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    by fimDelta

 

 作成日 :   ????   

第一完成日:2006-03-22(当時題名"truth")

第ニ完成日:2007-12-

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・用語集

 

  PL        ― Planet Laboratory

              (惑星研究所)の略称

 

  SRO       ― Space Research Organization

              (宇宙調査機関)の略称

 

  NCFR      ― No Cost Food Repealer

              (無コスト食料廃棄者)の略称で

              現在の宇宙一の食料廃棄業者の名前

 

  力場式エレベーター ― 機能は通常のエレベーターと変わらないが

              床の部分が力場シールドによって形成されている

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 飽食の時代となった現在。食料を求める時代から、食料を捨てる時代へと変わってしまった今では、毎年何万トンという食料が廃棄処分されている。その結果、当然のように自然の環境は悪化していった――が、ある時を境に、その変化は不思議と逓減していったのだ。

 

「マカーネイ? ちょっと来てくれるかな?」

蜥蜴のソルはそう言って、助手である狼のマカーネイに声をかけた。

「何、ソル?」

「これを見てくれるかな?」

そう言ってソルはマカーネイに、プリントアウトしたグラフを見せた。

「……食料廃棄量が相乗的に増加してるわね」

「そうなんだ、それなのにNCFRは未だに無料で食料回収を行っている。どう考えてもおかしいよ。今は捨てる土地すら見つからないのに、一体どうやって無料回収なんかを――」

トゥルルルル――電話が鳴った。

「あ、電話だ」

ソルは電話のオンフックボタンを押した。

「こちらはPL、生命体研究科です」

「こちらはSROのタンドゥーと申します。実はお伝えしたいことがありまして――緊急なのですが」

「何でしょうか?」

「実は、宇宙区画90-0A-B2エリアにある惑星なんですが……」

ソルはすぐさまその座標を打ち込んだ。そこには、

 

 その惑星で生命体を確認しました。つまり新種の可能性があります」

「なんですって!? それは一体どういう生命体なの?」

「それが……あまり詳しいことは分からないんですよ。

 あくまでも上空から熱源体検知機で調べただけですから」

「なら今すぐにでも調査に行かせてちょうだい!」

「ええ、もちろんですとも。そのことで電話をしたのですから」

僕達は電話を切った後、すぐに新惑星での調査への準備を整えた

今までこのPLに勤めて、一度も新種の生命体に出会ったことはなかったのだ

 

 

「ついに新種の生命体と出会えるのね。楽しみだわ!」

今、宇宙船は例の惑星の近くまで来ている

僕はこんなにテンションが上がった彼女を見るのは初めてだった

よほど新種の生命体と出会えるのが楽しみなのだろう

――ドン!

いきなり、乗っていた宇宙船が大きく揺らいだ

「な、何?!」

驚いたのも束の間、宇宙船はそのまま近くの惑星へと墜落していった……

 

 

「……ぅ、ぅーん……」

目を開けると、目の前には綺麗な青空が広がっていた

僕は体をゆっくりと起きあがらせた

すると、体についていた砂が一気にこぼれ落ちた

どうやら僕は砂浜で倒れていたようだ

「こっ、ここは?」

辺りを見回して見ると、目の前には大きな崖が、左手には森が、右手には海が広がっている

そして後ろの方を見てみると、墜落した宇宙船があることに気が付いた

僕は急いでその宇宙船に駆け寄った

「マカーネイ! マカーネイ、どこ! いるなら返事をして!」

「……そ、ソル?」

微かに声が聞こえた

――中か!

急いで宇宙船の壊れた扉から中へと入ると、そこには仰向けになって倒れているマカーネイがいた

「マカーネイ! 大丈夫!?」

「ソル……私は大丈夫よ、ちょっと脚を痛めちゃったけど……」

僕は彼女の腕を肩にかけて、ゆっくりと外へと出ていった

どうやら彼女の脚の骨は折れてしまったらしく、歩くことがままならなかった

僕達は森の入り口付近へといき、そこにあった木に腰を据えた

「はぁ……二人だけで来たのが間違いだったかもね」

「えぇ。だけど、一応死ななかっただけでも良かったんじゃない?」

「まあそうだけど……。これからどうしようか?」

「う~ん、とりあえず私は歩ける状態じゃないし……」

「じゃあ僕がそこらへんを調べてくるよ、マカーネイはここにいて」

「わかったわ」

僕は彼女をここに残して、森の中へと入っていった

 

 

森の中は、薄暗いイメージとは裏腹に、とても明るく奥まで見渡せる状態だった

しばらく進むと、奥の方に何やら大きな穴のようなものが見えてきた

まるで隕石でも落ちたのかと思わせるぐらい大きな穴で、真ん中に何やら機械的なものがあった

僕は穴の中心へと向かった

するとそこにあったのは、力場式エレベーターだった

「なんでこんなところにこんなものが……?」

僕は疑問に思いながらも、そのエレベーターに乗りこんだ

エレベーターはゆっくりと下りていった

そして数十秒後、エレベーターは止まり、目の前にあった大きな扉が開いた

扉の先には、なんと同類の竜族達がたくさんいたのだ

だが一つ、普通とは違う点があった

 

――彼らは異常なまでに太っていたのだ

 

お腹の肉は垂れ下がり、地面についてしまっている

翼は肉に埋もれて、ほとんどが見えなくなってしまっている

「こ、これは一体……?」

呆然としていると、僕のことに気付いた一匹の巨大な竜がこちらへと近づいてきた

「?? 君は誰だい?」

「えっ、ぼ、僕は……そ、その……」

その迫力ある体に圧倒されてしまい、言葉が出てこなくなってしまった

「……どうやら君は、僕達のことを知らないようだね」

「……は、はい……」

「とりあえず、僕の家にでも来なよ。ここで黙っていてもしょうがないし」

そういってその巨大な竜は、大きなお腹を揺らしながら、僕を家へと案内した

家へ着くと、さらに驚かされてしまった

まるで巨竜の家にでも来たかのような巨大な家

だがここに住んでいる竜達にとっては、普通の大きさなのかもしれない

中に入ると、辺りにある家具はもちろんどれも巨大なものだった

とりあえず近くにあったソファに座り、向かい側のソファにはあの竜が座った

「……じゃあとりあえず自己紹介するね。僕はゴーバッシュ、よろしく」

「ぼ、僕はソル。よろしく……」

「ソルね、君はどうやってここに来たんだい?」

「……実は……」

徐々に落ち着きを取り戻してきた僕は、これまでのことをゴーバッシュに話した

「そういうことだったのか……。で、そのマカーネイという女性は、まだそこにいるんだね?」

「はい……」

「……どうやら疲れている様だね。マカーネイのことはこっちでなんとかするから、ゆっくりと休んだら?」

「いいんですか?」

「もちろんさ」

そういって彼は、僕を寝室へと案内した

やはりと思ったが、ベッドは僕に似合わないほどの大きさで、まるで王室のベッドかと思わせるほどのものだった

僕はそのベッドに勢いよく倒れこみ、そのまま眠りについてしまった……

 

 

目を覚ますと、何処からか良いにおいがしてきた

僕はそのにおいにつられて、リビングへと向かった

「あ、おはよう。ごはん出来てるよ」

「おはようございます……!!」

僕は起きて早々、改めて驚かされてしまった

テーブルの上に置かれているのは、ものすごい量の食べ物だった

肉から野菜、麺類といったあらゆる料理がそこに置かれていた

しかもそれを、平然とゴーバッシュが平らげていた

「とりあえず君がどれくらいの量を食べるか分からなかったから、一応適当に作っておいたよ」

その"適当"というのがこの量なのか、そう思わせるほどだった

「い、いただきます……」

「あっ、別に無理して食べなくていいよ。残ったら僕が全部食べるからね」

僕は目の前にある大量の料理を見つめ、とりあえず食べられそうな量があるものを一品だけとり

それを平らげた

「ぅっぷ……ごちそうさまです……」

「もういいの? じゃあ後は全部僕が食べちゃうね」

そういって彼は、残った量(恐らく普通の竜10匹分ぐらいありそうな量)を軽く平らげてしまった

僕はぽっこりと出てしまったお腹をさすりながら、しばしの休憩を取った

少し時間が経って、僕はあることを思い出した

「あ! そういえばマカーネイはどうなったんですか!」

「ああ、彼女のね。安心して、ちゃんと連れて来たよ。

 だけど彼女、脚の骨がひどく折れてたから病院に連れていったよ」

「今すぐ会いに行けます?」

「う~ん……それは難しいね」

「え……? どうしてですか?」

「実は、患者と合う為には住民カードが必要なんだよ。

 ここでは、ありとあらゆるところでそのカードが使われるんだ」

「じゃあ、そのカードはどうやれば作れるんですか?」

「まず役所まで行って申請しないと。それから数週間後に発行されるよ」

「そんなに時間がかかるのか……」

「しょうがないさ、色々と手続きもあることなんだし」

僕は仕方がなく、役所に住民カード発行の申請をして、数週間待つことにした

 

 

「はぁ、早く出来ないかなぁ……」

「まあ焦らない焦らない、カードが発行されればすぐに彼女に会えるんだから。

 それまでは僕の家でゆっくりしていきなよ、体を休めることも大事だしね」

「……そうだね、これからしばらくお世話になります」

「こちらこそ、よろしくね」

こうして数週間、僕はゴーバッシュの家に住むことにした

――だがそれは容易なことでは無かった

 

「も、もう食べられない……」

「情けないなぁ、じゃあ後は僕が食べるよ」

毎日ゴーバッシュは、自分自身の基準で料理を出すため、ありえない量の料理が出てくる

しかし彼の家に住む以上、料理を残すことは失礼に値するので、出来る限り食べるようにした

そのおかげで、僕はここに来たときよりかなり太ってしまった

今では着ていた服がパツンパツンに近い状態になってしまっている

二の腕もたるみ、この体では恐らくもう空を飛ぶことは出来ないだろう

だが、僕が太った原因はそれだけではない

実は彼が作る料理はかなりおいしいのだ

だからつい勢い余って食べてしまうため、いつもより多めに料理を食べてしまう

それらが重なり合った結果、徐々に食べる量も増していった

 

  そしてついに……

 

「ごちそうさま!」

「おっ! ついに全部食べられるようになったんだね」

僕はとうとう、ゴーバッシュが出す料理を全部平らげられるようになってしまった

その頃には、僕の体は彼には勝らないものの、かなりでっぷりとした体型になってしまった

おかげで前まで着ていた服が入らなくなってしまったので、新しい服を買って着ることになってしまった

「……そういえば気になってたんだけど、こんなにもの食べ物を何処から仕入れているの?」

「あぁ、これはNCFRが送ってきてくれるんだよ」

「NCFR!?」

僕はその言葉を耳にして、驚きのあまり声が裏返ってしまった

「あー、そういえばソルには話してなかったっけ?」

「うん、全然聞いてないよ。教えてくれない?」

「実はね……」

 

  食料を廃棄するのにお金がかかることに不快を持ったある一匹の竜がいたんだ

  その竜は「別に食べれば良いじゃないか、太ったっていいじゃないか!」と考えていた

  だが、竜は飛べるからこそ竜であり、太って飛べなくなってしまっては元も子もないのだ

  しかしその竜は諦めることはせず、ある日、大食い達だけが住む惑星を作ることを決定した

  実は、竜達の中にはその竜と同じ考え方をしている者も幾分かおり

  その竜達を集めて、新たな惑星を見つけそこに移住することにしたのだ

  その惑星というのが、今いる惑星なのだ

  それと同時に彼らはNCFRという会社を立ち上げた

  最初は「無料で回収」という言葉を信じてもらえなかったものの、徐々にその業績を上げ

  今ではほぼ100%の廃棄される予定の食料が、この惑星に届けられるようになった

 

「……というわけなんだ」

「なるほど……NCFRの秘密はそんなところにあったんだね」

「ま、そのおかげで食料には困らないし、食べたい分だけ食べられるから

 もう幸せ以外何者でもないね」

 

 

あれから3週間が過ぎ、ようやく住民カードが発行された

僕は急いでマカーネイに合うために、病院へと向かった

だが、僕の体はあの時よりさらに肥えてしまっていた

今では走ることすら出来なくなってしまったので、僕は大きな体を揺らしながらゆっくりと歩いて行った

病院へ着いたら、すぐに彼女の部屋を聞いて、その部屋へと向かって行った

「103号室……っと、ここだな」

僕はゆっくりと病室の扉を開けた

中へ入ると、そこには一匹のでっぷりと太った竜がいた

「……どちらさまでしょうか?」

「あの~、ソルというものなのですが、マカーネイはいますか?」

するとその竜は、驚いたかのような表情を見せた

「ソル?! あなたソルなのね! 良かった、いつ会えるのかと思ってたけど……」

「ぇっ! てことは……マカーネイ?!」

「そうよ、今ではこんな体になってしまったけど……って、ソルも同じようね」

彼女はくすくすと笑った

僕も彼女につられて笑った

「……私、そろそろ退院するんだけど、これからどうすればいいのかしら?

 元の惑星に戻るにしても、こんな体だし……」

「う~ん……。僕は今、ゴーバッシュっていう竜と一緒に住んでるんだけど

 退院したら、一旦その竜の家に行こう。そこで話をした方がやりやすいと思うんだ」

「分かった、そうさせてもらうわ」

その後彼女と、この街に来て今にいたるまでの話を延々と話した

そして面会時間を過ぎ、僕はゴーバッシュの家へと帰っていった

 

 

1週間後、マカーネイが退院した

面会した時に話したように、一旦ゴーバッシュの家に向かった

「あぁ、君がマカーネイか、僕はゴーバッシュ、よろしくね」

「よろしく」

「さてと、これから君達がどうすればいいのかってことだよね?」

「はい。元の惑星に戻ると言っても、僕達こんなに太っちゃったし……」

僕とマカーネイは、さらに太り、今では完璧にこの街に馴染んでしまった

お腹には手は届かず、余りに太っているために脚が見えなくなってしまった

もちろん尻尾も翼も一応は見えるものの、自分自身では見ることは出来ない

そんな体で元の惑星に戻った時には、周りに一体どんな目で見られることやら……

「簡単なことじゃないか、ここに住めば?」

「え! だ、だけどお金とか無いし……」

「何言ってるんだ、ここはお金なんて必要無いんだよ」

「そうなんですか?!」

「当たり前だろ、ここは食料が無料で手に入る、つまりお金が無くても生きていけるんだ。

 それにその無料で手に入った食料を使って作った料理は、他の惑星では好評で、かなりそれで儲けてるんだ。

 だからここでは入院費や教育費、食費はもちろん、電気代やら何やら、全てにお金なんてかからないんだ」

「じゃあ……ここに住めるってことですか!?」

「あぁ、もうもちろんさ!」

「やったね、マカーネイ!」

「本当ね、ソル! ここなら食べ物にも困らないし、幸せに暮らせていけそうね!」

「決まりだね! じゃあ早速僕が、君達の家を探してきてあげるよ!」

「ありがとうございます!」

 

こうして僕達は、この街に住むことにした

確かに生まれ故郷の惑星に戻れないのは名残惜しいけど

ここにいれば何不自由無く暮らせる

……といっても、まあ動くことに関しては少々不自由な面は出てくるけど

だけどそれを除けばあとは何にも心配は要らない

お金なんてここでは必要無いし、食べたい時に食べたい分だけ食べ物が食べられる

こんなに幸せなことってあるのだろうか!

僕はマカーネイと一緒に、今でもこの街で幸せ暮らしている


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