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♂ ガーヴァンディ Garvandy

 

♂ ハパッソ Hapasso

 

♀ドーガン フレイア Flair

 

 

 

    賞品:世界一周旅行也 2

 

 

 ぐぐぅー……

「……どうしたの、ガーヴァンディ?」

 俺は、空腹から夜中に目覚め、布団から足を下ろしていた。

「腹が減ってな。全くどうしたものか」

「またフルーツでも食べる?」

 実はここの所、俺は良く深夜にフレイアが切ってくるフルーツを食べることが多くなっていた。

「でもなぁ、最近それじゃ物足りねーんだよ」

「だったら、どこかに食べに行きましょ?」

 これが前々から彼女が提案しているものだ。しかし俺は、それに躊躇していた。確かにこのクルーズ客船では、どこの施設も24時間営業している。それを利用するのが、今の俺の腹にとっては嬉しいことなのだが、いかんせん夜更けに食事をするのは抵抗があった。最近フレイアと一緒に生活するようになり、少しずつ腹の出て来た俺でも、さすがにここまでライフサイクルを大きく変えるのは、容易いことではないのだ。

 そんな様子の俺を毎深夜見続けていたフレイアは、とうとう今日になり痺れを切らしたようだ。

「別に良いじゃない、高々夜食でしょ。せっかくの旅行なんだから、ねっ?」

 そう彼女は、俺の肩に頬を凭れさせて来た。その行為に俺は、少しどぎまぎしながら答えた。

「ま、まぁ、そう、だよな。お前の、言うとおりかも知れないな」

「でしょう? こんな豪華な旅でストレスを溜め込むなんて、正に愚の骨頂よ」

 俺は一瞬彼女の言葉にキョトンとした。そして次の瞬間、思わず吹き出してしまった。

「ブッ、ハハハハハ! フレイアは面白いこと言うな。良し分かった。そんな風にお前が考えてんだったら、俺も腹を括って今日から外食にすっか!」

 色々と変わってるフレイアに見事笑かされた俺は、気分も上々に彼女と部屋を出た。

 

 

 時間も時間のため、廊下やホールなどは、船の波をかき分ける音が聞こえるほど物静かだった。しかしそれでも、所々に人は点在していた。

 初めての夜中の船内を歩きながら、俺とフレイアはレストランに入り、席へとついた。店の中はがらんとしていたが、少し離れた席に、あの超デブシャーカンが食事をしていた。こんな夜更けでも、いつも見かけるテーブルいっぱいの料理を平らげてる様は、さすがあの体型を成しているだけあると、俺は改めて納得した。

 そして俺は、視線をメニューへと移した。

「何食べましょうか?」とフレイア。

「そうだな、どうせなら今まで俺が食ったことのない奴を食いたいな。折角貰った旅行なんだし」

「じゃあ、ラーメンなんてのはどう?」

 ラーメンか……そういえばあのシャーカンが、以前特盛りのそれを数杯も平らげていたっけ。最初は見苦しかったが、最近じゃとても美味そうに見えて気にはなっていた。

「良し、ならそれを頼もう」

 そして俺は、初めてラーメンというものをこの就寝時間に食すことになった。

 ラーメンと言えば、塩分過多の典型例の一つ。常日頃大会に向けての体構成を意識していた俺には、縁もゆかりもない料理であった。しかしいざ食べて見ると、それが非常に美味しいものであることに、俺は気づかされた。

「ずずずずず……んぐ。美味い、こんなに美味いもの、なんで今まで食べて来なかったんだ」

「ほーら、だから外食しようって言ったでしょ? まだまだ美味しい料理は沢山あるから、明日もまた夜食しましょ。どうせあなた空腹で起きるんだし」

「ハハ、確かにそうだな」

 そして俺は、満足顔でラーメンを平らげた。だが不思議と、まだ満腹には至らなかった。

「あら、物足りない感じね?」とフレイアに見透かされた。

「あ、ああ。どうやら気付かない内に、随分と胃袋が成長してしまったようだ」

「じゃあさ、お代わりでもしちゃえば?」

「ラーメンをか? さすがの俺でも、二杯は食えんだろ」

「大丈夫。残したら私が食べるわ」

 うーんと悩んだ俺だったが、正直もうちょっとラーメンを食べたいという欲求はあった。それに彼女が残りを食べてくれるなら、追加注文しても残すことはないだろう。

「良し、ならもう一杯頼もう」

 そして俺は、二杯目のラーメンに突入した。最初は勢いで食べ進めて行ったが、さすがにお腹が苦しくなって来た。

「……フレイア?」

「ん……あら、ごめんなさい。ちょっと寝ちゃったみたい」

 どうやら彼女、少し無理をしているようだ。そりゃそうか、俺のために態々夜中に起きては果物を切ってくれたりし、そして今日はこうやってレストランに足を運んでくれてるんだから。

「悪い、俺のために」

「いいのよ、気にしないで」

 フレイアは笑顔で答えたが、その顔には眠気も浮かんでいた。

 俺は彼女のためを思い、満腹感を堪えて残りのラーメンを一気に完食した。すると、汁まで全て飲みきった俺の腹は見事なまでに膨れ、少し気持ち悪くなってしまった。俺はそれを僅かにでも改善するため、お腹を優しく摩った。その手には、筋肉とは違う、脂肪よりは固めな感触が伝わり、相当パンパンに張っているのが分かった

 俺は席を立ち、フレイアと自室に戻り始めた。

「こりゃ、さすがに膨らみ過ぎか? どう思うフレイア」

「そうねえ。私ならもっとおっきくなって欲しいわ」

「ハハハ! なるほどお前にとっちゃ、これはまだまだ序の口なのか」

 気が付くと、俺の悪心(=おしん)はすっかり消えていた。そして部屋に帰ると、フレイアはすぐにベッドに横になり、ぐっすりと眠りについてしまった。

 俺のために無理をしていたんだろうな。フレイアのために頑張ってるだけかと思ったら、彼女も彼女で俺のために頑張ってる。そう考えた時、俺はなんとも言葉にしがたい感情に包まれた。ただ一つ言えるのは、それはとても心地の良いものであった。

 俺は、彼女が寝たあともすぐにベッドには入らなかった。満腹からすぐに寝付けそうだが、俺には毎食後の日課があるのだ。

 トランクをあけた俺は、中から体重計を取り出した。それは台と表示部が分かれているもので、そのようなスタイルになっているのは、単に携帯性に優れているから。

 だが今、それは俺にとって別の効果があった。

「200kg——あれから50kgも太ったのか。そりゃ土台も見えなくなるわな」

 テーブルに乗せた表示器を見た俺は、うんうんと頷いた。

 世界旅行に出る前、俺の体重は150kgだった。それだけ見ると一般には太ってるように思われるが、筋肉というのは脂肪よりも重い。つまり当時の俺の体は、みっちりと筋肉に覆われていたのだ。

 だが今回増えた50kgは、概ね脂肪で間違いない。しかも全てが腹部に付いていた。良く腹に脂肪が一番残ると言われているが、これに関しては腕と足だけを毎日鍛え、腹だけはフレイアのために疎かにしているのが要因である。

 結果、今の俺は下を見ると、見事なボール状に膨れたお腹がくっきりはっきりと見え、乗っている体重計の台を隠すほどに成長していた。そこでなるほど、台と表示部が分かれていると、こういう便利さもあるのかと知った。

「はぁ、これでもフレイアにとっちゃ朝飯前か。彼女が満足した暁には、一体どんな太鼓腹——いや、それ以上の腹になってるんだか」

 まだ心の奥底に少し残っていた躊躇いが、俺に嘆息を齎した。だがふと後ろを振り返り、ベッドでぐっすりと就寝するフレイアを見ると、そんな憂慮などすぐに失せた。それはそれはとてもキュートな寝姿で、起床時は常に立っているのに、眠っている時だけペタンと頬に垂れる両耳が、一層愛らしさを際立たせている。

 気付けば俺は、彼女との色んな妄想を繰り広げており、赤面していた。俺は一人で慌てながら視線を前に戻して体重計から降りると、それを片付けた。その際俺は、この体重計をトランクの一番奥へとしまった。

 俺は、もう止めた。もっと人生に大切なものを見つけた気がした。自分のためだけじゃない、他人のために思う気持ちを。

 静かにベッドに戻った俺は、フレイアを起こさぬよう布団の中に入った。

(決めたぞ。俺は彼女を満足させる、立派な体型を作り上げて見せる。そのために必要なのは、脂肪まみれにならないよう手足はしっかりと筋トレで鍛え、お腹は食事でとことん鍛える。これで決まりだ)

 そう心に決めた途端、全てが吹っ切れたかのように俺は、瞬時にして眠りに入った。

 

 

    続


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