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Bioshock をクリアし、ゲームに目覚め始めた自分。今あるゲームが終わったら、皆さんに教えて頂いたゲームを購入したいと思います。何より全部廉価版ですし、どういうゲームがあるか分かりませんから本当に助かります^^

 

そんなこんなで、ナアムの続きをどうぞ。ってまだ太膨には達していませんが……

因みにこの話では珍しく蠍キャラを登場させますが、一部太膨界を賑わせている新風の昆虫系とは関係ないです。それ以前にこれは下書きしていたものでして、ただ単に自分が蠍座で、蠍も好きだし使って見ようと思っただけという。

 


「ちょ、ちょっと落ち着いて」私は慌てて目の前の鎧蜥蜴を宥めた。相手が怒っているのか、狂っているのか、はたまたジョークなのか兜のせいで分からない。

「おい、海豚。お前の名前は?」

(海豚? なるほど、だから私の体は青かったのね。そのことすら分からなかったわ。けれどそんなことより、今は名前を思い出さないと……)

 けど必死に頭をフル回転させても、まるで過去の記憶があの部屋のように真っ新で、何も記憶の(=おり)が浮かんでこない。だがそんな必死さが相手に伝わったのか、蜥蜴は(=おもむろ)に弓を下ろした。

「そうか、俺と同じだな」

「同じ? あなたも名前が分からないの?」

「ああ。何も思い出せないんだ。ただここに、俺はいた……」

 そして緑の蜥蜴は、装備している兜の留め具を外し、それを手に持った。

 ようやく顔の彼が見えたわけだけど、それはなんとも痛々しいものであった。体は普通体型の健康体そうだが、不良にありそうな額から頬にかけての傷跡があり――

「――あれ、おでこに何か書いてあるわ」

「俺も、なのか?」

「えっ。もしかして私にも書いてあるの?」

「ああ……ポルムって書いてあるぞ。因みに俺のは?」

「あなたのは……フラッグね」

「俺達の名前か?」

 私は首を横に振った。

「分からないわ、何も思い出せない」

「同じく。だが名前が分からない以上、それで呼び合った方が良さそうだな」

「そうね。それじゃ改めて宜しく、フラッグ」

「宜しくな、ポルム」

 そして私は、彼と握手を交わした。身長は同じくらいのようだが、私の方が重みはありそう。

 だがその手は、一瞬にして振り払われた。突如後ろ(つまり私の部屋の向かい側)の扉ががちゃりと開き、フラッグが矢を弓に(=つが)えたからだ。そして彼は中心の硝子の壁を左に迂回した。私は右に迂回した。

「なっ、敵か!?」

 臨戦態勢で出て来たのは、茶色い毛並みの紺の袴を来た狼。ちょっとお腹がぽっこり気味で、高さは私達二人よりも小さいが、腰に付けていた鞘から彼は刀を抜き出し、凜とフラッグに視線を向けた。

「ちょ、ちょっと待って!」

 私は慌てて二人のあいだに割って入った。

「女!? お主、あやつの仲間か?」

「そうよ。フラッグ、矢を下ろした。あなたもよ、えーっと……ハゲヒル」

「ぬっ、それは我輩の名か?」

「多分ね。おでこに書いてあるのよ、私も、それにこのフラッグも」

 フラッグは既に弓を下ろしていた。ハゲヒルという名の狼は、二人の顔を窺い、そして刀を鞘に収めた。

「失敬した。それで、付かぬ事を聞くが、ここは何処なのだ?」

「私達二人も知らないのよ。気が付いたら白い部屋にいて」

 ここでフラッグは、一瞬戦おうとしたハゲヒルに手を差し伸べた。

「俺はフラッグだ。宜しくな、ハゲヒル」

「ああ、宜しく。さっきはすまなかった」二人は握手をした。

「気にしなくていいさ」とフラッグ。

「私はポルム、宜しくね」

 そしてハゲヒルと手を交わした私。だがここで再び、今度は右手の方の扉が開いた。私も含め三人は、もう厳戒態勢を取ろうとはしなかった。けど……

「ウヘヘ、いったいなあ全く。ケケ」

 中からよたよたと出て来たそれは、なんと紫色の蠍だった。体の節々が丸みを帯びているが、それはハゲヒルの体格とわけが違う。更に全長という考えでなく体高で見ても、私達三人よりもやや高めで、ニタニタと笑みを浮かべていた。色んな状況や様子を考慮すると、これにはフラッグとハゲヒルも少し身構えた。

「んん、誰だぁ?」と蠍は、ふらふらと私達に近付いて来た。少し不安になった私は、他の二人が攻め込まないようにという意図も込め、ここで声をかけた。

「止まって。あなた、自分の名前は分かる?」

「名前ぇ? うーん、知らないなぁ」

 声が間延びしたり、このような蠍の特異行動は、電気で痺れたからなのかしら。それとも素面でこれなの?

「あなたの名前は……多分、クロウラーよ」

「クロウラー? なんで僕の名前を知ってるんだぁ?」

「額に書いてあるからよ。ここにいるみんなも同じ。本当の名前かどうかは分からないけどね」

「ヘヘ、なるほどぉ。それで、ここはどこなんだぁ?」

「誰も知らないわ。とりあえず、私はポルムって言うの。宜しくね」

 そして私は蠍のクロウラーと握手を交わそうとしたが、さすがに(=はさみ)のあいだに手を入れるのは怖いので、外側を取って握手した。残りの二人も恐る恐る同様にして握手を交わした。その間の相手の様子は、ずっとニタニタしたままだった。

 刹那、どこからともなく「ぐぉん、ぶぉん」という電子バリア的な音が鳴り、硝子の壁の方から風が吹いてきた。

「何が起きたんだ?」とフラッグ。ハゲヒルも顔色を変えないが、辺りを警戒している。クロウラーは相変わらず顔をにやけさせている。

 しかしようく見ると、先ほどまであった硝子の壁らしきものが消えており、何やら床が出現していた。

「これ……に乗るのかしら?」

「どうだか。とにかく用心しないとな」そうフラッグ。

「ならば気を引き締めて参ろう」ハゲヒルは右手を鞘に添えた。

「ウクク、楽しそうだなぁ」相変わらず脳天気で気楽なクロウラー。

 そして私達四人は、恐る恐る中央の床に乗った。すると少しして、ふわっと瞬時体重が軽くなった。だが今回は重力変化だとは思わなかった。なぜなら目の前の廊下が上へ上へと――即ちこの床が、下へ下へと下りていたから。

 

    続


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