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あっぶねぇ……危うく一日一作が出来なくなるところだった——とりあえず時間がないので今回は簡潔に……

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 雄鯱のアクロが、雌蜥蜴カーシェと結婚したのは、もはや言うまでもありません。今回はその間に起こったもう一つの奇跡を、ここで簡潔に語りましょう。

 それは、アクロがカーシェとの婚約を決め、彼の家に住むことになったときのことです。

「よっし、これで二人が寝れる環境になったな」

 そう言って雄蜥蜴のブロームが、ベッドを運び終えて腰を上げ、額から出た汗をぬぐいました。ベッドが重かったのは勿論のこと、彼自身の体も以前より更に成長し、三三〇キロになっていたからです。

 一緒にベッド運びを手伝った雄鷹のフランジュが言いました。

「そろそろお前も、寝たきりになりそうだな」

「ははは、まだまださ。二人を見てみろよ」

 アクロが座る三台のベッドの片側に、横幅が二倍のアニーモ式ベッドが置かれ、既にそこにはカーシェがどっかりと自身の体を据えていました。

「確かに、そうだな」とフランジュも、笑いながら二人の新未来の夫婦を見つめます。

 そんな時、どたどたという駆け足とともに、アクロの父が部屋に入って来ました。

「あ、アクロ!」

「父さん、そんなに慌ててどうしたの?」

 アクロがピザを十箱食べ終え、間食の間食としてドーナッツを饕り始めました。そんな彼を見つめる父親の手には、一枚の封筒が掲げられています。

「お前の送った小説——小説が受賞したぞ!」

「ええ、それ本当!?」と、誰よりも先にカーシェが驚きました。アクロはぽかんと、口を開いたままです。

「で、どんな賞なんだ?」と、今度はカーシェの父が尋ねます。

「……最優秀賞」

 全員、沈黙してしまいました。

「あの、もう一度言っていただけますか?」と今度はカーシェの母親が、静かに聞き返します。

「最優秀賞——副賞として賞金、更に本の出版が約束されるそうだ」

 時が止まっていました。しかししばらくすると、そこからはワッと歓喜の声が上がり、思わずアクロも食事の手を休めてしまいました。

 それから、アクロはベッドで寝たきりで食事をしながら物語を書き、小説家として目覚しい進歩を遂げました。それはここアニモニア、いや、アニーモ随一の超肥満体として有名になったこともあり、すべてが鰻登りになったのです。

 勿論、カーシェもアクロの幸せと体に比例して、どんどんとぶくぶく太って行きました。まだ一応身動きは取れるので、のアクロが書いた小説を送ったりしていました。しかしそれは、アニーモの歴史を覆すような出来事の一つだったのです。

『雌は篭って身を肥やし、雄は働き身を肥やす』今こそこの伝承は変わりつつあります。しかし時代が流れれば物事も変わるもの。アクロが歴代のトップに大差を付けて最重量者に選ばれたりするのもそういうことであり、やがてそれが世間に広まり、少しずつ、考えが変わって来ました。

『一人は篭って身を肥やし、一人は働き身を肥やす』その時代がやがて、このアニーモにやってくるでしょう。例え周りが未だに肥満に関して愚弄しても、ここだけはそれを保ち続ける。唯一これだけは、変わらない——いや、変えてはいけない概念なのかも知れません。


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