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著者 :Fimdelta

作成日:2007/ 3/20

完成日:2007/ 5/19

更新日:2007/ 5/26

 

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元々太った生き物は好きだった。

けど、フィーダーにはならなかった。

だって――それって、何だか変な目で見られるでしょう?

唯でさえ私は鼠族という、下っ端に見られる存在なのだから、それ以上異しに見られたら堪ったもんじゃない。

だから私は、ちゃんとした職業、ホテルマンに就くことにしたんだ。

……けどまさか、この仕事が私の心中に潜む欲求を呼び起こすとは、夢にも思わなかった。

私が働いているホテルは、とても有名な超高級なホテル。

そう……やってくる客は皆、腹に至福を大量に詰め込んだ生き物ばかりなのだ。

揺れるお腹、仰々しい動き……まさに私にとっての楽園!

それだけじゃあない――そう、私はこのホテルのホテルマンなのだ!

彼らの体に働きをなくすため、私は彼らのために荷物を運んだり、料理を運んだり、部屋の掃除をしたりする。

つまり私は、彼らの体をさらに肥えさせるための小さな努力をするのだ。

職業柄当たり前だが、私は頼まれれば何でもする――特に、彼らが怠け、太る行為であれば、私は喜んでそれをする……

この太らせ好きの趣味は表沙汰には出せないが、つい私はそれに関する行為を自然とやってしまう。

しかしながらそれが旨い事ヒットし、私のホテルマンとしての活躍は評判が良く、

最近では本当に大金持ち、それはもう千万長者、億万長者を越えるような者達も、私を推薦してくれるようになったのだ。

勿論その方々の多くは、今まで以上のさらなる”私腹”を肥やし、そしてそれは私にとっても至福なのだ。

そう……彼らは正に、<至福の私腹>を持っているのだ!

おかげで私は自らの欲求と、通常のホテルマンより多くの業務をこなす特別な存在である力を、両者一対に膨らませることが出来るのだ。

 

……お? どうやら今日は、なかなか立派に肥満した竜のお出ましだ……

 

 

 

「ようこそ、イセボホテルへ。私はヘイムと申します……お荷物をお持ち致しましょう」

「頼む。それと悪いが、トランクにある荷物の方も頼む」

「畏まりました」

私は車のトランクの方へと向かった。

……にやり……

竜の容姿はこうだ。まず一般的な竜タイプで、

(ここでは、頭に角を二本、蛇腹、三本鉤爪、大きな蝙蝠型の羽、背中から腕、足、尾にかけてびっしりと生えた鱗を持つ竜のこと)

だが顔や腕、足や尾などは鱗が耐えうる限界まで膨らんでいて、腹部が風船のように膨らみきって、ボールのように上下に弾んでいた。

そんな状態のおかげで、彼の蛇腹の面積は体全体よりも大きくなっているのだ。

これは私が出会った客人の中では、ベスト5に入るほどの巨漢であった。私の気分が高揚した。

(ちなみにベスト1は、意外なことに蛙なのだ。

蛙だけに、お腹の膨らみは綺麗だったが、逆に膨らみ過ぎて恐かった(私は破裂系統が好きではないのだ)。

しかしながら彼の動く姿を見た時、そのお腹が綺麗に弾んでいたのを見て、私はホッと安心した。

そしてこの蛙、彼の行動はとにかく凄かった。何せ全ての世話を私と彼の付き添いに任せ、自分は一切部屋から出ることも、

それも、一歩もベッドから動くことなく、計三日過ごしたのだ。

そのおかげで、たった三日間の宿泊でも、蛙の動きは来た当初に比べて明らかに重みを増していて、加えて本人も辛そうだった。

正直そうなるんだったら痩せればいいのに――と、それが一般的な意見だが、私からすれば、それはとても賛同してしまう行為だ)

……とと、そんなことを考えている暇は無い。早くこのトランクから荷物を運ばないとな……

私は荷物を運び終え、部屋でのベッドメイキング等のサービスをこなしていった。

「おい、夕食を用意してくれんか?」

「畏まりました。料理の方はお決まりで?」

「ああ」

私は例の竜(名前はマルクス様)から注文を聞いた……さすが、その姿をしているだけはある。

確かにホテルで出る料理はどれも少なめだが、それでも料理を十品も注文するなんて、普通の竜じゃあ考えられない。

私はホテル従業員専用の携帯電話から調理場へ、マルクス様から預かった注文を伝えた。

そして私が注文を伝え終えた時、ベッドに横たわっていたマルクス様が私を呼んだ。

「何か御用でしょうか?」

「ああ。悪いが私は自分で靴を脱ぐことが出来ないんだ。だから、悪いが脱がしてくれ」

「はい、喜んで」

私はマルクス様の足元へと駆け寄り、彼の靴の紐を解き、そしてその靴を脱がし、ベッドの先の床に置いた。

「むむ……ここに来てからといい、お前はなかなか良い働きをするな」

「私は、客人に対して最高の御持て成しをするのが仕事ですので」

「良い答えだ。ほれ、こっちに来なさい」

私は、マルクス様の頭が添えられている枕元近くへと進んだ。

「今日は気分が良い。サービスとして多めに渡しておこう」

「ありがとうございます。何か御用がありましたら、いつでもコールして下さい。すぐに駆けつけ致します」

私は大量のチップを受け取り、マルクス様の部屋を後にした。

ふぅむ、相場の七倍か……どうやらあの竜は、色んな意味でかなりの太っ腹のようだ……これは、最高の御持て成しをせねば!

 

宿泊客がコールをすると、部屋に対応した携帯電話が反応するというシステムがあるのだが、今回はとにかく携帯が鳴りっ放しだった。

靴を脱がしたり履かせたりは勿論のこと、シャワーの準備をしたり、また服を着替えさせたりなど……

本来ならばこれは付き人の方がやることなのだろうが、このマルクス様は人が良く、何と付き人をスイートルームで休ませているのだ!

やはり付き人がいなくては、彼自身の生活が苦労することを分かっているのだろう。しかしそれでも、彼の扱いは素晴らしかった。

どうやらこのマルクス様は、一般的に見る金持ちの奔放な性格とは打って変わって、かなり良心的な竜のようだ。

正直私は、どんなに嫌な宿泊客の担当になろうとも、このホテルに宿泊する<至福の私腹>の為に、常に最高の行為をする。

だけどやはり、このような良心的な客を担当することになると、私も気持ちとても良くなり、自然と行動が大仰になってしまうのだ。

その後、このマルクス様はニ日後にチェックアウトをした。その間私は、チップよりも彼の性格と体に意識を集中していた。

最終的な結果、マルクス様は本当に善良な方で、付き人に対し、望んだ物を全て叶えてあげ、付き人は本当に大喜びしていた。

そして短期間とは言え、常識外れの量の食事を取ったマルクス様は、確実に宿泊前より肥えていた。

気付けば、着ていた服が窮屈そうになっており、既に一番上のボタンは外されていた。

動きも、のっしのっしから、ずしんずしんと、かなり大きく変わり、その姿に、私はつい見惚れてしまった。

 

 

 

「え? 私がジャグー様の担当ですか?」

「ああ。このイセボホテルで一番のホテルマンと言ったらお前だろう。

ジャグー様はとても気難しく、他のホテルマン達を次々と払い除け、さらにこのホテルで大暴れしたりなど、とにかくしたい放題なんだ」

「噂では聞いたことがありますが……分かりました。そういうことなら、私にお任せてください」

「恩に着るよ」

とは言ったものの……はぁ……確かにいつも、来訪する<至福の私腹>の為に、誰に対しても最高のお持て成しはするが……

まさか、噂のジャグー様を受け持つことになろうとは……日中や

話では、言うことを聞かないとすぐに憤慨し怒鳴りつけるらしく、それは一昼夜問わず行われるので、

おかげで周りの宿泊客も迷惑がり、その時から一時的にホテルの評判が落ちてしまうのだ。

そしてその責任は全て、そのジャグー様担当のホテルマンに課せられる……そしてそのホテルマンは、損失分を埋めるまで無給……

あー! 全くツキが無い。まさか私があのジャグー様の担当になるなんて……

 

「おい、来たぞ!」

「ジャグー様……いや、あのジャグーめ! よくも俺をコケにしやがって――もう顔も見たくねぇ!」

「そ、そんなに嫌な奴なのか……?」

「あぁ。とりあえずヘイムに、お気の毒、とだけ言っておくよ」

「――! あっ、そうだ! 荷物を預かりに行かないと――」

「いや、ジャグーはいつも荷物だけは自分で部屋に持っていくそうだ。俺らが手伝うのは、奴が部屋に入ってからさ」

そうしてジャグー様は、不思議な車――胴の長さが長いのは分かるが、何故か高さも異様にある――を降りた。

片足を出す動作が、やけに重そうだ……いや――重いんだ! ジャグー様の足は、遠くから見ても明らかな程重いのだ!

ま、まさか……

「おい! ジャグー様の部屋はどこだ!?」

車を降り立ってすぐ、ジャグー様は叫んだ。

その光景に、私は呆気に取られた。あまりにも予想外な展開だ!

ジャグー様は、まだ外のエントランスにいながらも、既に竜族とは思えない程の巨体を露にしていた。

さらに良く見ると、ジャグー様は何か座っていた――車椅子だ! それも超特大ので、体の代役を務める為の機能も備わっているらしい。

私は同僚に聞いた。

「な、なぁ……ジャグー様って、あんなにも太っているのか?」

「あぁ。あいつは何でもかんでも他人にやらせるからな……だが、あれはちと太り過ぎだろ……」

ジャグー様がロビーにやって来た。

「ジャグー様の部屋はどこだ!?」

「あ、はい! 私、ヘイムがご案内致します!」

「むむ……今日はお前が担当か……新顔だな。まあいい、早く案内しろ!」

「はい!」

ジャグー様は、<至福の私腹>を大量に溢した車椅子を走らせ、私の後に付いた。その時車椅子の振動で、彼の体肉は微かに揺れていた。

私はジャグー様を確と見据えたいという気持ちを抑え、エレベーターの前まで案内した。

そしてエレベーターが到着し、ジャグー様はそれにバックで乗り込んだ。だがエレベーター内は、ジャグー様の体で一杯一杯だった。

――これは、私がこれまで見て来たどんな客よりも凄い……もうこれは、私のベスト1だ!

しかしどうしたものか……これでは、私はエレベーターに乗ることが出来ない……

「何をしているヘイム? 乗る所が無いのなら、このジャグー様の体に乗ればいいだろうが」

「えっ!? そ、それは――」

言葉を言い終えぬうちに、ジャグー様はその巨躯を前に屈ませ、私を掴んで自分の腹の上に乗せてしまった。

――あぁ! なんてことを! これではもう、私のホテルマン人生は終わりだ! こんな姿を他の客に見られては、信用が……

そんなことを思っているうちに、エレベーターの扉が閉まった。それと同時に、私の人生路も閉ざされてしまったように思えた。

「何をそんなにしょげている?」

「い、いえ! そんなことはございません!」

「……まあいい。とにかく今日、このジャグー様を精一杯満足させろ!」

「分かりました!」

(もう……もうどうなっても良い! とにかく私はこのジャグー様にご奉仕し、最高の死に花を咲かせてやる!)

私はもう自棄になり、とにかくこのジャグー様にどっぷりと仕えることにした。そして後に破滅をする……もう、どうでも良かった。

 

私はジャグー様を部屋へと案内した。そこはスイートルームを優に上回る、ワンフロア丸々の広さを持つスペシャルルームだ。

部屋のドアは、決してジャグー様の体に合わせている訳ではないのに、彼の体を余裕で通すことが出来るほど大きかった。

「ふむ、やはりこの部屋が一番良いな!」

そうジャグー様が車椅子に座りながら感嘆している間に、私はベッドメインキングを行った。

そしてちょうどその作業を終えた時、部屋の何処からか低周波の音が轟き、部屋中に谺した。

「腹が減った」

どうやらそれはジャグー様の腹の音らしい。私はすぐに問いかけた。

「何か、ご希望の料理はありますか?」

「全部だ!」

「ぜ、全部ですか?」

「何だ、文句があるのか?」

「い、いえ!」

内心私は大興奮。いくらどんなに肥満していようとも、全料理を注文することは今までなかった。

私はすぐさま、ホテル用携帯電話から調理場へ注文を伝えた。するとそこでは、既に全料理を拵えていたようで、今すぐ向かうと答えた。

暫くして、部屋には大量の料理が届けられた。私はそれを、部屋の巨大なテーブルの上に綺麗に並べていった。

そして並べ切れなかった料理はそのままの状態にしておいて、それを乗せたサービスワゴンを、部屋の邪魔にならない位置に置いた。

「おい?」

「はい、何でしょう?」

「まさか、このジャグー様に自分で料理を食えと言うんじゃないだろうな?」

「え――い、いや、滅相もございません!」

二度目の予想外な展開だ! まさかこのジャグー様が、ここまで肥える条件を担っているとは――これは遣り甲斐があるぞ!

私は興奮し過ぎて、度を越えたことをしないだろうかと憂慮したが、もうここを解雇されるのは確実……だから、その必要は無かった。

私はすぐさま料理皿を手に取り、再びジャグー様に抱えてもらって腹の上に乗せてもらい、そこで料理を彼の口に流し込んだ。

「ごぶ、ごぶ――くはぁ! やっぱここの料理はうめぇな!」

(まさか、普通の料理を食べずに”飲む”とはな……)

「おい、次!」

「は、はい!」

私は嬉しかった。超豊満な肉体を持つジャグー様に使われ、さらに彼自身の大胆な行動により、彼の軟質な腹の上にも乗せてもらった!

もう正直、彼に一生付いて行きたい気持ちになっていた。

……ん? もしホテルマンをクビになったら、それは可能なのでは?

そういえば、ジャグー様には付き人がいなかったような……。ホテルに来た時、彼の周りには誰もいなかった。

と、いうことは、もしかしたら――!?

その時、ちょうど運ばれた来た全ての料理が、ジャグー様の腹の中に収まった。

「ぐぇっぷ……ふう、もう食えん。寝る!」

そう言ってジャグー様はベッドへと向かい、車椅子に付いている代役機能を使って、自身の体をベッドへと置いた。

そして彼は勢いよく仰向けにドスンと倒れ、その衝撃でジャグー様の体は、広がった折り畳みテントの様に「ボン!」っと腹が飛び出た。

こんもりとベッドに横たわる肉の塊は、もう見物以外何物でもなかった。

私は、ジャグー様に付き人になりたいという意志を告げること忘れ、暫くその光景に目を瞠った――

「……何をそんなに凝視する必要がある?」

「あ、い、いえ、すいません……何でもありません」

「お前、まさか”デブ専”、じゃなかろうな?」

「――! そそそ、そんな! わわ、私は、そんな!」

あまりにも唐突な質問、しかも図星だったので、私は大いに混乱してしまい、吃りまくってしまった。

「はは、それならそうと言ってくれれば良かったものを!」

(あー、何と言うことだ……私の人生は、最悪な終焉を迎えてしまった……)

だが突如、ジャグー様は起き上がり、横にあった車椅子のとあるボタンを押した。

すると車椅子からアームが出て、彼はレバーを巧く駆使し、そのアームを操作して私を掴んだ。

「えっ?」と呆気に取られながら、私の体はジャグー様の腹の上へ……と、突如掴んでいたアームが私を手放した!

――ぼよん。

ジャグー様の腹が、まるでトランポリンの様に私の体を跳ね返した。

そして再び落下すると、またジャグー様の腹の上で弾み、再び空中へ……

あー、何というジャグー様の腹の感触! 思わず私の顔が綻んだ。

(――あ! し、しまった……こんな姿を見られたら――)

と、一瞬思ったが、私がここを馘されるのは確実の上の確実。もう、私は吹っ切れたぞ!

「は、はは……ははははは!」

私はもう大笑い。嬉し過ぎて仕方が無いのだ。

「ほう、どうやら本当らしいな! このジャグー様の体を気に召すとは――気に入った! 今日からお前は俺専用のホテルマンだ!」

「……え?」

「お前は、このイセボホテルでのジャグー様専属のホテルマンだ、いいな!?」

「は、はい! ……でも、きっと私はクビになります……」

「何故だ?」

「私が、その……ホテルマンに有らぬ行為をしたから……」

「ならこのジャグー様の付き人になったらどうだ?」

「え……えー!?」

「何だ、嫌なのか?」

「い、いえ――もう……もう最高です! で、でも、ジャグー様の付き人は?」

「ジャグー様が認める付き人などいない! 強いて言うなら、お前だけだ!」

なるほど……確かにこれほどまでに奔放な者に仕えるなど、並大抵のことではないのだろう。

……てことはこれまで、ジャグー様は自ら車を運転をし、移動していたのか!?

何と、何と悲しいことだ! ジャグー様には、もっと勇ましい姿をして欲しい!

そしてそれをなせるのは――私だけだ!

「分かりました! 是非とも私を、ジャグー様の付き人にしてください!」

「なら、ジャグー様の宿泊が終わるまで、付き人としての最高の行為をしてみせろ!」

「はい!」

 

ジャグー様との一週間は最高だった。

食事を貪り食うジャグー様、その後は大きな腹を抱えて横になる。そんなぐうたらな生活でジャグー様は日に日に肥える。

そして日に日に肥える彼の体に、私は毎日寄り添った。そして時たま、遊ばせてもらったりもした。

ぶよぶよの二の腕……そこに頭を添え、枕の代わりに――ぶよっとしていて気持ちが良い!

溢れ出た脇腹……そこを、敷布団代わりにして横たわる――ずぶずぶと沈むほどの凄い弾力性!

山のように聳える肉塊の腹……そこでトランポリンの様に跳ねる――足先、背中から感じる柔らかな脂肪の感触は、もう病み付きだ!

そんなこんなで、ジャグー様の宿泊期間である一週間が過ぎた。

私は、カウンター裏にある従業員控え室にいた。

「ヘイム、お前はクビだ! あんなホテルマンに有るまじき行為をするとは!」

私はこうべを垂らした。やはり解雇されるのは確実だったんだ……だけど、それで良い。これからは、新たな人生を堪能するんだ!

「はい……今まで、ありがとうございました……」

私はロッカールームで着替えを済まし、控え室を出てエントランスへと向かった。

とその時、後ろから一人の同僚が声をかけた。

「お、おぃ……少しは反論したらどうなんだ? あれは絶対ジャグーのせいじゃないか……」

「……良いんだ。それにはちゃんと訳があるからね」

「……訳?」

「あぁ」

そう言って私はエントランスへと向かった。そこには大きな車をバックに、超肥大化した体を持つジャグー様が立っていた。

「準備は良いか?」

「はい!」

私は車の後方の扉を開け、そこにジャグー様を招いた。彼はその指示に従い、車の中へと巨体を押し込んだ。

座席にジャグー様が着いたことを確認した私は、そこの扉を閉め、前方の運転席がある扉へと向かって開けた。

そしてに中に入る直前、私は後のガラス越しの、ロビーに突っ立っている同僚を振り返った。

「こういうことなのさ」

そう言ったが、ガラスに遮られて向こうには声が届かなかった。しかしこの状況を見て、同僚は解した。

一瞬「まさか」と驚いたようだが、私の、落ち込んでいない笑顔の表情を見て、彼は納得したようだ。

そうか、ジャグー様に仕えるのか……と、その表情は語っていた。だが決して非難はせず、頑張れと応援しているかのような表情だった。

私は運転席に着き、扉を閉めた。そしてエンジンを蒸かしてアクセルを踏み、私達はイセボホテルを後にした。

そこに残ったのは、一瞬存在を示した排気ガスだけ……それ以外そこには何も、後悔や屈託、蟠りなどを一切残さなかった。

 

 

 

「ジャグー様がやって来たぞ!」

従業員達は大騒動でジャグー様を向かい入れた。

ジャグー様は堂々とロビーを走り抜け、その後方にヘイムが付いた。

途中ヘイムはフロントでチェックインを済ませ、すぐさまジャグー様の後を追った。

暫くしてエレベーターが到着し、ジャグー様はそれに乗った。

だがいくらエレベーターが広くとも、ジャグー様の体を満足するエレベーターなど無かった。

乗るスペースが無くなったヘイムは、いつもの通りジャグー様の腹の上に乗せてもらった。

その時ヘイムは感じた。またジャグー様のお腹が大きくなったな、と……

ジャグー様の体は、牡丹餅のような顔と、腰まで垂れる二の腕を持つぶよんぶよんな腕、さらに指。

そして最も強調される部分、五重に重なった脇腹を持ち、図太く脂肪の塊と化した脚を隠す、私の欲求を膨張させる腹は、

まるでスライムのように、でろんと車椅子から溢れ、彼が動くたびにそれが振り子の様に揺れた。

そんなジャグー様の体は、未だ肥え続けている。きっと、私の終わり無い欲求を満たすまで、永遠に太っていくのだろう……

私の欲求と、ジャグー様の体は、無限に膨らみ続けるのだ!

 

 

 

 

 

          THE END


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