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珍しく週の中間にて更新。

 


固有名詞

男 緑竜 ムープ  Moop

男 赤竜 ガンヴァ Ganva

 


 

 

ムープの暮らし 〜第一週目 昼〜

 

 

 ガンヴァの店を去ったムープ。時刻はまだ11時であったが、既に満腹からか眠気が襲っていた。彼は右に回ると、まだらに人達が寛ぐ海岸に出た。そこにいる人達はみな体格が大きめである。単に太っている人もおればガンヴァのような筋肉質な人もいる。ただ一様に体が大きいのである。逆に細身の体型を持つ者は極々少数。実はこの環境も、ぽっちゃり気味のムープには居心地が良いものであった。

 ムープは、砂浜に「よっ」と座った。程よく暖かい砂地に温(=ぬくぬく)とした太陽光が全身に注ぐ。腹一杯で膨れたお腹がややテカる中、彼はじぃっと地平線を見つめた。漣や時折先を通り過ぎる人達の砂を歩き話す声が聞こえるが、彼は無心で海の先を見続けた。何も考えないこの時間も一つの日課で、それから暫くして彼はゆっくりと背中を地面に降ろした。そして大きな欠伸とおくびを漏らすと、瞼を静かに閉じた。

 

 

 目を開けた時、ムープは(=まばゆ)い太陽に再び目を閉じ、のっそりと体を横にすると、砂浜から体を起こしながら瞼を持ち上げた。海岸に建てられた時計を見上げると、13時を示していた。そして彼のお腹も、空腹を示していた。

「またあそこで食べよっと」

 彼が向かったのは、自宅から見てガンヴァの店とは反対側にある巨大ショッピングモール。品揃えも良ければ食事処も多数あるそこは、ムープの朝食がガンヴァの店で定番であるように、昼食のお決まり場所となっていた。

 少し歩いてショッピングモールに入ったムープ。店内は冷房が効いておらず、そういった物が必要な場所にだけピンポイントで保冷が行なわれている。そんな中で彼は、入り口近くに集う料理店の並び——通称レストリート(=Restaureet)にあるスパゲティ店に入った。

「いらっしゃいませ。お一人様で?」

 ウェイトレスにムープは頷くと、彼は先にあるテーブルに案内されて着席した。

 適用にメニューを捲る。ここに越す前までは好きなものを食べれなかった分、ここでは色んな料理を試したくなっていた彼は、今まで食べたことのないヴォンゴレを注文した。そして料理は、ガンヴァの店と同様にして早くやって来た。

「お待たせしました。ヴォンゴレです」

「あっ、ありがとうございます」

 ムープは早速フォークを手に、ボリュームのあるスパゲティに大きな浅蜊の乗ったヴォンゴレを食べ始めた。普通の量なのに、この島では料理はどれもやや大きめ。ただ彼には丁度良い量である。因みに島民はこれ+αで何かを注文するのが一般的らしい。

 再び満腹になった彼は、フォークをかちゃりと皿に置くと、テーブルに設置されたリーダーにマネーカードを翳した。

『精算が完了致しました。ご利用ありがとうございます』

 ちょっと質の良いリーダーはこんな音声機能も付いている。彼は席を立つと店を出た。

 

 

 朝のように食後の眠気はなかったが、のんびりとショッピングモール内を彷徨(=うろつ)いていたムープは、少々小腹が空き始めた。彼は入り口付近のレストリートに戻り、そこでお気に入りのクレープ屋を訪れた。

「あら、今日も来てくれたのね。今日はなんにする?」と明るく声をかけたのは、店員の女黄竜。この島では珍しくムープよりも細めの体型である。

「今日はですねぇ……バナナチョコクレープをお願いします」

「それじゃ、ちょっと待っててね」

 黄竜は手際よく、クレープを作り始めた。生地をレードルというお玉で掬い上げて円形状のクレープ用鉄板に流し、トンボという道具でその生地を丸く伸ばす。生地の片面はすぐに焼け、それをパレットナイフで巧く引っ繰り返して両面を焼く。出来たらそれを調理台に移し、途中でバナナを挟む形で生クリームとチョコチップをふんだんに掛けると、それを綺麗に包んで紙に巻いた。

「はい、出来たわよ」

 ムープはまずマネーカードで支払いを済ませ、そして黄竜からクレープを受け取った。矢庭に彼は、そのクレープを大きな一口で頬張った。今朝のハンバーガーの時のように中に詰まった生クリープなどがぶにゅりと溢れ、彼の手や口端にくっついた。それらを彼は綺麗に舌で舐め取り、再びクレープを頬張る。

「はぐっ……んー、美味しいなぁ」

「ありがとう。こっちも作った甲斐があるわ」

 それからムープはあっという間に完食を済ませた。

「ご馳走様です」と彼は、店の前に置かれたゴミ箱に紙を捨てた。

「是非また来てね」

「勿論です」

 にこにこ顔でムープは店を去った。時刻は16時。彼は短い帰路に着いた。

 

 

    続く


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