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ずっと放置していましたね、この話。調べたところ未だ未完結の話は、現在進行中のムープを含めるとナアム、イカッネク、マザー・クライシス、Gameと5つもあった。こ、こんなにもあったのか……ということで、少しずつこれらを完結に(半ば強引に)持っていこうかと思います。

それと体調なんですが、嬉しいことに通院先を変えたら先生がむっちゃ良い先生で、しかも処方された薬が今までで一番効いてる! 数ヶ月ぶりのハンバーガー、メガテリヤキのセットを食って感動も出来ました。ただその後勢いでパンとか色々食い過ぎて気持ち悪くなったのは秘密。


 

イカッネク 6

 


町 イカッネク Ykcutnek

M 僕   ナーガ     ギラン   Guillan 

M 私   ホエリアン   ディーブス Deebs

M 俺   オルカン    ローバル  Lobal

F 私   ホエリアン   テフス   Tefth

M おいら 川獺      パジィ   Pudgy

 

 


 島長のローバルは、パジィを別個の家に軟禁することにした。監禁でないのは、パジィの行動レベルを判断してのこと。そして今回の毒ガス問題はすぐさま号外として町中に伝わり、みんな日持ちする食糧を備蓄し始めた。

 施設から帰還した翌日。街はひっそりと静まり返り、賑やかだった露店も軒並み店を畳んでいた。この状況をどう打開するか、パジィの居る家でギランとローバル達が作戦を練ったが、毒ガスという見えない且つ得体の知れない相手が相手なだけに、会議は一向に進展せず、もどかしくも結論に至ることは無かった。

 パジィを家に残し、皆は解散した。ギランは黄昏のもと、静寂な主要街路を通った。

「やあギラン」

「あ、おじさん。まだ出店やってるんですね」

 そこは、ここで初めて(この時代で)食事をした焼きそばの屋台であった。香具師(=やし)のシャーカンは、口をへの字にして答えた。

「日持ちしない食材を捨てるのもったいねえし、だが全く売れないもので、殆どは俺が食ってるがな。にしてもギラン、こんな所に打ち上げられた挙句、こんな騒動に巻き込まれるなんて不憫だな」

「うーん……どうにか出来たら良いんですが」

「大体よ、空気のようなガス相手に太刀打ちなんて出来るわけがないんだ。ここは諦めて、夕飯に焼きそばでも食うか?」

「いいんですか?」

「俺は朝から食い続けて腹がパンパンなんだ。正直少し食休みがしたくてな」と、彼は真ん丸な満月腹を二度叩いた。

「な、なるほど。ではありがたく頂きます」

 てんこ盛りの焼きそばを受け取ったギランは、それを手に自宅へと戻った。ちまちまと麺を啜りながら、ぼうっと吹き抜けの窓越しに町の風景を眺めた。

「このままじゃこの平穏な島が、僕のいた未来のように廃れてしまう。それを防ぐためにこの過去に呼ばれたのに、僕は一体何をすれば……僕は単なる民俗学者だ、毒ガスに関する知識なんて全く無いのに」そうギランは、顔を俯かせた。

(……待てよ、そういえばこの時代に来る前、セルバは僕と同じ種族であることを告げていたっけ。だったら僕でなくても、ナーガなら誰でも良かったってことなのかな。となると、彼には既に何かしらの対策があったのかも知れない!)

 ギランは食事の手を放し、セルバのメモ帳を見始めた。前回はパラパラと最後の箇所だけを読んだに過ぎなかったが、今回は始めから確りと熟読した。するとそこにはローバルが以前語っていた、過去に作物が育たなくなった事件に絡んでいそうな、第一回目の毒ガス漏れ事件の内容が触れられていた。この時大陸側の政府が、臨時でこの島に研究員達を派遣したらしい。但し島民達には事故の件を内密にしていたという。

 更に日記を読み進めて行くと、また新たな事実をギランは知ることになった。なんと毒ガス漏れの事故は、その後再度発生していたのだ。しかも今回のより前の別物である。当時の施設の職員達は、今回のように大陸へと退避したという。だが島民達はおろか土壌や海洋にも一切の変化が無かったため、二ヶ月後、密かに島の施設に戻ったという。

 何故この時だけは島に毒ガスの影響が無かったのか。次のページに、その推測がしたためられていた。

 

 

——二回目の毒ガス漏れ事故の翌月、島周辺には、過去に類を見ないほどの大量の渦潮が発生していたらしい。あの島の渦潮の発生原因は特定されていないが、海流の変化と共に周囲の風向きを一時的に変え、毒ガスの軌道を偏西風から逸らしたのではないか。これはあくまでも俺の推理だが、あの化学薬品工場は信用ならない。二度あることは三度ある、今後もまた同じような事故を招くに違いない。その為に俺は、解決策に繋がるかも知れないこの一案を書き記した。——

 

 

 次から次へと紙を(=めく)るギラン。すると今度は、この島に関連した新聞の切り抜きが貼られていた。

 

 

——例の島の渦潮、遂に原因解明なるか。ある地質学者の説によると、あの島周辺には元々火山が多数存在していた。それらは今、全てが海底に埋没しているものの、潮流が時折堆積した土砂や岩などを動かし、不定期に噴火口が開いてしまうとのこと。すると火山内にある空洞へ海水が流れ込み、それがあの渦潮を生み出すとのこと。しかしこれには充分な解析がなされていないため、これから海洋学者などが研究を……——

 

 

 文字はここで途切れていたが、セルバの意図に気付いた瞬間、ギランは家を飛び出しローバルにそのことを伝えた。最初は島長も信じがたい面持ちだったが、何もしないよりかは何か行動をした方が良いと決断と下した。

 

 

 

 

 翌朝、島長のローバルは町民らを集め海へと潜った。誰もが半信半疑だったギランの作戦。しかしある班が巨大な岩をどけた所、突如現れた穴に海水が流れ始め、真上の海面に向かい細い筋が発生し、やがてそれは大きな渦潮へと進化したのだ。これを気に他の町民達も、ローバルを筆頭に過去の渦潮発生現場を思い起こしながら、噴火口と思しき場所の堆積物を士気高々に除去していった。

 やがて日の暮れ泥み時、島周辺には未曾有の数の渦潮が発生した。もはや誰も海での行き来が不可能なほどの大多数さで島を取り囲み、あとは最終的にこれらが偏西風に反して風向きを変え、大陸から飛来してくる毒ガスを退けてくれることを祈るだけとなった。

「うう、駄目だよ。もう駄目だ、今月中には毒ガスがやって来るよぉ」

 パジィが地べたに座り、涙ながらに漏らした。

「大丈夫だ。やるべきことはやった。あとは待つのみだ」腕を組んで立つローバル。

「ごめんよぉ、おいら達のせいで……」

「確かにお前らのことは憎い。だがお前は、俺達を手助けしてくれただろ」

「けれどおいら、こうやって地べたに座ると自力で立てない体だし、迷惑かけてばかりだよぉ」

「誰も一人じゃ生きられないさ。常に誰かに支えられている。お前のことは俺が支えてやった。俺だって、ギランが知恵を搾って出した最善策に、今正に支えられてるじゃないか」

「でもそれで、完全に解決出来るかは分からないんでしょ?」

「だがやるべきことはやった。これで駄目だとしても、それは運命として受け止めるしかないさ」

 そしてローバルは、妻のテフスが待つ自宅ではなく、パジィの居るこの家で共に眠りに就いた。

 今日は、イカッネクの人達が一丸となって必死に作業をした。みんな疲弊し切っていた。だから全員、普段よりも早く就寝していた。海に潜れないギランも、潜水する海洋族達のために料理など、補佐出来る範囲であれこれと手伝いをしたため、すっかり疲労困憊していた。寝室に入るなり、彼は寝床ですぐに目を瞑った。

 少しして、ギランは一時の夢を見た。聞き覚えのある声が呼ぶ夢だったが、それは余りにも短く断片的過ぎて、彼の記憶には残らなかった。

 

 

    続


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