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最近更新日が大体決まってきました。休み明けの前日。普段なら日曜日ですが、今回は三連休ですので本日月曜日になりました。

けれどそういうのに固執せず、いつでも更新出来るようにしたいところ。平日は正直まったりして寝たいんですが、でも頑張ってる人もいるわけで、そういう時こそ何かした方がいいですしね。時間は戻らないわけで、少しでも多く経験した方が特ですもの。まあ無理して体壊したら元も子もありませんが……

というわけで、ようやく更新しました出来。上のようなことを言っていないがら、今日は寛ぎ過ぎて時間がなくなりそうなので、校正が疎かになってるっぽいです。


 黒地(クロジ)

 犬 男 巡査    風流(フェンリュ)

 狐 男 巡査部長  丞(ジョウ)

 鰐 男 警部    団包(ダンポウ)

 猫 男 爆破犯人  炸彈人(さくだんじん)

 鯨 女 隣州の警官 凛(リン)


 屋上に着くと、犬のフェンリュの姿はない。彼を結んでいた縄の行く先は、外にあった。

「フェンリュ!」

「来るな!」

 炸彈人の言葉。その猫目には、何故だか涙を湛えていた。

「……どうして、泣いているの?」

「もう、いいんだ。これで、自分の役目は果たした」

 どういうことなのだろうか。だが鯨のリンはそれを考える前に、縄が結ばれた鉄柵を視線を移した。そこは少し錆びており、そして曲がっている——フェンリュの重さに耐え切れていないようだ。

「炸彈人、お願い、フェンリュを助けて! いい、あなたは今隣のビルからスナイパーに狙われているわ。これ以上変なことをしたら、殺されること必至よ」

「構わない。覚悟の上だ」

 そして彼は、なんと後ろポケットから拳銃を取り出し、銃口を彼女に銃を向けた。そして躊躇(=ためら)うことなく、引き金を引いた。

 ——ズキュン、と甲高い音が鳴り響いた。リンは死を直感し、目を瞑った。だが胸の鼓動は、止まるどころか早くなっていた。

 何故かしらと、リンはゆっくりと目をあけた。すると目の前には、倒れた炸彈人の姿があった。助かった、スナイパーが撃ってくれたのね。でもおかしいわ、それだけなら銃撃音は聞こえないはず……炸彈人も弾は放ったはずだけど、外したのかしら。

 彼女は、既に息絶えた炸彈人に駆け寄り、その銃を手にした。そして弾倉の中身を見ると、そこは空っぽ。なら空の薬莢(=やっきょう)はと辺りを探したが、何も見当たらない。

「空発! でもどうして……スナイパーに狙われていたのは分かっていたはずなのに——」

 ここでふと、彼女は鉄柵を見た。それはもはやかなりの曲がり方を見せ、折れるのは時間の問題である。彼女は急いでそこに結わえられた縄を手にすると、先の方を見た。やはりフェンリュが、縄の先に繋がってぶらさがっている。落ちたら命はないだろう。

「フェンリュさん!」

「リン……ここ、はいいから、早く逃げて」

 しかし彼女は、縄を手にした。そこに、鰐のダンポウと狐のジョウがやって来た。

『り、リン!?』

 あの重量級の犬を、たった一人の女性が屈することなく支えようと奮起している。ダンポウは、ジョウに指示した。

「下に救助マットを用意しろ!」

「はい!」

 ジョウがエレベータで降りるのを背に、ダンポウも縄を掴んだ。

「ダンポウ警部……」

「リン、準備が出来るまで耐え抜くんだ!」

 スラックスに入れていたシャツが出て、特徴的な太鼓腹が見え隠れするダンポウ。以前のそれは単なる贅肉の詰まったものだが、今この場では、フェンリュと張り合うための立派な力の源である。

 

 

「まだ準備が出来てないのか、早くしろ!」ダンポウがヘッドマイク越しに叫ぶ。汗は噴き出るだけ噴き出て、握力はもうなくなりかけている。そしてそれはリンも同じである。200kgもある犬をここまで持久出来たのは、太ったダンポウに加え、体付きの大きな鯨のリンの総体重のおかげでもあるが、それも握る力さえなければ、全くの無力。ずるずると、摩擦に負けて二人は、外の方へと引っ張られていた。

「リン、ダンポウ警部……お願いです、離して下さい」

「だめよ、フェンリュさん!」と、縄を一生懸命引っ張るリン。「諦めるな!」そうダンポウも叫んだ。

「こうなったのは、全ての僕のせいなんです。全ては五年前、あの時から——」

「いい加減にして下さい! 炸彈人の言うことなんか……確かに、彼は可哀想だったのかも知れません。けれどあなたは、あなたは悪くない! 過去にも良いことを沢山してきたじゃないですか!」

「ハ、ハハ……どうしてそれが、君に分かるんだい?」

「分かります!」

 その時、とうとう鉄柵が根本から折れた。支えを一つ失ったことで、一瞬リンとダンポウは外に投げ出されそうになったが、必死に堪えて、どうにか踏みとどまった。だが、もう紙一重の所まで来ている。フェンリュの視線からも、リンの姿が窺えるほどだ。

 するとリンは、自分の体に縄を巻き付け始めた。

「り、リン! 何をしてるんだ!」

「落ちる時は、私も、一緒です……!」

 その時、ダンポウのヘッドセットに無線が入った。

『準備が出来ました!』

 しかしホッとしたのも束の間、力尽きたリンが、とうとうフェンリュの重さに負けて宙に放り出された。そして急激に重さを増した縄は、ダンポウの両手をするっと抜けてしまった。

 間があった。無音とも言えるべき、まるで映画のクライマックスの様。ダンポウは血相を変え、匍匐前進して屋上から下を見下ろした。

 フェンリュとリンは、どんどん地面が近付くのを感じていた。もう終わった、と二人は十秒ほどそのことを考え続けた。

「ボフっ!」

 そんなクッション音が、まず聞こえた。そして彼は、誰かに体を引っ張られるのを感じ、今の状況を瞬時に察知すると、もがもがと慌てて体をずらした。すると刹那、彼とすれすれのところに、リンがボスンと落ちた。

 

 

 

 

    続


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