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いやあ、もうエンディングまでアビスオブヘヴンかけてるんですが、見直し出来てなく、全然更新してなくて申し訳ないです orz

ふと某所の小説を見て、そういえば昔メモリーリークで太るゲームを作ろうと言っていたことを思い出しました。まあ挫折したわけですが、そういうことって自分多いような……

あっ、でも決してプログラミングをしていないわけではないです。ちびちびといじって、半年ほどかけまして、どうにか EasyDX ていうプラグインのグラフィック部以外を完成(EasyMDX から移行)させました。あとはそのグラフィック部を完成させれば、とりあえずゲームを作ろうと思えば作れる環境になります。

けどやっぱり更新していないとあれなので、どうにか絞り出して、超短編SSを、なんとなく書いてみた。


 

「う、うわぁぁあ!」

 ドボン! 豪快に海に落ちた一人のドラゴン。それ目がけ、海から背びれ出して近付く者がいた。

「たく、途中で落ちるってどういうことなんだよ」

 その者はそう言って、海に落ちたドラゴンを背中に乗せた。そして二人は、砂浜へと上がった。どうやらもう一人は鮫のようだ。

「ありがとう。また落ちちゃったね」

「『落ちちゃったね』じゃあねえって。だからよ、少しは運動しろって言ってるんだ」

 見ればそのドラゴンは、ぷっくりと太っていた。反対に鮫の方は、結構スリム。だがスマートさで言えばドラゴンの方が上手(=うわて)だ。

「けどさあ、そういうの僕、あんまり得意じゃないし」

「そりゃお前が料理好きで頭の回るやつだってことは分かる。けどよ、ドラゴンとしての誇りはないのかよ?」

「うーん、あんまり気にしないなあ。バスだってあるし、今じゃ飛行機だって飛んでるじゃん」

「時代の流れだな」

 鮫はそう言うと、何故か身動ぎをした。何かをためらっているのだろうか。

「それでさ、お前には言ってなかったことがあるんだが」

「何、ルアム?」

 ルアムという鮫は、再び身動ぎをし、大きく深呼吸をして言った。

「俺さ、アサイリーマへ渡航しようと思ってるんだ」

「え、えぇ!? なんでいきなり?」

「夏休みに入ってさ、これが終わったらもう受験だろ? 俺はお前みたいに頭は良くないし、将来の夢って、考えたらなかったんだ。だからさ、何か見つけようと思った時、世界の中心アサイリーマっていうところに行けばそれがあるかもと思ったんだ」

「そう、なんだ……」

「悪いな。だからこのトレーニングも、しばらくは無しだ」

「それは楽でいいね」

「おいおい、自主トレぐらいはしてくれよ。これ以上太ったらお前、本当に飛べなくなるぞ」

「別に大丈夫だって。近代化の波には乗らないと」

「説得力あるんだかないんだか……まっ、そういうわけで、俺は明日旅立つから」

「分かった。じゃあせめて僕、見送るよ」

「ありがとな。やはり持つべき者は友だな、グラップ。んじゃ、場所はこの海からだ。明日の朝7時。帰る時は電話するよ」

「分かった」

 そして翌日。ドラゴンのグラップは、この海岸へと赴き、鮫の友人ルアムを見送った。

「……どうしよう。やっぱりルアムに、怒られちゃうかな」

 そんなことをいいながら、朝食の準備をするグラップ。料理は大好きでいつもするのだが、ここのところ自分のお腹が、その作業を邪魔する。

 二ヶ月前着ていたエプロンが、単なる前掛けに見えてしまうほどでっぷりとしたお腹。トレーニングを怠るどころか一切しなかったグラップは、その食欲からどんどんと太ってしまい、遂にはルアムの助言通り、空を飛べなくなってしまったのだ。

 更に、今日はルアムが帰って来る日。場所はあの海岸だ。しかしながらこんな姿では、さすがに彼も「自主トレしろよ」どころじゃ済まないかも知れない。

 けどそうは言ったって、太ってしまったものはどうしようもない。それにこれもまた自分の言葉通りなのだが、生活には大きく不便はしていないのだ。先ほど言った通りやや体が突っかかったりはするのだが、バスはあるし、なんなら飛行機だってある。元々空を飛べない人もいるわけで、その一員だと思えばまあ大丈夫、グラップはそう考えていた。

「良し、朝食の完成! うーん、今日も実に美味しそうだ」

 目玉焼きが3つ。それを6枚切りのパン2枚で挟み、更にその間にはベーコンやらレタスやらウィンナーやら、加えてケチャップやらマスタードやら照り焼きソースやら、とにかくなんやかんや好みの物を間に突っ込む。そんなサンドイッチを胃へと流す牛乳は、1リットルもある。

 グラップは今日も、そんな大量の朝食を終え、豪快なゲップを漏らした。そして膨れたお腹をぽんぽんと叩いて、満悦感に浸った。

 いつもはそれでおしまい、なのだが、今日はそうもいかなかった。

(ああ、これでまた太っちゃうなぁ)

 溜め息まじりの吐息をもらしたグラップ。時計を見やると、時刻は朝の7時。ルアムは7時半ごろに到着すると言っていたから、そろそろ出た方がいいかなと、グラップは二ヶ月前より重くなった体を、椅子を軋ませながら持ち上げると、のっそのっそと家を出た。

 海岸へは徒歩で十分。そこに着けば、あとは待つだけだ。

 五分、十分、二十分……だが約束の時間7時30分になっても、ルアムが帰って来る気配はない。

「まっ、そういうこともあるよね」とグラップは、更に海岸で待った。

 十分、二十分、三十分。そういえば、ルアムが帰って来るのもそうだけど、来週から学校が始まるんだよなぁ……

 四十分、五十分、六十分——グラップは、浜辺に建てられた時計を見上げた。

「8時半。どうしたんだろう、何かあったのかな……」

 不安になり始めたグラップ。すると、ドラゴンの視力高い目に、海に何かが映った。

「あれは……背鰭だ! てことはルアムだね!」

 ようやく戻って来たと、二ヶ月ぶりの再会を早々と感じながら、グラップはその背鰭が近付くのを、待ち遠しく待った。

 やがて、立てるほどの浅瀬までその背鰭が来た時、グラップは待ちきれずに、海の中に足を踏み入れた。

 ——ざっぱぁーん! と、背鰭が出てる場所から何かが現れた。

「グラップ! いやぁ、久しぶりだな!」

「ルアム、お帰り! 1時間も待ったんだよ、一体どうしたって……」

 喜びの表情を浮かべたグラップだったが、一瞬にしてそれが転と変わった。

「んん、グラップ、どうしたんだ?」

「……あれ。ルアムって、そんな感じだったっけ?」

 目の前には、まるで鯨のように堂々とした胴体を持つ、かーなり太った鮫がいた。どうやらこの鮫が、二ヶ月前のルアムらしい。以前の細く軽そうな体が、今では重々しく、グラップでさえそう思えてしまうほどだ。何せお腹がでか過ぎ、更に太もももぱつんぱつんに膨らんでいるせいで、脚を綺麗に並べられず、少し開き気味になって立っているほどなのだから。

 混乱気味のグラップは、首を傾げ、目を瞬きし、相手の鮫を凝視した。

「な、なんだよ……」とルアム。その顔は、既に承知しているのか、恥ずかしがるように赤らんでいた。

「僕の目、おかしくなってないよね?」

「率直に言えよ、太ったって」

「あ、じゃあやっぱりそうなんだ。二ヶ月前は僕に、運動しろとか言ってたくせに」

「けどお前はドラゴンで俺は鮫だから、話が変わってくるだろ」

「けどさー、今のルアムに運動しろって言われると、なんだか納得できなーい」

「うう、悪かったな! まああっちで、色々とあったんだよ」

「色々って?」

「うーん……まあ、そうだな、簡潔に言うと『アサイリーマはでかい!』ってことかな」

「な、なんだよそれぇ。でもそれより、肝心の探してた夢は見つかったの?」

「いや、特に何も。けどまたいつか、アサイリーマに行こうと思う」

「それじゃなんか、めぼしいものとかはあったんだ」

「ま、まぁな」

 茶を濁すような仕草と発言。しかしグラップはそれほど気にせず、こう言った。

「とりあえず、お帰りだよルアム。それで、これからどうする? まさか早速運動とかは言わないよね、僕はもう空飛べないんだし」

「大丈夫、見れば分かる。それに俺はもう、お前に関しては何も言わないさ」

「ほんと?」

「ああ。好きなことには集中すればいいってことが、とりあえず向こうの方で分かったからな。とにかく今は、家に帰りたいね。んでもって腹一杯飯が食いたい、俺もうクタクタだし」

「じゃあさ、ルアムの家までのあいだに、アサイリーマでのことを話してよ。そんで家に着いたら、お祝いに料理作ってあげるから」

「本当か!? いやあありがたい、それじゃあ頼むよ」

 それからルアムの家まで、グラップは彼の旅の話を聞いた。だが所々で、何かが抜けていたり、まるで何かを隠そうとしているかに思える発言があった。けどグラップにしてみれば、運動しろとか言われないで済むようになっただけで充分。これからはまた一友達として、楽しく接することが出来るはずだ。何せ体型がお互い、同じように太ってしまったからだ。

 ルアムの家に着き、グラップが料理を作ると、テーブルには豪勢な料理が並んだ。とても二人分とは思えない量。だが両者の成長した胃袋には余裕綽々であり、途中で出前を追加で頼んでいた。

 そして、冬休みが始まった。進学する者は受験勉強に勤しみ、就職する者はそれに向けて面接などを受けるためにあらゆる会社を回る。そんな中でグラップは、相変わらず大好きな料理で自分の腹を満たしつつ、目標を料理家と定めていた。

 一方ルアムはと言うと、夏休みより格段に短い冬休みを満喫するため、すぐさまアサイリーマへと旅立ってしまった。

 やがて、数週間という冬休みが終わり再び学校が始まると、そこにはグラップより目立って太ったルアムがいた。学校中でも噂になったが、本人はそれほど気にすることもなく卒業を迎えた。

「俺、アサイリーマに定住することにした」

「僕は料理家目指して頑張るよ」

「だがそれ以上太り過ぎるなよ。その内料理が出来なくなるぞ」

「そういうルアムだって、すっかり夏休み前と変わってるじゃん」

「大丈夫、俺の場合は問題ないからな。それじゃ、またいつかな」

 この言葉を最後に、グラップは長らくルアムと会うことはなかった。

    完?


 ノリで書いたら、やっぱりなんか薄っぺらい話になっちゃいましたね。まあその場凌ぎってことでお許しを……


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