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最終更新日 2006/08/03

 

永遠の枝

この村では、この枝の伝説は遥か昔から言い伝えられている

その枝に実る木の実は、永遠に無くなることが無く

過去の大飢饉を助けた伝説の枝として残されている

 

永遠の枝を求めて、フードファイターのチャンピオンである俺は、この村へとやって来た

フードファイターと言ったら、何と言っても胃袋の大きさが重要だ

だが太っていては意味が無い

そうなると、脂肪が胃袋を圧迫して、胃袋が縮められてしまうからだ

だから今回、その永遠の枝とやらを探しているのだ

木の実ならカロリーは少ないはずだし、胃袋を大きくするのには丁度良いし

しかもそれが永遠に実り続けるとなると、これを見捨てられるわけが無い

それにこうやって探すのも、一つの運動にはなって都合が良い

 

さて、俺は村の情報を得て、この山へとやって来たのだが……

いたって何も無い。所々に小さな草木が生えているだけだ

本当にここにあるのだろうか、と思わせてしまうほどだった

俺は辺りを探索した

村人の情報によれば、永遠の枝は、とある洞窟の奥に祭られているらしい

……不意に、とある疑問が浮かんだ

(何故そんな素晴らしい枝をわざわざ祭ったんだ?

永遠に無くならないんなら、その木の実を食べ続ければ良かったものを……)

そんな疑問の答えを考えながら、俺は辺りを探索した

だが、何の手がかりも見つからない

「……くそ!」

俺は無性に腹が立ち、思いっきり地面に足を叩きつけた

すると叩きつけた地面にひびが入り、下の空洞へと落下していった

「う、うわぁぁーー……」

崩れた地面に足を取られて、俺はそのまま下へと落下していった

 

目が覚めると、俺は大きな洞窟の中にいた

後ろを見ると巨大な湖があったので、恐らく落下先が湖だったのだろう

俺はほっ、と胸を撫で下ろした

「ここは……何処なんだ?」

と、思わず呟いてしまった

とにかく出口を探そうと、辺りを歩き周った

すると、いくつかの道のうち一つだけ、異様に飾り付けのある道があった

俺は興味に惹かれてその道を進んだ

奥へと進むに連れて、何故だか徐々に明るさが増していった

そしてついに、一つの大きなドーム上の部屋へとやって来た

 

中には、大きな祭壇があった

そしてその一番上には、枝……が置かれていた

「――あ、あれは!」

俺は急いで祭壇に上り、枝を取り上げた

枝には、小さな木の実が3つなっていた

俺はその3つの実をもぎ取り、口へと運んだ

噛むと、良い感じに酸味が効いて、やや甘味が感じられた

「……うむ、中々良い感じだ」

俺は再び枝へと視線を移した

すると枝には、さっき取ったばかりの木の実が、全て生え変わっていた

「やはり……ついに、ついに永遠の枝を手に入れたぞ!」

 

俺は枝の木の実を貪り食った

取っては食べ、取っては食べを繰り返した

正直村人には、無断で枝を持ち帰ったのは悪いとは思ったが

これさえあれば、フードファイターとして腕を上げられるし

その賞金であの村へ貢献が出来る

そうすれば、あの村人達も許してくれるだろう

「……それにしても、ちっとも満腹にはならないな」

たった3つの小さな木の実だけに、いくら貪り食っても

全然満腹になることは無かった

考えてみれば、こんな小さな木の実で満腹になるには

何千、いや、俺なら何万粒以上が必要なのだ

それなのにこの枝に実るのは、最大でも3つだけ

(これをもっと効率良く食べる方法は無いのだろうか?

無くなることは無いんだし……)

「――そうだ! この枝ごと食べてしまえば良いんだ!」

俺はすぐに、枝ごと飲み込んだ

正直、その時は素晴らしいアイディアだと思ったんだが……

「おお、なんだか腹が膨れてく感じがするぞ!」

徐々に胃袋が木の実で埋まっていく感じがした

そしてようやく満腹になった

「さてと……これでとりあえずはおしまい――いいぃい!

し、しまったーー! 飲み込んだら枝を取れないじゃないか!」

俺はなんてことをしてしまったんだ、と、今頃になって後悔した

(もしこのまま行ったら、一体、どうなってしまうんだ)

俺は満腹なのに、さらに胃袋に物が詰め込まれていく感じがした

徐々に腹が膨れて、さらに膨れて……

お腹はあっという間に、手の届かない範囲にまで膨らんでしまった

「うぅ……このままだと本当に……。せめて動けるうちに……」

と、体を動かそうとしたが、あまりにも体が重すぎて動くことが出来ない

俺は、ついに泥沼にはまってしまったのだ

正直何故、あの枝が祭られる様になったのかが分かる気がする

ただ単に、俺の食の欲求で行動したような者達がいたのだろう

そしてそれを行った結果、今の俺のように、どうしようもない状態になったのだろう

そう考えているうちにも、俺のお腹は徐々に膨らんでいく

……今、俺のお腹が何かひんやりするものに触れた

巨大なお腹が邪魔で見ることはできないが

恐らく奥の窓にお腹が触れたのだろう

そこまで俺のお腹は膨らんだのだろう

 

しばらくすると、家が轟音と共に崩れた

俺は全く体を動かすことが出来なかった

足さえも、腕さえも、体に埋もれて動かすことが出来なかった


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