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今回は一気にラスト(正確にはその手前まで)書いたので、かなり荒い文になっていますが、どうにかエンディングまでの道のりを繋げる事が出来ました。


グレース・タウン Grace Town

ノガード Nogard

  男 竜 筋肉質→肥満→超肥満 俺

フロウ Flow

  男 狼 痩せ→痩せ気味→普通 俺

タール Tar

  女 鼠 ふっくら 私

ドレイジル Drazil

  男 蜥蜴 痩せ→痩せ気味 自分

ニプロッド Nihplod

  女 海豚 痩せ→痩せ気味→普通→むっちり あたし

タブ Tab

  男 蝙蝠 痩せ→痩せ気味 俺

イザーラ Izara

  男の子 蜥蜴+鼠 ふっくら 僕

ルエイソレット Ruasoretp

  男 翼竜 俺 筋肉質→超肥満→ぶくぶく


「おい、動いてないぞ!」とフロウが、脱出用の地下道のエレベーターにかけよった。

「くそ、さっきの爆発のせいか!? ボスはまだ、乗ってないんだろ?」とタブ。

「ああ……」

「ったく、なんでこいつが、先に降りてくんだよ……」

 タブはそういいながら、みんなのところへと戻った。そしてルエイソレットをちらりと見下ろした。ルエイソレットも、申し訳なさそうにただただ俯いた。

 その時だった。再び大きな衝撃音がなった。地下道が揺れるほどではなかったが、エレベーターの扉からは、煙がもれていた。

「な、なんだ!」フロウは、さっと扉から退いた。

「まさか、もうタワーが崩壊したのか!?」とドレイジルが、慌てて息子イザーラと妻タールを奥へと避難させた。

 だが少しして、煙は周りの空気と混じっておさまった。何が起きたのかと、フロウがゆっくりと、扉に近づいた。

 するとその瞬間、扉ががこっと、開き始めたのだ。だが中の籠は、動いてはいなかったはずだ——まさか落ちたのか? それで扉が開いたのか?

 しかし答えは違っていた。ゆっくりと、まるでこじ開けるようにあく扉から、なんと逞しい筋肉と、それに相反するでかでかとしたお腹の竜、ノガードがのっそりと現れたのだ。フロウが慌てて、ボスである彼に近づいた。

「ぼ、ボス!? ど、どうやって? まさか、滑空したんですか!?」

「この体で無理に決まってんだろ。ロープを使ったんだ」

「ロープ……あの籠を吊るしてるやつですか? し、しかしその体で——」

「なんだ、俺の体はルエイソレット見たいだといいたのか?」

「い、いえ! 決してそんなことは……」

「俺はあいつとは違って、毎日ちゃんとトレーニングしてんだよ。そもそも自分の体重を支えられないようじゃ、この体は勤まらんだろ——まあ、少し着地には失敗したがな」

 そしてノガードは、部下達の元へと向かった。

「遅れて悪かったな。さあ行くぞ」と彼は、ルエイソレットを乗せた三台の台車に手をかけ、押し始めた。

 長い道を通り抜け、ついに最奥部まで辿り着いた。途中、何度か爆発があり、その内の一回は特に強烈で、天井が崩れて道が寸断されたが、幸いにもそこは通った跡であった。

 一番奥にあったのは、梯子だった。だが長らく使われていないのか、錆がついていた。

「……これは大丈夫ね。最新のスーパーメタルが使われてるから、不純物も少なくて頑丈よ」とタールが教えた。だが問題は、それだけではなかった。

「それじゃあ、どうやってルエイソレットを上にあがらせるかね」

「いっそ、置いていけばいいじゃないか」とタブが、再びそのようなことを言ったので、ノガードが眇めて近づいた。

「おい。ボスはこの俺だ。俺のやり方でやってもらう」

 蝙蝠の細身に比べ、全てにおいてでかい竜の威圧に、さすがにタブは慌てて言った。

「そ、そうですよね。分かりました……しかしボス、どうやってあげるんです? 今まで見たいに一人では無理でしょう」

「まあそうだな……一度、試して見るか」

 そういってノガードは、今までのようなやり方で、ルエイソレットに肩を貸すと、彼を持ち上げた。まるでバージンロードを歩くウェディングドレスを着た花嫁のように、彼が全身に着ている脂肪が引き上げられ、なんとも肉塊というのにふさわしい体なんだと、誰しもが思った。そしてそんな、ただでさえ大きい竜の一種である翼竜を持ち上げられるのは、ほぼ同種の竜であるノガードだからできるものであると、部下達はボスに手を貸しつつも、そう思わざるを得なかった。

「良し、ルエイソレット。登れ!」

 梯子に両翼をかけたルエイソレット。ぐっと力を込めるが、ノガードとは対照的に筋肉の全くない腕は、ぷるぷると震えるだけで、一向に体を持ち上げてはくれない。ノガードも援助して、その部下達も、彼の脇やでかいケツを押し上げて援助をするが、微動だにせず、あっという間にルエイソレットは、ぜえぜえと疲れ果ててしまった。

「一旦座れ」とノガードの言葉に、彼に支えながらもルエイソレットは台車に座った。

 と同時に、再び凄い衝撃が起きた。ルエイソレットが座った衝撃ではないことは一目瞭然。辺りがぐらぐらと揺れ、近いところで、天井が崩れた。

「まずいな、そろそろここも危ないぞ」

「どうします、ボス?」と不安そうにフロウが言った。

「仕方ない。お前らだけでも先にあがってろ」

「し、しかしボス。ルエイソレットはどうするんですか?」

「悪いが、お前達がこいつの梯子上りに加担しても、それほど大した援助にはなりはしないだろう。とにかく、ここは俺が奮起しないとならないようだ」

「ど、どういうことです?」

「いいからさっさと登れ。時間がないんだ、二度目は言わせるな」

 渋々フロウや、それに続いてタールやイザーラ、ドレイジル、タブ、ニプロッドと部下達が梯子を登った。そして上にあるマンホールを持ち上げると、人工でない自然の光が射し込んで来た。

 全員、外に出ると、穴に顔をのぞかせた。

「ボス。ここは結構施設から離れてます。それに、そことここのあいだに小さな盛り上がりがあるんで、爆発が起きても大丈夫そうです」

「そうか。なら、近くにトラックか何かがないか探して来い。仮にここを出られても、施設があるのは人里離れた場所だ。移動する手段が必要だろう」

「分かりました」

 ざっざと走る足音が聞こえ、どうやら部下達はここを去ったようだ。

「……ノガード。俺を置いていけ」とルエイソレットが矢庭に言った。

「気にするな、ちゃんとお前を地上に出してやる」

「何故だ、何故そこまでする? 俺はお前を殺そうとしたんだぞ、なのに何故だ?」

「俺にはモットーがある。弱者は労わり、無用な殺しはしない」

「だが、お前は俺の部下達を殺しただろ?」

「奴らは全員、自ら死を選んだ。俺に挑んで来たから仕返した。俺を銃で撃ち殺そうとしたから、俺の罠にかかって死んだ。俺は何もしなければ、殺しもしない」

「そうか……考えれ見れば、他の二人は俺が殺してたな——だが、それなら俺は、お前からしてみれば弱者ってわけか」

「そうだ。お前は、嫌いなんだろ?」

「何がだ?」

「殺しさ」

「……なぜだ?」

「嘘をつかなくてもいいさ。お前は、誰かに無理矢理『殺せ』と言われたまでだろ。お前には、本当はそんな勇気など微塵もない」

「どうしてそうだと分かる?」

「お前は、恐れてる。だが命令を受けて殺され続ける内に、自分の本当に気持ちが分からなくなったんだろ。だから逆に、自分自身を見失い、殺しを躊躇わなくなった。だが時折、本当の自我が蘇ると、その恐怖にかられ、食に走った」

「……お前は、カウンセラーか、それとも超能力者か? 確かに腹はデブだが、腕の筋肉は確かなもので力はあり、しかも頭も切れる。お前、一体何者なんだ?」

「気にするな。おっと、少し話が過ぎたようだな。そろそろやるか」

「やるかって……本当にお前一人で、俺を持ち上げられるのか?」

「初めて牢屋から出した時、俺はお前を一人で階段を上らせただろ」

「だ、だが、今回は梯子だぞ。俺の体重がじかにかかるぞ」

「お前は、脳の秘密を知ってるか? 生きものは常に、肉体を破壊しないよう、リミッターをつけてる。筋肉の力も常に2割3割しか使っていないんだ。だが火事場の馬鹿力というように、ピンチの時だけは、脳が自然とリミッターを外す」

「そ、そうなのか?」

「ああ。だからフロウのような体でも、いざとなれば俺ぐらいの体を持ち上げることは可能ってわけさ」

「……まさか、お前のそのカウンセリング的な力で、俺のリミッターを外してくれるってことか?」

「残念だが、それを外す事が出来るのは自分自身だ。まあ催眠療法が使えればできるかもしれないが、生憎そんな業は持っていない——だが、俺自身は、リミッターを外せる」

「ほ、本当か?」

「ああ。少し待ってろ」

 するとノガードが、瞼を閉じ、まるで瞑想するように、呼吸やら何やらを、全て一律のリズムに整え始めた。不思議だった、見てる方も自然と、その見えない力にのまれるような感じがし、ルエイソレットも彼の行動に見入った。

 やがてノガードは、ゆっくりと目を開けた。

「出来たのか?」とルエイソレットが言った。

「ああ。それじゃあ行くぞ」

 ノガードが、いつものようにルエイソレットを持ち上げた。そして彼に梯子を掴ませると、ぐっと力を込め持ち上げたのだ。

 するとどうだろう。なんと、先ほど何人もが手を貸しても微動だにしなかった彼の体が、たった一人の力で持ち上がったのです。

「ま、マジかよ! ノガード、お前、本当に一体何者なんだ?」

「さあな。とりあえずお前も、少しぐらいは腕に力を込めろよ。お前の全体重を預けたケツなんぞ要らないからな」

「ははは! 分かった分かった」

 ノガードは、口を開く余裕も見せ、徐々にルエイソレットを上へ上へと持ち上げた。途中からは、ノガード自身も梯子とを掴み、肩車の要領(しかし見た目は、ノガードを覆うように上にいるルエイソレットの腹や脇や脚などの贅肉が垂れ下がっているので、とてもそのようには見えない)で、どんどんと梯子を登っていった。

 そしてついに、ルエイソレットの頭、両翼が外に出て、途中で彼の体がつっかえつつも、柔らかい脂肪の性質のおかげで、どうにか下のノガードが押し込んだおかげで、ルエイソレットはごろりと外へ抜け出た。それに続いてノガードも、あとは楽々と登り切った。

 二人は、ぜえぜえと喘ぎながら、空を見上げた。

 その時だった。何か車のような音が聞こえ、それが近づいて来たのだ。ノガードは視線をもどすと、二台のトラックがやってくるのが分かった。どうやら部下達が見つけてきてくれたようだ。

「ボス、どうやってやったんですか? 一人で、このルエイソレットを持ち上げるなんて」

 荷台の中で、フロウが感心しながら言った。今回の出来事で、一時はノガードの太った体に疑問が浮かんび始めていたフロウも、再びノガードの全てを尊敬するようになっていた。

「そういえばボス。これからどうします?」とトラックを運転しながらニプロッドが言った。フロントの窓から入ってくる自然の太陽が彼女を照らし、バリアを介するグレース・タウンとは違って、海洋族独特の肉厚で艶やかな肉体が妖艶に見えた。

「お前達は自由に暮らせ。だが俺とルエイソレットは、途中で降りる」

「え……俺たちとは来ないんですか?」とフロウ。

「ああ。ルエイソレットは、もはや日常の生活には戻れないだろう。だが、こいつには丁度良い場所がある」

「それって、どこですか?」

「それは教えられないな。だから悪いが、途中でトラックを借りるぞ」

「え、ええ……つまり、ボスとルエイソレット、二人でどこかに向かうってことですか?」

「そういうことだ。それでお前達はこのトラックに乗り、どこかへと向かう」

「し、しかし……」

「何か嫌か?」

「い、いえ、そんなことは! ただ……ただ、ボスがいないと不安で」

「大丈夫だ。お前が元々、ここのボスだったんだ。今のお前なら大丈夫さ」

「そうですか?」

「ああ。俺には分かる」

 やがて、ノガードがストップをかけると、ドレイジルが運転する後続のトラックも止まった。そしてノガードは、先ほどいったように、二手に分かれた。

「本当に、言っちゃうんですか? 自分達とはこないんですか?」とドレイジル。

「正直ボスのこと、俺は尊敬してるんです。だから、出来れば残って欲しいんですが」とタブ。だがノガードは、首を横に振った。

「……ノガードさんは、きっとルエイソレットさんを良いところに連れていってくれるんですよね。ルエイソレットは、本当は悪い人じゃないと私は思うんです。だから、ルエイソレットさんのことをよろしくお願いします」とタール。色々と雰囲気を察してか、泣かないまでも、イザーラも彼女の腕の中で悲しそうな表情をしていた。

「ボス。あなたのことは、一生忘れません。またいつか、会えることを祈ってます」とニプロッド。

 そして最後に、フロウが、再びボスとして最後の言葉を述べた。

「ボス、今までありがとうございました。こんな俺達を救ってくれて、本当に、感謝を言葉に出来ないぐらいです」

「ああ。俺も色々と助かったさ。んじゃ、またいつかな」

 こうしてノガードは、巨大な体を、重々しくもつっかかることなくトラックの運転席に載せ、そしてトラックを走らせた。

「ノガード。これからどこに行くんだ?」

 荷台からルエイソレットが声をかけてきた。

「お前のその体でも、ちゃんと一日を送らせてくれる場所だ」

 トラックはやがて、ひとけのない山奥に入った。更生施設グレース・タウンよりも、遥かに人里離れていた。


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