者達ばかりだ。子供のイザーラは別として、タブは蝙蝠という特質を活かし、素早く空を飛び、その体の特徴を活かして夜空を飛ぶのにも適している。そしてドレイジルは、蜥蜴のように壁を伝うような、まるで忍者のような機敏性が特徴的である。
最後の元ボスだったフロウだが、やはり元ボスだけあって、他の部下達からの信頼は非常に厚い。部下が少ないノガード団には、一人一人の協調性やチームワークがかなり必要になる。確かに現ボスのノガードは、東部ボスのように独自で行動してしまう淵はあるものの、彼の統率力や頭の回転力は本当に見た目と裏腹に素晴らしく、それに応える部下達が適切に動いてくれるだけで、彼らには充分なのだ。
「ここが奴の部屋か。俺のよりマシとは、良い度胸してるじゃねえか」とノガードは、先ほどと同じ要領で、扉の横に剥き出しのカードキーを挿し込むと、数秒してから鍵がはずれ、彼はその中に入った。
単にだだっ広い部屋。左右に、恐らく寝室とバスルームがあるだろうから、この部屋はいわば、社長室みたいなものなのだろう。中央の先には、夜空を映し出す大きな窓を背景に、それらしい檜の机とリクライニングチェアがあり、そして部屋の四隅には、剣先を地に立て、柄に手を置く勇ましい蜥蜴の銅像があった。
敵の陣地に進入し、一歩間違えれば命の危険もある状況なのに、ノガードはそんな部屋の中を楽しげに眺めた。やがて彼は、机の後ろに身を潜めた。
数時間後。外で車が入ってくる音が聞こえて来た。更に数分後、ノガードが潜む部屋の扉が、がちゃりと開けられた。