先の展開がひらめいたので、５は飛ばします。それにまあ、ほかにも理由があったりもするんですが……
一応展開としては、もう読めているでしょうから、メモもそのまま書きます。
主人公　＿　僕
川獺　　雄　俺
鮫　　　雌　私
「ことん」
　ついに来た、次のゲーム。前回は長丁場の末、どうにか相手グループを降した。だが思っても見れば、たしかにあの猫は、一兆円を手にする者は二人を述べていた。すなわちグループが一つになっても、その中の三人から、二人を決定しなくてはならないのだ。
　僕は、裏切りという行為を犯さざるを得ないかも知れない状況、心が痛み始めた――いや、既に幾多の対戦相手を負かしたんだ。しかも彼らは今、どうなっているのかも分からない。そんな痛み、今更覚えたってしょうがない。
　そう思いながら僕は、投函口に入れられた紙を手に取った。
　　今度のゲームは、知力を問う宝探しです。食堂に集まる必要はありません、次に与えられたヒントを元に、一兆円に近づくための「鍵」を見つけてください。
　　ただし、その鍵があるのはたったの一つ。すでにグループという括りはなった現在、個人個人でこのゲームに挑まなくてはなりません。
　　注意）このゲームは知力を問うものです。決して、武力や権力を振り翳さないようにしてください。
　　　　ヒント：昨日の○は今日の友
「知力か……僕に有利かも知れない」
　僕はそう思いながら、玄関の扉を早速あけた。友達の雄川獺や雌鮫、悪いが二人は、それほどおつむがいいとは思えない。逆に僕自身は、体より頭で生きてきた分、このゲームには勝つ自身があった。
「よう」
　丁度横から扉が開き、ぶっくらと肥えた川獺が挨拶をして来た。昨日の勝利で肩を組みあった者同士とは思えないような、微妙な距離感があった。
　おそらく、戦友だった中の一人が消えるということに躊躇いを覚えているのか、その逆に歯をむき出しているのかも知れない。
　その証拠に、反対側から出て来た、これまた大きな風船腹を持った鮫は、軽く目配りをして、少し様子を見てから挨拶を交わすという、依然とは打って変わった対応をしていたのだ。
「……まあ、とにかく、頑張ろうな」そう川獺は、さぐりさぐり言った。
　それから、とりあえず玄関ホールまでの廊下は、三人で一緒に歩いた。
　だが、いつもより、それはゆっくりだった。決して悩んでいるわけではない――やはり、長い戦いの果てに身につけてしまった、多量の脂肪が影響していたのだ。
「ふぅ……畜生、体が重くてたまらねえ」と川獺。
「本当、ね。それになんだか、お腹が空いてたまらないわ」鮫がそういって、満月なお腹をさすった。
「こりゃあ、まず朝飯を食わないとどうにもならないな」
「そうね……あなたはどうなの？」と鮫が、僕の方を振り向いた。
　実際僕も、疲労や空腹も以前よりも格段に感じていた。だが、大食いバトルで、彼らの半分ほどしか食べなかった僕は、まだ動きにも余裕があって、空腹も我慢できた。
「僕は、一応大丈夫。とりあえずこのまま鍵を探すことにするよ」
「まあ、もう個人戦になったからね。結局はバラバラになるものよね」
「べ、別にそういうわけじゃあ――」
　ここで、川獺が割り込んだ。
「気にするな。俺たちはライバルになったとはいえ、今回のゲームからもうグループじゃないとはいえ、それでも元は面識のある同士なんだ。だからそれぞれ、真剣に挑もうじゃないか」
「う、うん」
　そこで、三人は玄関ホールに着いた。
「とにかく、俺と鮫は、まず飯を食ってくる。この体じゃあ、動くのにもエネルギーが必要だしな」
「まさに『腹が減っては戦は出来ぬ』ってやつよね。はあ、お金が手に入っても、この体じゃあ視線が気になってしょうがなくなりそうね」
「その時はその時で考えようじゃないか。一兆円もあれば、なんだってできるだろうしな」
「そうね」
「うっし、それじゃあここからは、それぞれの行動に移ろうか」
　鮫と僕はうなずいた。そして僕は、彼と彼女を十字路の方まで、のっしのっしと歩くさまを見守りながら、これからどうするかを考えるため、今一度ヒントを思い出し、そして熟考した。