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携帯から投稿出来ないというケースが報告されてましたので改善してみました。

携帯の時だけ認証を外したのですが、試行錯誤しても解決策がなく苦肉の策で、けれど意外と簡単に出来てしまい今までの苦労がなんだったのか(汗

 

 

そんなこんなで、今回は珍しくまた版権物で行きます――がキャラクターを完全にぶち壊しているので予め注意しておきます。

先月、聖剣伝説2やパンツァードラグーンツヴァイを購入してプレイしたり懐ゲーに勤しんでおり、今回はその流れです。

因みに今、急激に欲しくなってるのはサンドラの大冒険だったり。

 

 


 

 

Vigger the Flammie

 

 

 

 ドスン、ドスン。酒場の中が一瞬ざわめいた。地響きに怯えているわけではないが、中年の犬店主は気を引き締め、客達は椅子を整えて静かに着席した。

 やがて、両開きの入り口が豪快に開け放たれた。

「いらっしゃい」

「ジイさん、いつもの」

 そういって入って来たのは、超巨漢の獣竜だ。クリームを基調に、背には四つの翼、腹部はオレンジ色の蛇腹、首回りにはふさふさな毛皮カラーがあり、横長でふっくらした顔はふてくされ気味だが……しかし彼は、正しくフラミーの血筋を引いていた。体型を除いては。

 そんな彼が、お決まりのテーブルにズシンと着席すると、まずは店主が一杯のビールをピッチャーで持って来た。

「ヴィガーさん、調子はどうです」

「相変わらずさ」と、豪快にピッチャーを呷り始めた。

 それからヴィガーという竜のテーブルには、矢継ぎ早に料理が運ばれてきた。まずは極太のソーセージが何十本とやって来て、それを一口で口に運びながらビールで流す。それが終わればメインの生肉がテーブル一杯の大きさでやって来て、獣の如くそれを食らった。この食事風景に、最後に出されたこじゃれた締めの特大コンポートも、単なる餌にしか見えない。

「あー、食った食った」とコンポートの容器を荒く置いたヴィガーは、真ん丸なお腹を摩りながらはしたない噯を漏らした。

 その時、再び酒場の入り口が開けられた。今度はゆっくりと――だがしかし、そこには来客の姿が見えない。

「……あら、可愛い子じゃない」

 一人の女性客が下に目線を移した。そこには、まだ幼い子鮫が立っていた。

「どうしたの、ここは君みたいな子が来る所じゃないのよ?」

 けれども子鮫は、てくてくと店内に入ってはキョロキョロと辺りを見回した。するとある一人の客に視線を寄せた。

「あ、フラミーだ!」

 嬉しそうに子鮫がヴィガーの元に駆け寄る。だがそんなの露知らず、ヴィガーは締めに最後のビールを、定番のピッチャーで名残惜しむようにちまちまと飲んでいた。

「あれ……こんなに大きかったけ? それになんだか臭いよ」

「なんだガキ、文句でもあんのか?」そうヴィガーは、ギロリと鋭い見下し目線を子鮫にくれた。子鮫はそれに思わずたじろいだ。

 暫く子鮫はその場に立っていた。やがてヴィガーが立ち上がると、道を譲って彼を通した。

「ねえねえフラミーさん、お話があるんですけど」

 しかしヴィガーは、ただ大きな背中を見せるだけだった。

「ねーねー、フラミーさん」

「じゃかましいわ! とっとと失せろ!」

 ヴィガーの怒号。この一喝が、子鮫の心を打ち砕いた。

「……う、うっ……えぐ……うわあああーーん!」

「ちょ、ちょっとヴィガーさん! 幾らなんでも相手は子供――」

「なんだと?」

 ヴィガーの鋭い眼光に、女性はこれ以上何も言えなかった。彼は、子鮫を背に平然とその場を立ち去ろうとした。

 刹那、向かいの出口からまたまた誰かが乱入して来た。それは三人のドラゴンであった。その内の中心にいるリーダーらしき人物は、ヴィガーの後ろで泣き(=じゃく)る子鮫を見つけると、指を差した言った。

「おい見つけたぞ! おいデカブツ、そこをどけ」

「んだよ、今日は昼間っから騒がしいな」とヴィガーは毅然な姿勢を取る。それにリーダーは苛つきながら再度発した。

「さっさとどきやがれ!」

「あー?」

「なんだその態度は? 俺達愚右組(=ぐゆうぐみ)にいちゃもんを付ける気か?」

 その名前を聞いた瞬間、酒場にいた一同ハッと息を呑んだ――ヴィガーを除いて。

「てめえらが邪魔なんだよ」そうヴィガーは悠々と、三人の後ろにある出口に向かって歩き始めた。その行為にカチンと来た三人組は、悍ましい鉤爪と牙を剥いてヴィガーに飛びかかった。

 寸時、ヴィガーの目が戦闘モードに変わった。まずは一人目を、その鋭い右手の爪で弾き返してカウンター奥にすっ飛ばした。その反動で棚からは多くの酒瓶が床に落ちて砕けた。二人目は反対の手で下からアッパーをぶちこみ、天井にめり込ませた。最後に、その振り上げた腕を流れるように動かして三人目の横顔に裏拳をかまし、入り口左側の壁を突き抜ける吹っ飛ばしをお見舞いしてやった。

 決着はあっという間だった。この強さが、ヴィガーの登場を知らせる足音と共に店内を緊張感で埋め尽くす要因なのである。そして彼は、何事もなかったかのようにその場を去ろうとしていた。

「……あ……あ、あの!」

 後ろから小鮫が近付いて来た。ヴィガーはそのままの向きで答えた。

「なんだ?」

「あの、その、ありがとうございます!」

「フンッ」

 ヴィガーは鼻で軽くあしらった。そして店を出て行った。しかしそれからもあの子鮫があとを付けており、とうとう自宅付近まで来た所で、ヴィガーが重い踵を返した。

「なんの用だ、ガキ?」

「あ、あの――」

「早くしろ」

「――その、あの、じ、実は僕、住む家がなくて……」

「どうせ、あいつらの所に住んでてヘマでもしたんだろ?」

「は、はい……実はその、ドリューさんの大事な骨董品を壊してしまって」

「で、俺にどうしろと?」

「あの、一緒に住まわせて下さい!」

「何故だ?」

「そ、それは……その、フラミーさんがとても強かったので……」

「守ってくれそうだってか?」

 子鮫は、(=おもむろ)にこくりと頷いた。

「フンッ、勝手にしろ。だが俺の所に住むからにはちゃんと働けよ。それと俺の名前はヴィガーだ」

「あ――は、はい! あ、あと僕の名前はループって言います。宜しくお願いします!」

 ヴィガーは返事をせずに身を翻したが、ここからはすんなりと私有地に子鮫のループを招き入れた。

 

 

 リビングに向かう途中、大きな背中を見上げるループは、早速こんなことを申し出た。

「ヴィガーさん、体を洗いましょうか?」

「なんでだ?」

「その、背中が汚れているので」

「手が届かねーんだよ」

 その言葉通り、よく見れば背中だけでなく、そこより下の体位は全体的に手入れがされておらず、黒ずんでいた。そしてそこから、ループが初体面の時に感じたあの臭気もしていた。正に獣臭といっても過言ではない。

「なら僕が代わりに洗います」

「それ以外にすることは無いのか?」

「えっ……あ、あのその、ヴィガーさんが申してくれれば何でもやります!」

「まぁいい。とりあえず俺はこれから昼寝だ。洗うならそん時にでもやれ」

「はい! それでタオルは何処にあるんですか?」

 ヴィガーは獣毛ある図太い腕を使いタオルの場所を示し、そしてリビングにある特大リクライニングチェア兼寝床に背を(=もた)れさせた。その間ループは指示されたタオルを手に取り、早速洗面所でタオルを洗った。そしてリビングに戻ってくると、ヴィガーは既に仰向けで大の字に寝そべっていた。するとここでも、下腹部から足にかけて汚れているのが確認出来た。どうやら本当に手の届かない部位は一切洗ったりしないようで、完全野放し状態だった。

 盛大な(=いびき)を掻き始めたヴィガーのふさふさな首回りからお腹、そして足に至る上から下までを、ループは洗えるだけタオルで洗ってあげた。その時の感覚たるや、羽毛に手を突っ込むような感触の良さもあれば、反発力のある弾力的肉厚さの心地良さもあり、自然とループは今の作業に対して満面の笑みを浮かべていた。純粋に子供ながら楽しんでいるのかも知れない。ただこの状況ではヴィガーの背中は洗えないので、それはまた彼が起床したのちほどということになる。

 

 

 それから、ヴィガーが目覚めて大量注文した出前が届くと、ループがそれをリビングへと運び、前屈みになってそれらを食い荒らす主人の背中を、彼は丹精込めて綺麗に洗ってあげた。

 

 

    ~一応おしまい~


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