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太膨SSの60分クッキング。

自分で勝手に60分という制限を設け、太膨SSを書いてみたものです。

 

※事前に案は頭に浮かべた状態で書きました。

※信じるか信じないかはあなた次第です。

 

なお今回はクッキングなんて軽い言葉使ってますが

内容はかーなりダークヘビーです。

あと正直言いますと、60分って中途半端ですが、

実は最初は30分でチャレンジしてました。

ですが、全く間に合いませんでした;

 

※制限時間ありきで書いたんで、かなり文章が荒いです。

 言い換えると、荒い状態だとこんな風になるということです。

 

 

  太膨SS:60分クッキング

    〜飛沫〜

 

 

 時は 罪だ

 私達を こんな目に合わせたのだから

 

 

 いつの頃からか、この小さな惑星に、長寿の力を手に入れたという竜がいた。遠い異国の地に於いて、竜は長生きすると噂されていたが、それは彼が生み出したものとも言われている。正直なところ竜という種族自体、この宇宙において決して長く生きられる種族ではなかった。

 そんな伝説を持つ竜は、遙か昔には神と崇められていたという。この惑星の中央に位置する<神聖なる観測所>は、そんな神が民達を常に見守れるようにと設けられたものだった。だが今ではただの瓦礫となり、いつしか神という称号が霧消した竜は、修復もされないその場所に野ざらしにされていた。

 こんにち、その竜は、ここに住むどんな住民よりも怠け者であると愚弄されていた。彼は一晩中瓦礫に住み、みるみると体を肥やしていたからだ。特にこの惑星は、宇宙でも類を見ないほど人々は健康体で、肥満率はほぼ0%だった。そしてその「ほぼ」の元凶であるたった一人の存在が竜であり、それがまた住民達の彼に対する嫌悪をますます増加させていた。

 

 ある日、竜は重い病気に罹った。だが誰もが見て見ぬふり。医者ですら無視していた。こういった事態は何年も前からあり、そのたびに回復はしていたが、何よりその体で生き長らえていること自体が奇跡であり、自業自得だと周りは一切救いの手を差し伸べなかったのだ。

 しかしながら今回は違った。竜の病気は急激に進行し、気息も常々乱れ、睡眠も満足に取れなくなっていた。その様子にさすがの住民達も、少しばかしは目をくれてやったが、竜はとうとう息絶えてしまった。そしてその亡骸は、瓦礫と共に放置された。

 

 変化が起きた。あの竜以来となる肥満者が現れたのだ。それも次から次へ、留まることを知らず、ついには太り過ぎによる死傷者まで発生したのだ。

 この事態に政府は、あらゆる調査を行なった。私はその中で、過去に同様の事例がないかを調べるため、この惑星に存在するありとあらゆる文献を読み漁った。遠い遠い昔の出来事から、数年に渡り調査を続けた。

 そして判明した。あの竜は、本当に神であったと。彼はこの惑星に住むどんな「悪」も、自らを犠牲にして取り込んでいたのだ。その悪は形而上のものに限らず、人々に取って悪いもの——つまりは病気や感染症、体内物質に至るまでの全てであり、彼は私達にとっての守護神であったのだ。

 そう、みなが途端に太り始めたのは幻ではなく、寧ろそれが本来の現実であり、今までは竜によって幻が具現化されていただけなのだ。

 もし仮に、私達が彼の本当の存在理由を知っていたのなら、このようなことにはならなかったのだろう。だが悲しいかな、時がその事実を静かに掻き消してしまったのだ。

 

 事態は佳境に入り、最悪な結果を向かえた。この惑星の肥満率は十数年前から一転、遂に100%に達した。かの私も、もはや生活に支障が出るほど肥えてしまった。仕舞いにはニュースで取り上げられた人達のように、またはあの竜の呪い——いや、私達への戒めであるかのように、彼と同じ人生を歩むことになるだろう。

 

 

    完


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